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シリーズ第4部の2冊目。通しで18冊目になります。
《出版社あらすじ》
悠季はエミリオ先生のお供やチャイコンの練習で忙しく、圭に全く会えずにいた。しかし突然襲われた偏頭痛のおかげで思わぬ休養となり、久々に恋人の部屋を訪ねる。ところが深夜に泥酔して戻った圭は、ベッドにいた悠季に対して「Chie(誰です)?」という言葉を……。「圭は僕以外の人間をこのベッドに入れている!?」愛し合っているはずの二人の気持ちがすれ違う。
収録作
・アポロンの懊悩
・泥と栄光
今回のタイトルはいずれも圭にまつわるものになっています。
「アポロンの懊悩」 では、圭と悠季の間に問題が勃発します。
悠季依存が進んでいる圭は、間近に迫ったハンガリーでのヤーノシュ国際指揮者コンクールの準備にも身が入らず、持て余す悠季への想いを日記に記すことで何とか自分を押さえ込んでいます。一方の悠季は「多彩な音色」について考えている時に、エミリオ先生がステージや練習を聴かせてくれている意味を悟り、先生を追ってミラノに飛ぼうとします。
出発の前日に圭のアパートを訪ねたら圭は不在。夜遅くに泥酔して帰館した圭の言動から浮気を疑う悠季。その後、圭は空港まで見送りに来てくれますが、別れ際の言動から浮気確信した悠季は圭の制止を振り切って怒り心頭のまま搭乗します。
ミラノに着いた悠季はショックとイライラと鬱鬱とで心中は大嵐のままで、エミリオ先生に体調を心配されるほど疲れた顔になっていました。圭との喧嘩を知った先生は「無敵のゴジラみたいなお兄さんとの喧嘩は疲れるわ」と一言(笑)それから悠季はリサイタル後のパーティーで音楽学校講師の栖本さんと知り合って名刺をもらいます。
その後、ローマに戻った悠季は圭を赦そうと考え始めます。そんな入浴中の悠季の耳に中庭から圭の歌声が聞こえてきます。圭は謝罪の気持ちから悠季にセレナーデを捧げにきたのですが、傍らでバイオリンを弾くミスカくんを見つけた悠季は、若くて美男子で才能ある彼が圭の浮気相手だと思い込んで彼らに水を浴びせて追い返し、悲しみのあまり半狂乱で泣きむせびます。エミリオ先生に宥められて正気に戻り、ミスカくんの話で誤解が解けます。
圭への仕打ちを思い出して、青ざめて圭を追いかける悠季。けれど涙を流しながら去って行った彼の姿はアパートの部屋にはなく、残されていたのは悠季宛の書き置きと恋の懊悩で埋め尽くされた彼の日記帳でした。スコアやパスポートなどと共に消えた圭と話をするために、悠季は先生に許しをもらい、ハンガリーまで追いかることにします。
「泥と栄光」では、ローマから姿を消した圭を探して悠季がハンガリーまで行く話です。圭もバイオリンもどちらも手放したくない悠季にとって今は自分の練習よりも圭のことが最優先事項です。ヤーノシュ・コンクールの1次予選は1週間後に迫っています。
まず、ウイーンのアパートを訪ねた悠季は、そこで小夜子さんと再会します。彼女はハーバード留学のついでに寄り道したそうです。そして悠季は大家さんとの会話や列車チケット購入などを助けて貰いますが、彼女の求婚話にはケリをつけてウイーン西駅で別れます。
その後、悠季はショプロンのバスターミナルで警官たちによる災難に遭いますが、何とか無事にソムバトヘイに辿り着きます。圭が泊まっているかも知れないホテルを探しながら「タンホイザーの運命」と自分の状況とを重ね合わせて鬱鬱となる悠季(笑)
翌日、公園でバイオリンの練習中に辻楽士の真似をしてコインをもらいながら圭を探す悠季は、教会から出てきた圭を見つけます。後を追いかけて見つけた圭は全てを拒絶するかのような雰囲気を醸し出していて近寄りがたく、悠季は《G線上のアリア》を捧げます。お互いの思い違いが生んだ誤解も解けて仲直りです。ホテルの部屋で話の続きをして気持ちを確かめ合う2人。悠季が自分の日記を読んだことを知った時の圭の様子が可愛かったです。格好つけの圭は、悠季の不在に七転八倒の夜を過ごし、悠季の誤解を解く術もないまま地獄の責め苦にさいなまれる思いでいた自分の姿を秘密にしておきたかったようです(笑)
そして、スランプから脱けだした圭は勉強に集中するために悠季を帰し、ヤーノシュでは優勝者なしの二位入賞を果たします。また悠季は、これまではバイオリンをどう弾けばよいのか?という気持ちでいましたが、ここにきてどう弾きたいのか?という気持ちを持つようになりました。