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快楽を知った。
繊細且つしなやかなタッチ、クセの強い耽美寄りの絵柄は
一筋縄ではいかない感じがしますが、
お話の方も侮れない表現力をお持ちの作家さんです。
そんな冬辺(とうべ)さんの初コミックスは、
磁石のように惹きつけられてしまう中毒性のある短編集。
○第一倉庫にて / 第一倉庫より(描き下ろし)
ガスマスク男×フツウの男子学生・照のお話。
はじまりは同じクラスの長田という男からの一通のメール。
照の体に悦楽を教え込んだ長田はガスマスクをしている上に
同じクラスに長田という名の男は存在しなかった。
照は男の体格から、同級生3人を絞り出すのだが―
ちょっとしたミステリー仕立てになっています。
ラストの展開に”えっ!”となりましたが、描き下ろしでは、
更なるサプライズがあります。
長田の正体に唸らされました!必見です!!
○夢子になりたい
夢二には瓜二つの双子の妹・夢子がいる。
そして夢二の好きな祐は、夢子(彼氏持ち)が好き。
夢子の代わりでもいいと祐に訴える夢二だけど...
こちらは何と言っても祐の下衆っぷりに注目です!
策士家っぽくも見える彼の本心がどこにあるのか、
掴みどころがないところにとても惹かれました。
下衆攻め×不憫受けにクラクラゾクゾク...!
○男娼の恋
男娼の鈴は、客である優しい秋介さんに恋をしている。
でも秋介さんは鈴を抱かず、一緒に眠るだけ。
ある夜、秋介さんは鈴と鈴の同輩・泰の2人を指名し
自分の前でセックスするように言いつけるのだが―
好きな人と体を繋げているわけではないのに
事後、鈴の幸せそうな笑顔が印象的。
複数モノは得意ではないのですが、
ふんわりした気持ちで読み終えることができました。
○果てしない青
”ご主人様”のもとで暮らす子どもたちの話。
そこでは17歳になると、
扉の向こうの世界に出ていくしきたりがある。
間もなくその年齢を迎えるカズと、カズを慕うヒロ。
ご主人様への奉仕に遣り切れなさを感じながらも
”果てしない青”という希望が添えられた一作。
一番仄暗く哀しい作品でした。
○あゆみ
問題児(不良?)男子高生×お坊さんのお話。
トーンが明るい坊主BLで、キャラ設定が好みでした。
年下わんこのしょぼくれ具合はキュートだし、
柔和な坊主・昊天さんが煙草を吸うシーンも色気があり、素敵♡
総評としては
セックスシーンが多めながらも、
本当の意味で想いを通わせて体を繋げているCPが一組もない!
というエキセントリックな作品集でした。(触れ合いのみのCPは、除外)
それでも、絶望とか後味の悪さが濃く残らないのが、
冬辺さん作品のスゴイところですね。
又、収録順もとても上手く配置されています。
設定に地雷を感じたり
絵柄でも好みが分かれるかも知れませんが、
一度冬辺ワールドにハマったら
中々抜け出せない中毒性の高い作風だと思います。
評価は、”萌”とは別次元で、もっと色んなお話が読んでみたい、
という期待を込めた”萌×2”。神寄りです!
5本からなるオムニバス形式の作品です。冬辺先生の独特な儚いタッチが非常に活かされた作品ではありますが、読者の解釈に委ねられる部分も含むので、正直好みは分かれるだろうと思います。白黒はっきりつけて欲しいという方には向かないかもしれません。でも、ヒントはあるので私はそれを拾い上げて萌えることができました。
【第一倉庫にて(表題作)】
長田と名乗る同じクラスの男子に倉庫に呼び出され、犯されるようになった照。相手はガスマスクを着けているので顔は分かりませんが、体格が似ている男子はクラスに3人います。無類の女好きである永江、クラス委員の谷口、隣の席の小林。照は香水の匂いや手の傷などでガスマスク男を特定しようとしますが、ある日倉庫に行くとガスマスク男は2人に増えていました。本編はここで終了。最後の描き下ろしで、更にガスマスク男が1人増え4Pに突入します。では結局ガスマスク男の正体は永江、谷口、小林だったということなのかと思ったのですが、それぞれがなぜ照に手を出すようになったのかを語り始めると、実は1人だけ違うことが判明。最後の1人の正体に少しぞくっとしてしまいました。また、照が恋をしていた人物も分かり、何とも言えぬ切なさを覚えました。描き下ろしで一気に好きになった作品です。
【夢子になりたい】
綺麗な容姿でそっくりな双子の夢二と夢子。2人の友人で夢子の恋愛相談に乗っていた祐は夢子のことが好きですが、夢子の恋愛が成就し失恋してしまいます。祐のことが好きな夢二は、傷心の彼に夢子とそっくりな顔を利用して迫ります。夢子の代わりでもいいから抱かれたかった夢二の健気さに心打たれますが、行為が終わり1人になった祐の独白に驚くと共に、夢二の知らない祐の一面にすごく萌えました。
【男娼の恋】
遊郭もので、1人の客に入れ込んでしまう男娼の話はそう珍しくもないかと思いますが、その客の性器が使い物にならないため、他の男娼とのセックスを頼まれ乱れるところを見てもらうというのは斬新でした。受けは身請けされるのでハピエンではありますが、受けと行為に及んだもう1人の男娼は受けに複雑な想いを抱いていた模様で、純粋なハピエンとは言えないのかもしれません。
【果てしない青】
ご主人様と呼ばれる男に囲われているらしい数人の子供達。その中でも年長のカズ兄とヒロは、どうやらご主人様が帰宅すると奉仕しなくてはならないようです。カズ兄はヒロに先に眠るよう促したりすることによって極力自分が抱かれるようヒロを守ってきましたが、17歳になると屋敷を出なければならないため、2人に別れがやってきます。一番年長になりご主人様に抱かれるようになったヒロにカズ兄が残したのは日記。その日記を読んでヒロはカズ兄と再会することを誓います。「果てしない青」が何を表しているのかは解釈によると思いますが、独特の雰囲気があり今後の展開をいろいろ想像できる作品でした。
【あゆみ】
高校生で問題児の夕と、穏やかに彼を諭すお坊さんの昊天。この作品の中では一番一般的なBLっぽいかもしれません。昊天は綺麗な顔立ちなので、お坊さんという特殊な設定でも全然問題なく受け入れられました。ほのぼの系で2人とも可愛らしく、読みやすい作品だと思います。
アンソロで読んだ感触が好みだったので初コミックスを購入。絵柄がノスタルジックです。線が極細で、とっても繊細な雰囲気。でもストーリーは今っぽいと思う。
表題作は高校生・臼田照の、妄想と現実の狭間のようなサスペンスっぽいストーリー。長田という知らない人物から、放課後に学校の第一倉庫に来るようにメールで呼び出された臼田。そこでガスマスクをした学生服の男に犯される。ガスマスクの男は一体誰なのか。思い当たるヤツは三人…。
「夢子になりたい」
男女の双子もの。双子の夢二と夢子には祐という幼馴染みがいた。夢二は祐に思いを寄せていたが、祐は夢子を思っていた。夢子にカレシができて失恋した祐に、夢二は自分を夢子の代わりに抱くように迫る。果たして祐の反応は?
「男娼の恋」
時代不詳。男娼の鈴には秋介という常客がいるが、彼は鈴を抱かない。鈴が他の男娼と交わる姿を見せて欲しいとの願いに、惚れた客の要望ならと応えるが…。協力する相手の男娼・泰(ゆたか)がイイ男。
「果てしない青」
大人はおらず、男の子供たちだけしかいない、ある一家のお話。その家には、子供が17歳になると「扉の向こうの世界へ出て行く」というしきたりがある。 長兄のカズが17歳になって家を出て行く前に、彼を慕う弟のヒロがカズとセックスしたいとせがむ。カズが出て行った後はヒロが残りの弟たちを守り、「あの人」と呼んでいるご主人様の相手をすることになる…。設定が謎だらけの、ちょっと奇妙なお話。歪んだ世界の中で、カズが残していった日記に正気の片鱗が見えます。
「あゆみ」
落ちこぼれの高校生・夕と、彼を見守る相談役の僧侶、昊天(こうてん)の坊主受けラブ。昊天さんが色っぽいんです。ストーリーは単純なので、坊主受け萌えでしょうか。
「第一倉庫より」
表題作の後日談というか、答え合わせですね。行為は残忍なんだけど、臼田を呼び出す側には彼に対して気持ちがあって、臼田も実際はハマってるんです。
どのお話も非現実的な雰囲気が優っているせいで、人物の関係性に感じる残酷さや病み加減が薄れて麻痺してきます。読後、嫌な気分にならないのは、攻めが受けに酷な仕打ちをしていながら、受けに抱いている微かに甘い執着が見えるからかな。
これからどんな世界を描き出していくのか、注目していきたい作家さまです。
不思議な雰囲気の短編集です。
表題作は、体育倉庫に呼び出された高校生が、ガスマスクをかぶった顔のわからない相手に性的ないたずらをされる話。アンソロジー『覆面男子』にも収録されていたもので、その続きを描いた短編も収録されています。
これはなかなか面白いです。ガスマスク男がクラスメートのうちの誰かを探ろうとして、結局正体はわからないかんじで終わっているので、余韻にちょっとソワッとします。
本番は、受けが求めてからなので、性的いたずらと言っても無理やり感は少なく、レ○プものが苦手でもそれほど拒否感は出ないかんじかと思います。
(後ほど教えていただいて知ったのですが、ガスマスク男の正体は読み込めばわかるようです!)
ほかに面白かったのは男女の双子と幼なじみの話と、男娼と客の話。
双子ものは、双子の女の子の方を好きな幼なじみと、その幼なじみが好きで、妹の制服を着て幼なじみに抱かれる兄。ちょっとヤンデレめな終わり方が良かったです。
男娼と客の話は、三角関係というか、3人プレイがあるので、苦手な方はお気をつけください。男娼受けが可愛かったです。
ここまでの3作は萌×2ですが、あとの作品は個人的には中立かそれ以下でした。
『果てしない青』
ファンタジックな作品ですが、絶対的に説明が足りず、雰囲気だけで話が進む雰囲気だけマンガでした。とにかく意味がわからない。
『あゆみ』
坊さんと、停学中の高校生(だか中学生だか)の話。坊さんが受けですが、受けと攻めの関係性も不明だし、急に始まって急に終わるし、攻めはあまりに子供で好きになれず、受けは受けで何を思ってるのかわからなかった。
萌×2と中立以下が混在しているので、とりあえず評価は萌にしました。
特筆すべき点としては、表紙が綺麗でした。赤と黒の2色刷りに英文の型押し。デザイン系の洋書みたいなおしゃれな表紙です。
仄暗くて麗しい世界。
確かに、繊細で美麗な、この絵は嫌いじゃない。いや、寧ろ好み。
世界の仄暗さも、バカ明るさに比べたらずっと好き。
でもやっぱり、短編だからか、雰囲気はいいけど、ちょっとわかりにくいかな。
なんとなく雰囲気は判るのよ。
でも、なんか、もうちょっと、惜しい感じ。
ページ数が増えれば解決するかというと、それはそれで、結局は解決しないような、そんな惜しさ。
でも、これはこれで、こんな個性の作風なんだなと納得しちゃうところもあるのでいいんじゃないでしょうか。
カバーデザインはとっても凝っていて素敵。
山に送電塔の景色は私も好き。