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作家買いです。
もともとトラウマを持つネガティブな受けが、攻めに愛されトラウマの呪縛から解放される、という設定が好きなこともあってあらすじを拝見した時から非常に楽しみにしていました。
内容はすでに書いてくださっているので感想を。
受けの仁居が恋愛に対して臆病になったのは初めて好きになった彼に「お前の愛は重すぎる」と言われたことがきっかけではあります。
が、その前に彼の両親が自ら命を絶ってしまった、その時に「たくさん愛して、愛されて、幸せに生きていってほしい」と言った、母親の言葉にも縛られてるんですよね。
愛したいし、愛されたい。でも愛されずに生きてきた自分は「愛する」と言うことがどういうことなのか分からない。
両親亡き後、引き取ってくれた母方の叔母の家で、自分の両親のように甘えることはできず、そして従姉妹の子の言動がきっかけで若干17歳にして叔母の家を出て一人暮らしを始める。
これがどれだけ仁居の心を傷つけることになったのか、彼の気持ちを考えると涙がでました。
姉の子を引き取って育てることにした叔母の気持ち。
妻の甥だから引き取ったけれど、自分の子を傷つける言動(これは嘘なわけですが)をされたからと事実確認もせずにまだ子どもである仁居を家から追い出す叔父。
自分の気持ちに納まりが付かないからといった、ごく単純な幼い気持ちで仁居を傷つけ、数年後には「あの時はごめんね~」で済ませてしまう従姉妹のみちる。
どの登場人物の気持ちもダークな部分も含めて非常に理解できる。人間の心のブラックさを正面から表現しているなあ、と。
そして従姉妹のみちる本人はそれほど酷いことをしたつもりがなく、それでいて相手の心を殺してしまうほどの言動の書き方に、「人を傷つける」ということがどういうことなのか、が端的に描かれていて感心します。
凪良さんの作品に惹かれるのは、こういう他者を思いやる気持ちとか、反対に人を傷つけてしまう言動といった心の機微が細やかに描かれているからかもしれません。
一方、攻めの国立も過去のトラウマを抱えているため、恋愛がうまくいかない。攻めにもトラウマがあるってちょっと珍しいパターンだなと思って読みました。
お互い、自身のトラウマを抱え、それでも相手を大事にしたい、という優しい気持ちに溢れています。
が、その気持ち故に空回りしてしまいすれ違う部分もあってハラハラしながら読み進めました。
仁居にトラウマを与えることになってしまった、仁居の当時の恋人の気持ちもすごくよく分かるのです。
まだ17歳で、大きなトラウマを抱えたった一人で生きている少年。彼を丸ごと受け止めるにはまだ21歳だった彼にはしんどいことだったのでしょう。
この作品は仁居と国立の恋愛、と言うだけの話ではなくて、彼らを取り巻く周囲の人たちの気持ちの機微も丁寧に描かれていて、非常に感情移入しやすくまた読みやすい。
国立のトラウマの原因になったのは国立の妹に襲い掛かった犯罪が原因ですが、直接的な表現はないですが女性が襲われる、といった内容を含むため苦手な方は注意されたほうがいいかもしれません。終盤では彼女もゆっくりと前に進めるようになり同じ女性として安心しました。
子どもの頃母親と色々な話をした『川』。辛いことが多かったけれど、それでも自分は両親に愛されていたんだと気づくことが出来たのもの国立おかげで、本当に良かった。これから二人でずっと幸せでいてほしいと願ってやみません。
『川』の使い方も非常にお上手。穏やかに流れる時もあれば、濁流となって流れることもある『川』。まさに仁居の気持ちと上手くリンクさせた情景で、さすが凪良さんと感心するばかりの神作品でした。
昨年から、様々な色合いの作品を発表し続けていた凪良先生。
今回の初ディアプラス文庫は切なさ満載のひっそりとしたお話になりました。
過去に囚われて、恋愛することに臆病になっていた主人公・仁居が、これも、過去に囚われて恋愛関係が上手く続けられない国立と、子猫を拾った事をきっかけにして、少しずつ歩み寄っていく。
恋にのめり込んで、また傷つくのを怖れ、いつでも戻れると自分に言い聞かせながら、本当に少しずつ。
これ、読んでいて、最後バッドエンドになたらどうしようって、ドキドキした。
でも、ちゃんと、仁居は過去は過去として乗り越える事ができた。
エロはほとんどないし、主人公は傷つくのを怖れるばっかりでじっとり暗いし、お相手のトラウマは妹がらみ。
おまけに、語る視点は次々変わる。
この本、BL小説初心者さんにはオススメできないが、このジリジリ感は小説の醍醐味。
私的にはツボだった。
「おまえの愛情は重い」
高校生の時、仁居は恋した相手にそう言われて失恋します。
それからは恋をする度、重荷にならないように、相手と一定の距離を置くようになるのですが、いつも上手くいきません。
いつしか仁居は、自分はちょうどいい距離感で人を愛せないと孤独を受け入れるようになりました。
27歳、英語の非常勤講師になった仁居は、以前勤めていた高校の数学教師・国立と偶然再会します。
同じ高校に勤めていた時には、ほとんど関わりが無かった二人。
捨てられていた子猫を二人で介抱し、人懐っこい国立と過ごすうち、仁居はどんどん国立に惹かれていきます。が、過去の失敗から仁居は恋愛に臆病になっていて・・・・・・というお話です。
正直なところ読み始めは、少々読み難そうな印象だったんです。何だか淡々とゆっくりで停滞感があって、これはちょっと忍耐力が要りそうだぞ、と・・・
でも、仁居が窓を開けて呼ぶところで、その停滞感が流れ、すっと消えていきました。作品の空気感が、登場人物とシンクロしているように思いました。
凄く透明感があって、綺麗な作品だと思います。
人懐っこい国立にもいろいろあります。悩みも、トラウマも、傷も。
きっと皆そう。それでも皆生きていて、日々を何とか乗り越えようとしている。そんな、ある意味当たり前のことを思い出させてくれました。
本当に、大きな事件なんて一つも起きません。ただ、仁居と国立の日々が丁寧に綴られていくだけ・・・なのに、物語がちゃんと成立しているのは、本当に凄いと思います。
人と人って、元々ノットイコールなんだと思います。
相手のことを分かって理解したつもりでいても、相手と自分が同じ気持ちだと思っても、それは絶対にイコールじゃない。
だけど、それを二アリーイコールに近づけていく努力。それは話し合うことだったり、自分をさらけ出すことだったり、触れ合うことだったり・・・楽しいことばかりじゃなくて、時に喧嘩をして、傷つけあうこともある。
そうやって二アリーイコールにしていくことの大切さ、みたいなものを静かに描いた作品です。
物語の最後で仁居が語る「感じる場所は心にもある」という言葉に、ぐっと来ました。
エロい話も勿論大好物です。でも、セックス描写の有無じゃなく、相手が心の感じる場所に触れる幸せな瞬間。その瞬間が描かれる作品が読みたくて、私はBL小説を読み続けているんだと思いました。
個人的に凪良ゆうさんの作品の中で五本の指に入るくらい好きな作品です。時間をあけて何度も繰り返し読んでは萌えています。
内容としては、控えめな受けが優しい攻めによって心を開き、自分の過去から解放されていくというようなお話です。過去の恋人に、お前の愛は重いと言われたことで愛することに臆病になった受けの仁居。そんな彼を歯がゆく思いつつ、真剣に向き合う攻めの国立。国立にも実はトラウマがあり、彼も恋愛について悩みを抱えていました。そんな2人が付き合い、本当に分かり合うまでを描いたゆっくりとしたストーリーがとても美しかったです。
作品の視点は、大まかなまとまりごとに仁居→国立→仁居→国立と変わります。私は、交互に視点が変わる方が好きなのでこの構成は嬉しかったです。
いろんな素敵なシーンのある中、凄く印象深い場面があります。それは、国立が仁居の本当の姿を垣間見るシーンです。デートの後、やっぱりもう少し一緒にいたいと思った国立が仁居の家に引き返した時、真っ暗な部屋の窓際できつい酒を飲み、縮こまってる彼を発見します。仁居の周りに広がる、どうしようもなく重い孤独を初めて見た国立が、本当の彼について疑問に思うシーンでした。仁居の孤独がこちらにもひしひしと伝わり、とても印象的でした。好きな本でも、時間をあけて読んだら大まかなストーリーさえ忘れてしまうことがあるのですが、この本に至ってはこのシーンだけいつでも鮮明に思い出せます。それくらい胸にグッときたシーンでした。
大泣きするだろうなぁと思いながら読み始めましたが、ゆっくり話が進むので、こっちもゆっくり読めて、泣きたい気分にはなったけど、それがじんわりほどけていくような、甘くて優しくてほろほろした、紅茶に溶ける角砂糖のような恋のお話。
傷を抱えた人たちはみんな苦くてつらいけれどど、お互いを思う気持ちは甘くて優しくて、それを投げ込まれると、最初は受け入れられずに形を保ったままのそれが、だんだんほどけて、崩れて、染み込んで、溶け込んでいく感じ。紅茶に角砂糖が溶けるみたいに、ゆっくり混ざって、ゆっくり甘くなる、そんなお話でした。
じんわり染み込んで、真綿で首を絞められるように切なくて、あったかくて、泣けるけれど、ぼろぼろ泣くというよりは、ほろっと来る感じの、優しいお話でした。呼吸がゆっくりできるような気持ちになります。
穏やかな恋というか、傷を抱えて、隠そうとして、近づくうちに、さらけ出して、隠し続けて、それを辛抱強く待って、時にはゆっくり暴こうとしてみて、お互い怖いけれど好きだから、手探りで幸せを見つけようとしている感じで、激しい感情はあるけど、それを見せないのがいじらしく、切ない。