特別SSつき、イラスト入り
花丸WEB新人大賞受賞作。
軽妙な会話文と、ちょっと硬い地の文との緩急がきいた、読ませる芸人BLです。
あらすじ:
7年前に相方を膵臓がんで亡くし、芸人から放送作家に転向した片山(受け)は、
荒れ放題の部屋を見かねた周囲からハウスキーパーを紹介される。
やって来たのは、広川(攻め)という純朴な青年で……
片山は、学生時代から相方に片思いしていたバイ。
持ち前の口の上手さで周囲には飄々とした態度をとりながらも、プライベートでは酒に溺れ、相方の妻に一方的に仕送りをし続ける等、相方の死を引きずって生きています。
寂しさを埋めるかのように早川を誘い一夜を共にする彼は狡い大人ですが、その弱さに人間臭さや愛おしさを感じます。
広川は、世間ズレしていないピュアな好青年で、甲斐甲斐しく片山の世話をする様がとても健気。
施設育ちの彼は、幼い頃片山たちの漫才を見て救われた過去があり、片山に恋愛感情も含めた憧れを抱いています。
こんな二人の、そして周囲の芸人仲間やスタッフたちの会話劇をベースに進行する物語。
コミカルな雰囲気を漂わせつつ、随所に挟まれる相方との思い出、そして早川とのすれ違い等のエピソードはとても切なく、片山の苦悩が伝わってきます。
芸人の世界を描いた作品だけあり、登場人物の紡ぎ出す言葉の一つ一つがとても印象的。
相方の最期の言葉、広川の手紙、芸人仲間の片山への説教、そしてクライマックスの片山の独白…
関西弁のもつ言葉の率直さ、温かさも手伝って、彼らの人柄や想いがダイレクトに伝わってきて、胸を打ちます。
漫才のシーンはやや冗長にも感じましたが、BLではカットされることの多いネタのシーンをごまかさずしっかり書き上げている点は評価したいです。
相方の片山への想いにはやや共感できない点もあり、文章的に少しくどいと感じる箇所もありましたが、作家さんの芸人愛が伝わってくるようなパワフルかつ丁寧な描写に引き込まれ、一気に読むことが出来ました。
次回作への期待も込めて神評価です。
いや───…。なんでもっと早く読めなかったかな自分……。
第3回花丸WEB新人大賞受賞とのことでかなり納得です。
おめでとうございました!!
もうね、綱を持った瞬間から勝負は決まってたと言っても過言ではないくらい
ぐいぐいぐいぐい持ってかれるわけですよ。
オーエス!オーエス!!の掛け声も虚しいほどに。
(すみません、綱引きは全く作品と関係ありません)
付き合いの長い漫才師の相方・中本が膵臓がんで亡くなってしまい、
誰よりも愛していた片山は舞台に立てなくなり
それでもコンビ名“らんな~ず”の名を
みんなに忘れられないように細々と放送作家を続けていたわけですが
ある日痛風と診断され……。
痛風て、痛風て!!贅沢病言いますもんね。
数の子とかいくらも大好きですけど
そうそう食べられませんから私は痛風にならずにすみますけども。
そういうことじゃなくて。
痛風になるくらい無節制な食生活をしてしまうほどに
いい年こいて毎度飲み潰れてしまうほどに
片山はずっと相棒・中本の死から立ち直れていなかったわけです。
ここからしてもう切なさ全開なんですが。
中本の妻・ちんとも(ともちんです)、子供二人、
らんな~ずのマネージャー・淀川、
後輩芸人・赤福氷、同期夫婦漫才コンビ・ドンキホーテ、
濃くて濃くて君ら脇役ちゃうやろ!っていうくらいの面々が
片山を愛してくれてるんですよ。
そりゃもうこちらが照れてしまうくらいに。
なんといっても、ちんとも(しつこいようですが本名はとも代です)が
ハウスクリーニング兼家事代行業会社を起業して
そこの従業員の広川が一番のアレです(アレってなんだ)
ハイスペックなくせに自分に死ぬほど自信がなくて
作品後半で語られたその過去でまた泣かされてしまうんです。
ゆかりのふりかけ好きなんですが、食べる度に悲しくなってしまいそう…。
不幸設定ってずーんとなりがちですが
テンポの良い会話で気分を上げてくれたり
根底にある愛を惜しみなく見せてくれたりして
これ以上ないと思った悲しみは消える事はなくても
生きていれば新しい出会いもあり、大切なものも増えるのでしょう。
明けない夜はない、止まない雨はない、
そう信じられるような作品でした。
個人的に贔屓の作家さんばかり追ってしまうんですが
久しぶりの金星!!といった感じでしたので神とさせていただきます!!
関西には馴染みがあるので読むのは苦労しなかったですが
文字数が多くて思った以上に読むのに時間がかかりました。
しかし、
世界観にドップリ浸れました。
だからか、ずっと悲しかった。
読んでる間中、ずーっと寂しい気持ちでいっぱいでした。
ポッカリ空いた穴の周りをグルグル歩いてるような気分。
でも温かさがあります。
温かいけど寂しい。
寂しいけれど温かい。
亡くなった人への想いや、その後の生き方。
周囲の叱咤激励や愛情。
色んなモノが刺さり頭痛くなるほど泣きながら読了です。
読んでる間中ずっと悲しかったけれど、前向きで、とても良い作品でした。
お笑い芸人”らんな~ず”を中心に展開するお話です。
自分の半身ともいえる相方であり、
長年片思いしつづけた愛する人を亡くし。
その後、生きてる理由といえば、亡くなった彼が残したモノを守ることだけー。
受けの片山は生きながらにして亡くなった彼にしがみつく浮遊霊のようで、
人知れずさみしさを抱えています。
そんな中で出会ったハウスキーパーの広川。
実は広川は半ストーカーとも言えるほどのらんな~ずを追いかけてきたファン。
らんな~ずの話をしていても、亡くなった彼を『過去形』にしない部分に片山は安心感を覚えます。
広川といると心が穏やかになれる。
まるで亡くなった彼がそこにいるかのような充足感。
しかし、広川と彼の些細な違いを見つける度に、彼がいないことを再確認する。
周囲が前向きに未来を見て生きている中で1人ぽつんと留まる姿が切ないです。
広川は片山の気持ちは痛いほど分かっていて。
片山の支えになりたいと思う一方で、
いつまでも亡くなった彼にしがみつく姿を見ているのが辛く。
2人の間にある空気が変わっていってーーーと展開します。
生きながらにして死んでるような片山の再出発までをじっくり読むことが出来ました。
タイトルの語感ほど明るいお話ではないですが、
関西弁が明るくコミカルに仕上げてくれるのであらすじほど重すぎず。
ちょうどいい塩梅なんですが、
いかんせん、上にも書いたようにやたら刺さる部分が多くて個人的に不安定になってたのか。
きっと笑うシーンなんだろうなぁってとこでもやたらと涙が出てしまって(;///;)ウウウ
ずっと悲しくて寂しかったけれど、片山が1つの区切りをつけて1歩踏み出せて救われました。
上手く言い表すことが出来ず、すごく良かったの一言だけです。
悲しみも、思い出も、これから先の未来も、みんな抱えながら生きてるんだなとしみじみ感じました。
ただですね。
肝心のBがLするラストが物足りないよー!
え?そこで終わっちゃうの?後日談は?ってなりました。残念。
後日談は同人や特典で書かれているんですね(;ω;)
今からじゃ無理か…(涙)
人の死が関わるお話なので、読み終わった後寂しくなったら嫌だなと思っていたのですが、切ない中にお笑いの要素があったり、出てくる人達が色々な事を乗り越えていくので、最後はよかったねと思えました。方言BLいいですね。奈良さんのイラスト、表紙も好きです。
ハウスキーパー24歳×元芸人の放送作家36歳。
元芸人の受けは、かつての相方をガンで喪っています。漫才の相方であり、初恋の相手であり、片思いながら最愛の相手でもあった相方を亡くし、その後は生きてるんだか死んでるんだかわからない投げやりな状態でネタを書き、放送作家をしています。
その食事状況の悪さと健康状態(通風になってます)、マンションの汚さを見かねた幼なじみにハウスキーパーを派遣されます。それがやせっぽちでガリガリな攻めでした。
以前から受けの大ファンだった攻めは、健気に受けに尽くします。相方を喪って以来消化試合のような生活を送っていた受けは、だんだん自分の中で攻めの存在が大きくなり、それにつれて相方のことを忘れそうになっていく自分が許せなくて揺れ動きます。一方攻めは、施設育ちで母に存在を否定された過去から、自分に価値を見出せず、自分が受けにふさわしくない、受けが自分とともにいてくれるとは思えない、と思っています。
とにかく切ない話でした。恋愛関係の描写や、攻めのおいたちなんかも切ないですが、とにかく相方の死の回想が涙なしには読めません。
これあかんやつや…と思いました。
死にネタがきついかたにはオススメできません。特に最近ガンで亡くした身内がいたらかなり落ちます。(私的意見です)
でもとりあえず、最後には、よかったね、と思えました。さっさと同居して、攻めをもうちょっと太らせてやってほしいです。
個人的に、大阪出身でお笑いがとても身近な存在なので、BLにしろ非BLにしろお笑いネタのマンガや小説はよく読んでいます。
その中でも、割とがっつりお笑いについて書き込まれた作品だと思います。大阪弁もほとんど違和感ありませんでした。
でも、カンニングの竹山さんがおっしゃっていたのですが、亡くなった相方の奥さんにギャラの一部をコンビとして送金する行為は脱税を問われるそうですので、それはアウトだそうです。
あと、花丸文庫☆フレッシュスター大収穫祭に収録されている番外編は、2人がくっついたあとの初デートの話でした。