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表題作白雪姫の息子

カイル(ビースト)
26歳,第一王子
スノーホワイト(クロウ)
16歳,第二王子

あらすじ

父王によって国を追われた白雪姫の息子・スノーホワイト。孤独な暮らしの中に現れた一匹の狼はたくましい獣人となり、スノーホワイトの身も心も、自身の存在で埋めていく。

作品情報

作品名
白雪姫の息子
著者
犬飼のの 
イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA
レーベル
角川ルビー文庫
シリーズ
人魚姫の弟
発売日
ISBN
9784041036983
3.7

(136)

(50)

萌々

(41)

(22)

中立

(13)

趣味じゃない

(10)

レビュー数
16
得点
493
評価数
136
平均
3.7 / 5
神率
36.8%

レビュー投稿数16

子供向けとは違う童話本来の血生臭さを表現

レーベルは違いますが(同じKADOKAWAではある)、犬飼さんの二冊目の童話BL。
今回は美女と野獣から兄王子、白雪姫とラプンツェルから弟王子を引き出してらっしゃる犬飼さん。
ルビー文庫だけど厚めだ!というのが届いた印象でした(苦笑
そして、口絵ヤバイ!店頭ではカバーはつけてもらわない方がだんぜん安全ですよー。家でじっくり眺めましょう。

**********************
受けは王国第二王子のスノーホワイト(クロウ)。
父王の憎悪の対象であり、カイルにとっては何物にも変えがたい愛すべき存在。
美しい白雪姫の美貌を受け継ぎ、真っ白い肌に漆黒の髪を持つ16歳。

攻めのカイル(ビースト)は、母親である白雪姫が魔女によってかけられた呪いを代わりに受けた、金の髪と理知的な青い瞳を持つ王太子、26歳。
その呪いは夜になると体も精神も野獣へと変化させてしまうというもので、限られた人間だけが知らされています。
**********************

白雪姫から生まれた二人の王子。
しかし妻である白雪姫がスノーホワイトを産んだ後に身罷ったため、父王は酷くスノーホワイトを憎み妻と同じ名を取り上げ、森の塔へ幽閉してしまいます。
そのスノーホワイトを育てたのは白雪姫に登場する七人のエルフ(小人)たち。
人ならざるものに育てられたせいか、どこか浮世離れした少年へ育っています。
スノーホワイトの長い長い髪(ラプンツェル)へ宿る魔力は毎日食事がエルフたちの精液だったからなのですが、その育て方に度肝を抜くものの、そんなエロエロなシーンのすぐ後にやってくる彼らの寿命による消滅は切ないんですよね。
…ただやはりね!
どうしてもその前のエロエロが頭に残りますね(苦笑
エルフらの消滅はイコール塔と森の頑強な守りの消滅でもあって、そのことに怯え、独りぼっちになり寂しさで押し潰されそうになるスノーホワイトの元へ、毎夜獣姿のカイルが現れるようになったことでスノーホワイトの日常と心情に変化が訪れます。

ビーストの素顔が明らかになる前も後も、カイルはいくらスノーホワイトが体ごと愛しいと迫っても、己の呪われた体を、そして何より実の兄弟というものの禁忌を厭い拒絶しています。
それは彼自身が真夜中に繰り広げる残虐な所業を呪い、せめて意識のある時間は清廉潔白に生きようとしているためで、そこがひじょうに懸命で切なく書かれています。
誇り高く、また慈悲深い。
そんな彼がラストに見事決断する様も、とても神々しい。
真の王子としてえがかれていました。
お話自体はスノーホワイト視点で進むものの、彼がカイルの苦しい立場や心の底を察し労っているので、よけい読者へカイルの苦悩が伝わってくるのだと思います。
そして地の文の表現が視点主というよりもどこか神視点といいますか、離れたところから書かれている印象を受け、童話という題材がひじょうに生きていました。
やはり童話や寓話は受けや攻めを自分自身に重ねるよりも、一歩引いた、それこそ物語を読んでいるという感覚になる方が正解だろうと思いますので。
最後だけはカイル視点ですが、それがまた実の兄弟という薄闇を漂わせとても効いております。
どんな風にあの親子関係をおさめるのだろうかと気にしながら読みましたが、まさかという形でした。
その辺りも、童話の本来語られる暗さを表していました。
とても面白かったですし、少しでも童話の裏の意味を読んだことのある方ならば、よけい満足されるのではないでしょうか。

KADOKAWAさんには出来ればシリーズにして頂きたいですし、笠井あゆみさんのイラストも浮世離れしたお話にぴったりでした。

21

美しく賢く優しい淫らな王子さま

犬飼さんは好きな作家さんだが、この話ってもしかしてエグいの!?…って警戒しながら読んでみた。

まず、表紙を捲ったらバーンッッ!!ってキワどすぎるアングルの一枚絵で歓迎された(笑)。
続けては、馴染みの童話を持ち込んだ物語の設定。
父=死体愛好家の元王子、母=継母の恨みを買う程の残酷な元お姫さま、七人の小人=入り乱れている有り様がまるでモブ、ってのにふるい落とされなければ、その後はエロテックファンタジーの世界に浸る事ができる、と思う。
但し、近親相姦は避けようがないので、これだけは無理、地雷だって人はご注意を。

外の世界を知らずに、七人の小人にスキンシップとして性教育を受けてきた第二王子・クロウが、どんだけ淫蕩な様子を見せてくれるのかと思いきや…。
毎夜訪れるうちに恋心を抱いたビーストを追って外の世界に飛び出し、兄王子に匿われて真実を知る展開を通して、賢い・思慮深いって一面が伺える健気ないい子だった。
何だか元々そういった性格を併せ持っている所が根っからの王子様気質なんだなぁって感じる。

他にも魔法の力を持つ蔓のような長い髪とか、ビーストと名付けた獣人に惹かれていくとか、白雪姫以外のおとぎ話要素も含まれている。
クロウ自身の本来の清らかな性格と、性的に生々しい欲望を抱えているってギャップ萌えも大いにあって、BLファンタジーとして上手く昇華されている。

世に出ているおとぎ話は幸せな結末で終わっていても、そこにはブラックさや残酷さが潜んでいるってのは今や暗黙の了解事だ。
この話のラストはああいう締めくくりで良かったとは思うものの、ブラックな味も付いていたと思う。
クロウが既に正気を失った父王に対しての、憐みの情を醸し出すシーンは、異常さを正当化せざるを得ない苦みを感じたのだった。

6

怖く、そして美しいお話

犬飼さんに笠井さんの挿絵と聞いたら買わなくちゃ、ということで早々に予約してました。レーベルこそ違えど、以前同じく笠井さんの挿絵で童話ものを書いていらっしゃいましたし、今回もタイトルから童話をリスペクトした作品かなと思っていましたが、まあ、予想通りのお話でした。

内容はすでに書いてくださっているので感想を。


白雪姫、ラプンツェル、美女と野獣、眠れる森の美女など、さまざまな童話を練り込んだ作品でした。

初っ端の、スノーホワイト(現在の名前はクロウ)と7人の小人たちがフェラしあうシーンで思わずドン引きしてしまい読むのに挫折しそうになりましたが、なぜに精液を摂取するのかという理由がわかってきたり、また7人の小人たちが消滅してしまう際にクロウにかける言葉などから小人たちがクロウに愛情を持って育ててきたことがわかるので、何とか読み続けられました。

そこを切り抜けると、あとはクロウとクロウの兄・カイルとのお互いを思うストーリーになっていてキュンキュンしながら読めました。

ディ○ニーのイメージからか、なんとなく童話ってほのぼのなイメージがありますが、原作はかなりグロイ。この作品も、人間の欲深さや業、非情な面をくっきりと浮き彫りにしており非常に読みごたえがありました。

何よりカイルの理性と本音の苦悩に萌え。弟としてスノーホワイトを守りたいのに、でも、という。王子でありながら両親に恵まれなかった彼にとって、両親を反面教師として、自分は常に理知的でいたいという葛藤がすごく良かったです。
対するスノーホワイトも可愛らしい。一心にカイルを求める彼の恋心が非常に可愛らしかった。

カイルの呪いが解けるシーンはご都合主義な感じは否めなかったけれど、「童話」という点で考えると妥当な展開かな、と。できれば「野獣」のままでも愛し合う二人が見たかった。

あとは笠井さんの挿絵が!今回も神でした。美しい絵柄に、萌え増強でした。

10

たっぷり長編

白雪姫のお話の、めでたしめでたしの、その後のお話。
継母に復讐を遂げた白雪姫は、その復讐のあまりの執拗さに、魔女の断末魔の呪いを身に受けてしまいます。
しかし、その呪いが顕れたのは、白雪姫が身ごもっていた赤ん坊でした。
そんな設定で始まる、本当は怖いおとぎ話の大集合。
7人の小人は陽気なドワーフから若さを司るエルフへ、
塔に幽閉された白雪姫の息子は、エルフの魔力で長い黒髪を自在に操り、
野獣は胸の奥底に秘めた想いに導かれて夜毎塔へ上ってくる。
いろいろなおとぎ話から縒り合わされた長編ストーリー。
結構グロい親殺しのシーンがあったり、完全実兄弟だったりするので近親ものに苦手がある方は注意した方がいいかも。
この、おとぎ話シリーズ、まだまだ続くのか、それとも、次は日本昔話でくるのかな。

5

試される導入部

初獣人もの。ケモ耳作品の人気上位にあったので軽率に読んだが、なかなかハードな内容だった。言うまでもないが、ケモ耳のモフモフを楽しむ作品ではない。

まず導入が読者をふるいにかけているかのよう。死体愛好癖やエルフとの乱交紛いの描写があり、ここでついていけないと思ったら読まないで、と教えてくれている。散々ヤった後に正論を言いながら消えるエルフに、倫理観や道徳観念も現実世界とは異なる世界だと分からされる。
物語が動き始める前に先の展開への覚悟を促す、親切設計だった。

塔に幽閉されて育った主人公のクロウは、毎日来てくれるビーストに恋をする。その恋心はビーストの言い分ももっともな気がしてもどかしく思いつつも、二人の逢瀬ともだもだは楽しく読めた。

なんだかんだあって兄弟と判明した後のクロウの反応は謎。男同士を禁忌とする価値観が兄にはあるのに、クロウにはなかった。だが兄弟はダメだという認識はある。その意識はどこから生まれたものなのか。塔で読んだ書物からなら兄と同様に同性への恋愛感情にも疑問を持っていないとおかしく、兄弟にだけこだわる背景が見えなかった。
最初に死姦を良しとする世界観だと思ったせいで、何でもOKじゃないことに逆に違和感を覚える感覚になっていた。

クライマックス後もいろいろすごい。腐乱死体と血塗れ死体の横で初めて……?
まあ獣人化への自責の念から正しくあろうとしたビーストが、呪縛から解き放たれたのは分かりやすくて良かった、かな。クロウの恋愛脳な悩み内容とは重さがつり合っていないが。
クロウは恋心が性欲に直結していて、告白も直接的。終始ただ発情していた。相手の裸を見まくって、ずっとヤりたいと思ってばかりだった印象。もう少しものを考えられるタイプのキャラなら好きになれたかもしれない。

いろんな童話が混じり合い、エロもグロも詰め込まれた一冊。主人公が好みじゃないが、ストーリーは面白かった。本文★3.5、挿絵プラスで★4。

3

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