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木原さん然り、一穂さんもカタカナのタイトルのものは好みではないんじゃないかと勝手にジンクスにしてたけど、違いました。「ノーモアベット」でスピンオフになるなら社長か芦原のどっちかだろうと思ってましたが、まさかこの二人の組合わせとは。それほど芦原のイメージが違っておりました。アルカイックスマイルで他人には興味がないというのは合ってるけど、自分を大事にしていない人だったんだなあ。社長ももっと飄々として食えない大人といった印象だったのに、こと芦原相手だとこんなにヘタレてしまうのかな。そこがまた魅力でしたね。機内の二人のやりとりが好きでした。
アジアの雰囲気と日本のカジノ、この世界感、大変好みです。
危なそうでそこまで危険なこともなく。
と思いつつもラストのシーンは迫力あって本当に脚もっていくのかと、そういうエンドもあるかもとドキドキしました。そしてオチの部分、令輝の無機質なイメージの性格から月並みの愛情表現などないけれど、でも確かに絆のようなものがあり。このシーンは大変好きな部分です。
また、後半の追い込みは読んでいて面白くて、お互いの気持ちの交わらなさと雪の藤堂に対する気持ちの表現の仕方がなんとも切なくて、でも最後は甘くて、また夢中になって読んでしまいました。
腰のルーレットの刺青、雪が今までどんなセックスをしてきたのか軽く伺える表現など、ところどころ切なくて。本当に猫のような雪が魅力的で、家族から愛されている末っ子の九輝も彼の思う正義を貫いていてそこも素敵でした。頭の中で映像が浮かんでくる素敵な作品です。
ノーモアベット読了後にすぐ拝読しました。
まさか「あっさん」こと「芦原」が
「雪」だとは思いませんでした。
一穂先生がこの作品の表紙をベスト3に
挙げてらっしゃいましたが
こんなにも美しいキャラだとは..。
雪がルーレットを回す姿を想像してうっとり。
この作品を読んでまたノーモアベットに戻ると
延々楽しめます..有り難いm(_ _)m
ノーモアベットはひたすらに痛快ですが
こちらは二人の過去が重いです。
前作でも二人は独特な雰囲気をもつキャラでしたが
過去が解るにつれ切ない気持ちになります。
藤堂の気持ちも、とても苦しいです。
雪は生い立ち故か好きという表現ができません。
藤堂にも辛辣な言葉ばかり。
けれど
ノーモアベットで雪は逸に、
「そういう人の嫌いは得てして好きとイコール」
と言う箇所があり
雪の気持ちも同様いつも天邪鬼なのでは、と
感じさせます。
一冊のなかに一箇所だけ
雪が
「この人(藤堂)にあわせてくれてありがとう」と
心中で思うシーンがあり
雪同様にこちらも泣きました。
不憫だけど不幸ではなく
絶対的に強い雪は美しい。
藤堂も雪には余裕が全くなく
歯が立たないのもとても好きです。
見かけるSSはどれも藤堂が雪に翻弄されていて面白い!
ずっと藤堂を弄んでほしいです。
『ノーモアベット』のスピンオフ。
カジノオーナーの藤堂と
ディーラーの「あっさん」こと芦原の話です。
『off you go』の佐伯氏を幼くしたような
芦原のキャラが好みであったこと、
勝負の水面下に描かれる愛憎の迫力に
引き込まれたこと、
楽しいだけではないカジノの暗黒面が描かれていたこと
…等から、個人的に前作より好みでした。
シンガポール系中国人で、大富豪の父が愛人に生ませた
母親違いの兄弟たちと共に育った藤堂(本名は九燿)。
ある日、兄がラスベガスで少年を拾ってきて
名付けを一任された藤堂が彼を「雪」と名付けたのが
芦原と藤堂の出会いでした。
それから現在に至るまで、決して藤堂に懐かない雪。
雪の毒舌と藤堂のツッコミという会話はテンポがよく
反抗期の子供と父親のような微笑ましさがあります。
ひねくれ者な雪には、藤堂の育ちの良さや人の良さが
苛立たしく、優しくされることもプライドが許さない。
自分に名を与えてくれ無条件に優しくしてくれる藤堂の存在は雪にとってとても大きいけれど、生来の天の鬼な性格から
つい意地悪を言ってしまう。
屈折しているようで、たまに見える甘えやヤキモチが
子供のようで可愛いです。
そんな雪に対し、藤堂は
坊っちゃん育ちでまっすぐな自分を曲げるのではなく
正面から勝負を挑む。
それは藤堂のプライド故でもあるが、それ以上に
それが意地っ張りな雪に心を開かせる
唯一の方法だからだと思います。
対等なままではダメで、雪の全人生と言っても過言ではないルーレットで「負ける」ことが、雪が素直になるためには必要だったのだと思います。
雪が飄々とした顔を崩し悔し涙を見せるシーンは
ようやく雪の素顔が見えたという意味で感動的な一方
彼の人生がどれほどルーレットと一体であったか
伝わってきて切なさも感じます。
しかし、この勝負があってこその
後半の二度目の「真剣勝負」だと思います。
育ての親同然の令輝の前で、藤堂を守るため
回転盤を回す雪。
人生を賭けた真剣勝負だが、その根底には彼らの「家族」としての歴史や互いへの揺るぎない信頼が見てとれ
スリリングな描写にゾクゾクすると共に
温かい感動が胸に迫ってきます。
タイトルの「ワンダーリング」は
ルーレットの回転盤や運命の輪を指すだけでなく
疎遠に見えても深いところで繋がっている家族の輪をも
表しているのかもしれない。
雪と藤堂の関係は恋愛というより、昔から無意識に存在した
絆や信頼のような安心感あるもので、
その延長に性愛がある感じです。
濡れ場の表現の回りくどさと、
派手な矯声が雪のキャラと合ってない気がして
色気をあまり感じなかったのが残念ですが
全体的には、人間ドラマとエンタメ感のバランスが良く
二人の親子のような兄弟のような関係も微笑ましく
好きな作品でした。
いきなり、これ誰?というチャイニーズらしき兄弟の
海外小説のような会話から始まる本作。
兄が猫を拾ってきたというので、喜んで「雪」という名前をつけた弟。
期待に胸を膨らませて見に行くと、そこにいたのは……。
「……これは猫ではありません」……。
「ノーモアベット」のスピンオフ。
前作で魅力的だったカジノオーナーの藤堂と、
これまた面白そうだったあっさんが主人公。
あらすじを見て、主役が藤堂だというのは分かっていたが、
開けてビックリ、お相手は芦原でした。
前作に引き続き、スリリングなギャンブルの高揚感と人間模様が上手くリンクしている。
登場人物たちの(あ、一哉や逸を含めて)ウィットに富んだ会話や行動、
複雑な藤堂の家族の独特の愛情としがらみ、
カジノの華やかな光と 影、
柔らかくしゃれた語り口で描かれる、非日常と日常。
小悪魔的なあっさんこと雪と、本名、李九燿(ジウユー)こと藤堂。
華人財閥の19番目の末っ子で、一族から可愛がられている藤堂が16歳の時に
まるで賭けの景品のように引き取られてきた7歳の雪。
かつては徹底的に無視し、今は無礼且つ冷淡な口しか叩かない雪が
いつどうやって藤堂を愛するようになったのか‥…は、殆ど描かれないが
藤堂にとって、最初から雪が特別だったように
雪にとっても藤堂は未だかつて出会ったことのない、
下手に近寄ったら何かが起きそうな存在だったのだろう。
「この性悪」と言われて、「褒められちゃった」と答える雪が可愛い。
前作での彼は、もっとスラリと大人な印象があったのだが、
この可愛さは、藤堂にだから見せる顔。
一方の藤堂は、懐が広い大人でカッコいいけれど、
実は雪に関しては相当なヘタレだ。
一穂作品のスピンオフは、いつもこうして脇役では見られない顔が見えるのが魅力。
外向きの顔の底にそっと忍ばせた、特別な本当に特別な人にしか見せない顔。
それ覗き見る事ができる読者は、なんと幸せなことだろう!
回る運命の輪、
戻る先は常に貴方……それが定め……、というような関係が
実に現代的な感覚で、そしていつも思いがけない切り口で描かれている。
この作品も、また然り。
ただし、Hシーンの描写は今ひとつ。
力作なのは分かるのだけれど、文字を音読するような感じになってしまう。
美しい描写、面白い描写も散見されるが、一息に気持ちのまま読む流れがない。
そこは些か残念でした。
今回お初に登場の、藤堂の兄の令輝(レンフイ)がまた魅力的。
雪を引き取ってきて、まるで道具のように冷淡に扱っているかのようで
実は誰より雪と藤堂を理解していたのは彼だったのでは?と思わせる。
物語にダークな深みと凄みを加えるこのお兄ちゃん、多分アラフィフ独身。
さて、更なるスピンオフはありやなしや?
最後に。
表紙が(季節外れだけれどw)素敵……、構図や色彩が好みでした♡
※ 初っ端に出て来た「放蕩一代記」の銅版画は、
読む版画と言われるW・ホガースの作。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/data/060114/
こういう細部も一穂作品の魅力になっていると思います。