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ものすご〜く今更だけどようやく読めた。BL小説というより主人公が同性愛者の小説と言ったほうが適切だと思う。第1章のストーリーの起承転結の連結が驚くほど上手い。読んでいていつも持ってかれてしまう…。
2、3章は第三者目線で描かれていて、これもまた素晴らしい。第1章では啓太目線だったので、杉浦の過去はあまりにも謎めいたものだったが、榎田目線でストーリーを進ませることで、自然に杉浦の過去を遡ることができた。そして樹目線で物語の後片付けをし、終章に句点を綺麗につけた。
本当に完成度の高い小説で、木原先生の文章力と想像力に脱帽。今回も素敵な作品ありがとうございました!
講談社文庫版では、伏見憲明の解説がついている。
それがまた素晴らしい。
買うときは、講談社文庫版をオススメします。
どちらを買えばいいのか、迷っていたので、こういう情報があるのは、助かります。
ありがとうございます(^ ^)
木原作品は2冊目ですがこの作品も一度開いてしまったら最後、ページをめくる手が止まりませんでした。一読目は先が知りたくて、次は結末を知ってからの登場人物の言動の確認、その次は部屋の間取りなど細かい背景、、と貪るように読みました。内容紹介も読まずまっさらな状態で読み始めましたがとにかく話に引き込む力がとんでもなく強かったです。
主人公の啓太が冷凍庫を買う場面から始まるのですが既にここから不穏な空気が漂っていて先日読んだばかりの「積み木の恋」を思い出してしまいました。でも早い段階から啓太が死体を自室の冷凍庫に隠しているという状況はたぶん啓太の思い込みだろうなと思わせる表現がチラついていたので殺人という犯罪よりも秘密が登場人物にどんな影響を与えていくのかが気になりました。
啓太は秘密を抱えて精神的に不安定、ゲイバーで出会った充にしても見た目はまあまあだけど愚鈍でしかも優しくしてくれれば誰でも好きになってしまいそう。そんな充を見下した感じで見ている啓太が徐々に充を求め依存していく過程が薄暗いんだけどなんだかとっても甘いんですよね。
会ったばかりで警戒しているはずなのに充の部屋でいとも簡単に眠りについたり、翌日には充を慰めながら膝の上で眠ってしまったり、とにかく啓太が無防備に寝てしまう場面になんともいえない心地よさを感じてしまいました。一緒にいる時間が長くなれば純真な充に情がわくのは自然だけど、体も許してしまうのは秘密という重荷から逃れたい気持ちが自分を好きだと言う相手と触れ合う事で得られる安心感で消え、同時に本能的な肉欲がムクムクと湧き上がってくるって感じなのでしょうか。。
解説で作家の伏見憲明さんのいう、どんなに個と個が純粋に結びつくことが困難でも、その術をみつけられなくても、あきらめない BLのハッピーエンド のためなのだろうか。。。 いや、、違う気がする。。にしても充は本能のおもむくままで啓太とのエッチが好きすぎて萌えます。。
そのエッチな充を育てた従兄弟の榎本がなんとも魅力的です。充の命の恩人であり自立させてくれたすごい人。なのに自由恋愛主義なので従兄弟の充とも性的な関係を持っちゃうとか。。だけど決してぶっ飛んでいるわけじゃないんですよね。中盤の「秘密Ⅱ」が榎本視点でのお話だったのでうれしかったです。
興味深かったのは「秘密Ⅲ」の充の弟の樹のお話。ここでようやく充は父親以外の家族と再会できるわけだけど実は母親と妹は充を不憫に思っていたことが嬉しかった。家族みんな冷たいのかと思っていたので。。弟の樹もなかなかの曲者だけど「俺はみんな兄さんのことを忘れたのかと思っていたよ。籍を抜くって言った時もみんな何も言ってなかったから」と心臓をドクドクさせながら言ってるあたりで妙な共感がありました。樹は充と再会した時に放った言葉を母親や姉には秘密にしておくのでしょうかね。。
2007年に刊行されたBLレーベルを一般ノベルスに改稿、文庫化して、LGBTと発達障害を扱う作品として再販されたもの。
これも「美しいこと」と同様に、初版と違う削られた部分がある、初版を探して読み比べしたくなったので、ホントでセール中の電子版を読んだ後、旧版をAmazonで注文しました。(感動した作品だけ紙版を買う)
この作品も、今世社会の歪を書きだして、マイノリティへの思いやりの目を向けている良作。
精神的に惨い仕打ちを受けている者同士の共依存・・で終わらない結末がとても良かった。
たった一人、自分を丸ごと理解してくれる人が居たら頑張れる。
人は「心の動き」を糧に生きる生物。障害の壁を超えるものじゃなくて、障害を消すものは「愛」 「愛し合えるたった一人」と縁が有るか無いかで人生が大きく変わるから、縁を大事にしろって、昔からいうんだなーと感慨。
冷凍庫がある自宅に帰りたくない誇大妄想で悩むゲイの大学生、啓太。
自宅に居場所がない、ディスレクシアの充。
狩猟をするわけでもないのに、一般人の家に大きな冷凍庫がある・・・ここから大体想像がつくけれど、冷蔵庫の中には啓太の秘密が納まっている。
BL版ミステリ―。「冷凍庫」の中に有るのは、死骸ではない。
「充は、ディスレクシア」
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ディスレクシアは「読み書き困難」、文字と音を結びつけ操作する力の発達が遅い障害。今は治療法が研究されていて、改善可能な障害。
★ディスレクシア
(英語: dyslexia、ディスレキシア)は、学習障害の一種
知的能力および一般的な理解能力などに特に異常がないにもかかわらず、文字の読み書き学習に著しい困難を抱える障害である。 失読症、難読症、識字障害、(特異的)読字障害、読み書き障害、とも訳される。
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メモ
秘密1:啓太視点「冷凍庫の死体」
秘密2:充視点 充は読み書きが遅いだけ、思考に伴う感情がある。
秘密3:充の弟、樹の視点 障害者を持つ家族の葛藤 充の家族は「居ない者」として排除していた
・・冷凍庫の死体、で読者を翻弄する展開だったけど、ホラーではない、愛の物語だった。
偏見の殻を破って本質を見る事が出来るひとと出会い愛しあうことで、運命は変わるし前進できる。
もうこれは、神評価、でしょう?!
大変遅ればせながら、『箱の中』を拝読したのは最近のこと。
そこからは木原作品にどっぷり浸かり、数作品を経て今作を拝読しました。
当たり前ですが、どの作品も素晴らしさに唸りました。
ここまで書くのか…と。
今作も読みだしたら止まらなくなってしまうことはわかっていましたが、やはりそうでした。
木原作品を読むたびに、容赦がない、といつも思います。
サラッと読み流す事ができずに没頭するしかなくなり、気づけば物語は終わりを迎えている、ということばかりです。
今作も没頭し気づけばあっという間でした。
3つの章に分かれていますが、組み立てが秀逸で最後まで読み切って初めて安心できました。
人間の身勝手さや、他人と異なること、他人と同じようにできないことへの不理解や拒絶、読んでいてそれが苦しくもあり、それが普通だとも思う。
単純に好きだという気持ちだけでは成り立たない複雑な感情に、振り回される身体や精神が苦しい。
妄想癖、ということすら自覚できていなかった啓太と、劣っている自分を受け入れてくれる啓太を盲目的に愛する充、充にとってきっと救世主であり理解者の孝則、それぞれの思いにいろんな感情が引っ張り出されるわ、やきもきするわで正直しんどいです。でも読まずにいられない。
充の弟である樹目線で書かれている最後の章は、これがあってこそ本当のハッピーエンドだと思えました。
手に取ったら最後、木原作品の中毒性たるや…
ストーリーももちろんですが、とにかくどの作品も人物の印象が強く残ります。
まだ未読の作品もたくさんありますので、この先もどっぷり浸かっていきたいです。