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二つ年下の異母弟・奏人(攻め)を、幼少より母の虐待から守ってきた七緒(受け)。
大学生となったある日、奏人は七緒の前から姿を消し……
七緒と奏人の視点が交互に出てくる四部構成+後日談という構成。
二人が子どもの頃から見ていた奇妙な夢が物語のキーであり、奏人が七緒の前から姿を消した理由でもあります。
この夢が非常に不気味で、和風ホラーの趣きたっぷりです。
夢の中で十五、六の美しい少年となり、お堂のような建物に閉じ込められている七緒。
彼の世話をする老人に「オワタリさま」と崇られている一方で、毎晩のように男たちに輪姦されており、最後には……
物語中盤に挿入される、この夢の真相ともいうべき過去編がインパクト大でした。
ネタバレになるので詳細は省きますが、性的搾取のむごさや、中途半端な正義の残酷さ、そして村社会特有の陰惨な空気など相まって、これだけで一冊の本に出来そうなほど、密度の高いエピソードとなっています。
寄る辺ない少年二人の結末は非常にやるせないものですが、儚い一生の中で互いの存在に希望を見出し、精一杯愛し抜く姿が切なくも美しいです。
過去編が強烈すぎて、それ以降の七緒と奏人の物語がやや霞んでしまった感はありますが、終盤明かされるもう一つの謎には驚かされました。
真相自体にというより、この伏線はあの夢との対比の意味合いがあったのか!という点に。
哀しい真相ですが、どんなときにも互いを守ろうとする二人の想いの強さには感動しました。
緻密なストーリー展開に非常に惹きつけられたので、神評価です。
笠井さんの挿絵もいつもながら素敵でした。
ただ、今回濡れ場が少なめ(攻めと受けのシーンは前半一回のみ)なので、他作品の挿絵ほどアクロバティックな構図はなく、比較的普通のシーンの絵中心となっていました。
作家買いです。凪良さんが「今回は久々に黒成分(シリアス度)多めですね」と書かれていて、しかも笠井さんの挿絵。読む前からもう期待度MAXでした。そしてその期待を裏切らない、まさに神作品でした。
普段はネタバレ上等でレビューを書くのですが、この作品はあまりネタバレしてしまうと面白さ半減だと思うのでなるべくネタバレなしで書こうと思います。
父親の愛人の産んだ子(異母弟)をとある事情から引き取ることになった七緒の家。夫の愛人の産んだ子を愛せるわけもなく、七緒の母親は異母弟・奏人に凄惨な虐待をします。この問題の中心人物である七緒と奏人の父親は母親の虐待を知りつつも、その行為に目をつむり助けることはしません。
親の事情を理解できるはずもない七緒は、そんな奏人が可哀想で何かにつけて守ってあげるのですが、そんな中遊びに出かけた海で母親が海難事故に遭い亡くなるという事故がおこります。
虐待をしていた母親が亡くなったことで一見平穏な暮らしが始まるのですが、初めは奏人が、そして次は七緒が悪夢に魘されるようになります。
助けてくれるべき親に恵まれることなく、お互いが唯一の存在であった二人は、男同士であり、かつ腹違いとはいえ血を分けた兄弟であるという禁忌を飛び越え恋慕の情をかわし始めるのですが、七緒が悪夢を見るようになったことを知った奏人は急に七緒に別れを告げ…。
というお話でした。
ストーリーの視点が七緒で始まり、途中奏人視点に変わったりするのですが、さすが凪良さんというべきかストーリーの組み立てが非常にお上手ですんなりストーリーに入り込めます。
七緒の見る夢が非常にホラーチックで怖い。怖いのだけれど、描写がきれいで何とも惹きつけられます。七緒と奏人の見る夢はいったい何なのか、夢に出てくる登場人物はいったい誰で、どんなつながりがあるのか。どんどん話に引き込まれ、ページを捲る手が止められませんでした。
七緒と奏人。
二人の夢に出てくる「オワタリさま」と四郎。
まだ子どもである彼らに対して、周りの大人たちがあまりにクズで、二人に対するあまりの凄惨な仕打ちに思わず怒りで震えました。
そんな中、お互いが唯一の慰めであり、信頼できる相手であり、深い愛情を相手にそそぐ彼らの純愛が非常に良かった。最後の七緒と奏人のもとにいつもやってくるてんとう虫には思わず号泣してしまった。オワタリさまと四郎の二人かな、と思って。やっと自由になれた二人がいつまでも幸せでいられるようにと願ってしまいました。
今回の話は甘い話でも、ほっこりする話でもありません。意に沿わない行為を強いられたり虐待されたり、痛い表現はたくさん出てきます。甘々で、優しいお話を好む方にはお勧めできないストーリーです。
それでも人の残酷さをはっきりと浮き彫りにし、人を愛し守るということはどういうことなのかを問う、壮大なお話でした。
凪良さんも笠井さんも、どちらも作家(絵師)買いするくらい好きなのですが、凪良作品に笠井さんの挿絵ってちょっとイメージが湧きづらかったんです。が!良かった。すごく良かった。笠井さんは「エロを描かせたら右に出るものなし」と個人的に思ってるのですが、切ない表情や、相手を想う表情なんかもすごく良かったです。
内容はもちろん、タイトルも、挿絵も、文句なく神評価です。
凪良さんの本は買うことにしているので、購入。
しかし、この表紙。笠井さんは好きなイラストレーターさんですが、こういう表紙は買いづらいので通販しました。
凪良さんが、こういうエロエロな話を書いたのかとそこに驚きましたが、
ところがどっこい。
えー、何でこの表紙にしたの???
誤解なきよう申し上げておきますが、笠井さんはかなり昔からずっと好きです。
でも、この表紙はもったいないかも。全然中身と合っていないですね。
この系統の話を好きな方は、エロメインだと思って逆に手に取らないんじゃないかしら。
内容は異母兄弟と怪しい因習の夢で、エロよりももっと村の因習にまつわる残虐描写の方が印象的でした。
マヨの娘(他国ですが贄の娘を村の男全員で輪姦して、最後に贄として殺す祭儀です)的なネタがお好きな方には、オススメです!
凪良さんなので最後は幸せになるとわかっていても、オワタリ様と四郎はどう考えても幸せになれないのは確実なので、過去の話は読むのがつらかったです。
でも、生まれ変わって出会えてよかった。
こういう因習系の話は大好きなので、大好きな凪良さんで読めて嬉しいです。
凪良先生の作品を読んだ後は、すっかり物語の世界に引き込まれてしまってなかなか戻ってこれない現象(笑)に、毎回陥ります。ぼーっと腑抜け状態。
今回は特にひどくて、いろんな意味でドキドキ、動悸までしています。
先生の作品はいつも作者買い。新刊の知らせを聞くと予約段階でネットでポチリ。内容も書影もノーチェックです。今回、忘れた頃に届いた包みを開けてびっくり!沙野風結子先生の本が送られてきたのかと…。(笑)
笠井先生の絵っていろんな意味で影響力が強いですね。作品は読み進むうちに凪良先生らしさが出てくるのですが、読む前にグロくてエロいイメージが頭の中を支配して…。
決して笠井先生の絵が嫌いな訳ではないんです。すごく繊細で儚くて見とれてしまうほど美しい。でも違う絵師の方だったら違った印象から入れたんだなーとなんとなく思ってしまいました。内容が黒い=笠井先生って図式は、凪良作品でもそうなのかって…。
作品は、先生の新境地と言っていいのかなって思います。先ほど凪良先生らしいと書きましたが、それは作品の根っこに流れているもので…、横溝正史の作品にでてきそうな村、老人、ホラーな感じは今までにないものです。あとがきで先生も触れられていましたが、熊のシーンなどは「先生、どこに行っちゃうの?!」って読んでて不安になるほど。(担当者さまが止めてくれてよかったと私も思います。)
今までの先生の作品にも「死」を題材にしたものや、主人公が自分の犯した罪に縛られているものは多くありました。というより、そういう人生の影の部分を表現しているのが先生の作品なんだと思います。でも精神の痛みだけでなく、肉体の痛みまでともなって、そこらじゅうが「痛い」感じは今回が初めてで、読後、ハッピーエンドでよかったと心から思いました。
また、最後に母親の事故の謎が解けるシーンになぜか私まで救われた気がしました。
あれこれ書きましたが、半端なくおもしろいのは間違いなく、輪廻転生が繊細に描かれている傑作です。凪良先生の作品を初めて読まれる方がいましたら、別の作品からをおすすめしますが(なんとなく…笑)。
ますます、先生の次作が楽しみです。
本編とその後の「Harmony」が収録されています。
すごく気になっていて読みたかったのが、ようやく電子書籍になったので購入。
かなり好みだった。
凪良ゆう作品、相性が悪くて、実はあんまり好きではなかったのです。
物足りないというか、きれいすぎるというか……
今回は、「黒」凪良ゆう作品。
さすがです。
途中、心臓バクバクで、思わず本を投げ出しそうになるほどのエグさ。
それでいて、全体を流れる切なさ。
絶妙な塩梅です。
「黒」凪良ゆう作品をもっと読みたいです。