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全体的にコミカルで明るい作品です。
表題作は、世宗(受け)が出会ってから15年間一途にストーカーしていた男性と恋人になる話ですが、世宗が可愛いです!お風呂を借りることになり鼻血を出しそうになる乙女ぶりや、すぐにフラれると自信がなく会社の同僚に告げる率直さやらが愛おしいです。同僚との会話が楽しい!
同時収録の「律儀な羊と腹黒狼」は理央(攻め)視点で、世宗にどう惹かれたという過去&どうメロメロなのかという現在・後日談が入っていてお得な気持ちになりました。
二人とも仕事ができるカッコイイ社会人ですし、理央の妹はハッキリした女性で面白い。世宗の従兄弟と祖父、前原社長との関係もすべてきれいに解決していてスッキリしました。これほど、あれはどうなったの?という疑問がない作品も珍しい…と理屈屋の自分には高ポイントでした!
ヤマダサクラコ先生のイラストも素敵で、半裸で怒る理央の迫力と、エプロンつけた理央にすがる世宗は特にお気に入りです。
「行動原理は受け!受け我が命っ!!」みたいな受け至上主義の攻めってときどき見かけますが、この作品はその逆で、そこが新鮮で面白いと思います。
受けはハイスペックなんですね。
冴え渡る美貌と切れる仕事っぷり。
周囲からは一目も二目も置かれてる。
なのに攻めのことになると、かなりおかしくなってしまう残念さ……。
ちなみに受けは資産数十億あるお坊ちゃんなので、攻め宅の上下階を借りて生活音を聞いたりしてる筋金入りのストーカー。
だけど、マイルールというかストーカーの矜持(?)みたいなのがあるんです。
(1)給料範囲内でやりくりする。
(2)攻めがいらなくなったもの=ゴミしか買い取らない。(商魂たくましい攻め妹から廃棄タオルを言い値の5万で買い取り、それらをコレクションルームで保管)
(3)攻めをおかずにしない
攻めへの思いとマイルールの狭間で葛藤してる姿が面白いです。
攻めを思い続けて15年。
神様のように崇拝していた攻めとまさかの恋人同士になってしまったもんだから、大変。
雲の上の存在から「俺も好きだよ」と言われても、なかなか信じられないんですね。
おまけに長年ストーカーをしてきたのがバレたら……と思うと身が竦んでしまう。
だから迷える羊というより臆病羊って感じかな。
そして嘘つき狼というよりも、そんな受けを見守っている忍耐狼って感じだと思いました。
攻め<<<<<受けだと思っていたけれど、後半の「律儀な羊と腹黒狼」では、攻めも受けのことを愛しまくってるんだなぁというのがわかる攻め視点があるところも好き。
受けで総合商社の御曹司である世宗は初めて攻めの理央に出会ってから
15年もストーカーをしている強者で、そんな受けが主役であり一人称で描かれる
作品なのですが、かなり面白かったです。
財力に見合ったストーカーぶりなのですが、それが実に健気な感じで犯罪行為だけど
読んでいると全然憎めないのですよ。
大人になってからのストーカー状態は相手に気づかれないように、相手の守銭奴気味の
実の妹で高校時代の同級生に理央が使用済みのアイテムを言い値で買い求めたり、
かなりの収集家になっている。
理央には絶対気がつかれて嫌われてはいけないと、かなり緻密に考えているようで
どこか抜けているのも御曹司ならではかと言う流れもあって微笑ましい。
理央の住むアパートの上下をお金のチカラで手に入れて住んでいますが、
同じアパートに住んでいることすら気がつかせない徹底ぶり。
そして、理央と少しでも接点を持っていたいからと、かなりハイスペックな能力が
ありながらも実家の総合商社に普通の社員としてコネ入社しているのです。
理央相手にはとことん甘くて理央が絡むと冷静でいられない世宗ですが、
それ以外にはかなりクールで、ある意味理系の合理的な考えの持ち主。
理央以外にはなんと思われても全然構わないといった態度がかなり男前でしょう。
盗撮がバレて理央に嫌われる~と言う展開があるのですが、何故か嫌われることなく、
逆に身体の関係を持って、いきなり恋人同士になるのですが、
他の事では自信に満ちた言動をする世宗が理央のことになるとどこまでも気弱で
健気で、理央がいなければ生きていけないくらい強い気持ちを持っているのです。
ストーカーされている、かなり好かれているということは実は理央はかなり早い段階で
気がついていたのですが、始めは確かに気味が悪いと思ったこともあるのですが、
気がつけば世宗を気にしていたり、大人になって再会した時に、世宗の態度が
一商社マンと取引先の人間としてしか、感じられない態度だったことから
実はもう、好きでなくなったのかと密かに理央は落胆していたりします。
それに理央は、かなり怖い男でもあったりします、自分の懐に一旦入れた相手には
かなり甘いですが、その相手に害をなすものにはかなり容赦ないタイプ。
世宗のことも全部とは言わないまでもかなりストーカーされていたことも知っていて
そしらぬふりをして、どうやって世宗を手に入れるか密かに策を練っている。
例え相手が筋金入りのストーカーでも、相愛になったら全然そんな些細なことは
気にしなくなるのねと言う内容で面白かったです。
電子書籍で読了。挿絵もあとがきもありました。
ストーキングしていることを気づかせない為に細心の注意を払うストーカーって、果してストーカーなのでしょうか?だって、気づかれたくないのは相手に不快感を与えないためなんですよ。世宗はストーカーというよりは、理央教の信者、それも殉教者の様に見えます。気づかれなくてもいい、ただ一心に愛を注ぐ。その姿は『一途』を超えて滑稽になってしまっています。で、滑稽すぎるから不憫だと思い、不憫すぎて愛おしくなっちゃった。……なんだ?この回路。
大財閥の御曹司、菱守世宗には執念の様に想いを捧げる人がいます。子どもの頃、従兄弟に虐められていた時に助けてくれた近所のお兄さん、高梨理央がその人。現在は仕事の取引相手となっているのですが、理央と話すと緊張してしまって、必要以上にぶっきらぼうになってしまうほど、世宗はその想いを知られることを恐れています。なぜなら、自分の想いがかなり気持ち悪いものであることを自覚しているからです。世宗は中学生の頃からこっそり彼の部活の試合を応援し、アルバイト先に通い、探偵に近辺を探らせ、親を説き伏せて入った公立高校ではその妹から彼が使い古して捨てた日用品を高額で買い取って来ました。社会人となり親の会社で働く様になってからは、彼が住むマンションの上下階にそれぞれ部屋を借り、片方は彼の生活音を聞くための、そしてもう片方は今まで盗撮した写真や、妹から入手したコレクション部屋としています。また仕事でも、彼のためなら片道4時間もかけてサンプル素材を取りに行き、彼との商談の時間を捻出するため残業をし、文句を言わせないために結果を出し続けてきました。その努力が報われたのか、理央からの接待を受ける事になった世宗は、軽井沢でのゴルフを希望します。綿密な計画の下に雨に濡れた理央を自分の別荘に招待し盗撮する計画だったのです。しかし、世宗はそんな下世話な欲望に負けて理央を汚してはいけないとすんでの所で思いとどまります。ところが、ひとつだけ回収し忘れた、それも風呂場の隠しカメラを理央が発見してしまいます……
世宗の『ストーカーのきまり』が可笑しいくもいじらしいのです。
理央のものを妹から入手するのも『捨てたもの』つまり、もういらなくなったものしか買い取らないとか、理央のことを絶対に『オカズ』にしないとか。
……どこの乙女だよっ(笑)。
嫌われたら生きる意味がなくなる、とまで言っている世宗にとって、理央の存在はやはり宗教に近い。端から見ればパーフェクトな世宗でも、教祖様という月と比べれば自分はスッポンという認識。だからこそ、理央の気持ちが自分に向くと、あっという間に逃げ腰になってしまうのです。
いや、笑いましたよ。
でも、笑いながらも「恋をこういうものとしていた頃があったなぁ(遠い目)」とも思いました。
相手が凄くて、自分はそれに対して情けなくて、自信なんて針の先ほども持てないから「ただ見ているだけで良い」と思っていた頃。
世宗のやっていることは大げさに書かれているけれども、その本質はあの頃の私と全く同じです。
まだ世俗にまみれていなかった頃の、純粋な、だからこそ馬鹿馬鹿しい恋の熱狂を思い出させてくれました。
ああ、おばちゃんは汚れちまったな……
再読です。
緊張感のあるお話ですね。
主人公の世宗の振りきれたキャラがとってもドキドキさせられます。
自信家でハイスペックで優秀なのに理央に対することだけは恐ろしいほど自虐的で卑屈で自信がなくて。天国まで上がったり地獄の底まで落ちたり。比喩とか笑えます。なまじお金と力があるだけに実行しそうで。
世宗の15年恋焦がれストーキングしてきた理央と社会人になって仕事で交流するところから始まります。
世宗は緊張でガチガチで何かあれば底無しに落ち込み眠れず食べられずで。
そんな世宗が運転手さんや理央の妹、同僚、従兄弟との会話が別人のようで笑えます。とくに運転手さんは世宗のことを知り尽くしていて的確な助言をしてくれます。
まさかの理央からの交際の申し込みに気絶してしまう世宗。
お付き合いが始まっても世宗は信じられず終わる日に怯えて。今までやってきた事や長い片想いの歴史を考えたら仕方ないですよね。
厄介な従兄弟のおかげ?で理央との仲も進展し。
律儀な羊と腹黒狼
は理央視点です。理央がずっと前から世宗を認識し意識したり支えにしたり手に入れようとしてたか、どれだけ世宗に骨抜きにされてるか書かれています。早く世宗も自信を持って理央と対等に生きて欲しいな。もうそうなってるかな?
とにかく振りきれた世宗のストーカーぶりと、一途さと、仕事や何でも優秀なのに理央に対しては不器用なのが良かったです。
緊張感と悲壮感を味わいながら読ませてもらいました。