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むさぼるように読んでしまった。
木原さんらしい作品だった。
『愛してる!』『僕も愛してる!』→めでたしめでたし、にはしない木原さんの毒がたっぷり詰まったハッピーエンドです。強烈に惹かれた。
主人公の誠一(攻)は、木原作品によくあるタイプのイヤな男です。ずるくて、遊び人で、享楽的で。
10年前の高校時代、遊びで抱いたイトコの啓介(受)と再会し、また、なし崩しに関係を結ぶ。そこに愛はない。オモチャ扱いだ。
啓介のほうは、誠一に愛がないことを知ってるんですよね。最初から諦めている。
その関係を終わらせたのは啓介だった。あっさり結婚するのだ。
誠一は、啓介を失ってから自分の気持ちに気づきます。
それから五年後。
今度は視点が啓介へと移る。
離婚した啓介を、誠一は迎えにくる。
一緒に暮らし、お互いにもうラブラブになってもいいはずなのに、そうはならない。
啓介は誠一をまったく信用していない。心に常にブレーキをかけている啓介が、誠一はもどかしくてたまらない。
このへん、さすが木原さんで、本当に上手いです。前半の誠一を知ってるから、啓介の気持ちが分かるんですよね。誠一のツンデレっぷりに萌えました。
ラストは──ここ、一番評価が分かれる部分じゃないかなー。
こういうラストにする必要なんてないんですよ。
万人に受け入れられるラスト、木原さんなら書けたはずなのに、そうはしてないのがスゴイなーと。
木原フリークの私は、ものすごくゾクゾクしましたがw
発売順では、こちらの発売、2008年新装版の発売、2009年のコミック発売ではあるのですが、表題作しかコミカライズしていないコミックから入った方がとっつきやすいかなと思います。
なお、新装版には「空を見上げて、両手広げて2」が収録されているようですし、表紙からしてもイラスト描き下ろしなので、今から購入されるなら新装版がお勧めだと思います。
構成は、表題作、続編、番外編の3作品です。
「さようなら、と君は手を振った」は、誠一(攻め)が主人公。好き勝手にしていましたが、結婚をするという段になって氷見(受け)への思いに気づきます。
「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」は、氷見が主人公。人であることを捨て、誠一だけだと決めます。
「空を見上げて、両手広げて 」は、氷見の息子・貴之(受け)と氷見の友人・柊(攻め)が主人公。セックスをするけれど、実は互いに求めているものは互いの愛ではない…という話です。
氷見に振り回されている、という印象を受けました。氷見の誰にでも優しいところが自分を受け入れてくれるのではないかという期待をさせ、誠一も柊も貴之も、氷見の特別になりたがるという感じです。
ただ、氷見はその自覚がありませんし、魔性の男というわけでなく、氷見は氷見で誠一を好きな普通の男です。その、「普通」な冷たさといいますか、氷見は「一番以外はどれも同じ」になる自分を知っていて、誠一から離れようとする辺りの心情などが見事に表されています。
続編では子供の前でセックスをする場面があるということで、読むのに二の足を踏んでいましたが、ただ単に痛めつけるために入れた場面でなく、氷見がふりきるためには必要性であったので、嫌悪感はなかったです。
攻めが浮気をする、受けが結婚して子供がいる、子供の前でセックスする場面があるのが苦手な方はご注意ください。
自分勝手だった攻めが受け一途になるのがお好きな方にはお勧めです。
名が体を表している作品です。
ただし登場人物は違います。誠一という男(攻め)は名前に似合わず誠実とは程遠い人間です。高校時代に一時だけ夢中になった相手、従兄弟・啓介の上京の面倒を見るうち、再び『都合の良いセックスフレンド』として接するようになります。奇妙なことに、啓介は自分から誠一を求めることはしないし、女性とも平気で付き合っているらしい彼を責めることもしない。その理由が明かされる瞬間、誠一と一緒に読者も唖然とすることでしょう。そしてなぜか私は、清々しさのようなものを覚えました。(誠一ざまぁwwwみたいな感情かもしれませんが…)
啓介の、相手に感情を押し付けず見返りを求めない、ただ与えるだけの愛情を間違っている、あるいは正しいなどと言いたくはありません。ただ稀有であり、哀しくもあると感じます。
この本が面白いのはさらにその表題作の後です。
『僕がどんなに君を好きか~』では、表題作では与えるだけだった啓介が、誠一に溢れんばかりに想われるようになり、次第に凪いでいた心を揺るがされていきます。やがて、一度別れたのに面倒を見ることになってしまった実の息子の存在を疎ましく思うようになるまで、形を変えてしまった自分の愛情に怯えた啓介はついに逃げ出すことに…。その後の展開が…あーそうなっちゃうか…でもそうだよね…。という結末で、まあ…良識的に言えば、あまり後味は良くないです。しかし非常に納得できるものです。落ち着くところに落ち着いたな、というラストです。
『空を見上げて~』は、“かわいそうなこども”貴之の話です。一番の犠牲者のこの子はとっても気の毒だけれど、どうしようもないので読後感が非常にやるせないです。
総括すると幸福とは主観的なもの、という話だったかと思います。
ネタ的に変わった部分は女装かな。割と萌えました。深井さんのイラストも良い雰囲気でした。
後味の悪さが面白かったので、萌え評価です。神までは行きませんでした。
自分の見た目にこだわりを持つ誠一。
彼は嫌々ながらも上京してきた従兄弟の面倒をみる羽目になってしまう。
十年前「高校を卒業したら迎えにくる」と約束したっきり半ば忘れていた従兄弟の啓介は、相変わらずのダサさだった。
うんざりしつつも、勢いで啓介に手をだしてしまう誠一だったが……
もはや木原作品名物と言ってもいいんじゃないかというくらいの典型的なダメ男です。主人公。
見た目のステイタスにばっかりこだわって、二股にもほとんど罪悪感を感じない軽いノリ。
啓介に手を出しつつも、その啓介を利用して女の子を落とそうとするところなんかほんと腹が立ちます。
一方の啓介はそんな誠一をどこまでも受け入れようとする。
それこそ、なんでそこまでというところまで。
これもいわゆる愛なのかなあ……
表題作のラストにはなんとも言えない読後感があります。
一方で続編の「僕がどんなに君を好きか、君はしらない」で急に啓介一筋になってしまう誠一に少しだけ疑問が残りました。成長したと言えばいいけど。うーん。
そりゃ啓介も自分が愛されていることを信じられないわなという気がした。
突然のハッピーエンドにときめけばいいのかとまどえばいいのか。
さらに書き下ろし。
もうこれだけでノベルズ一冊分かける組み合わせじゃないですか!!
啓介の息子と、かつて誠一と啓介を取り合った?男、柊のお話です。
超短いんですが、超気になる。
どっかでこの続きを書いてくれないだろうか。