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表題作初恋にさようなら

速水修司
17歳,高校生,バレーボール選手
恵那千尋
27歳,神経内科医

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

研修医の恵那千尋は、高校で出会った速水総一に十年間想いを寄せていたが彼の結婚が決まり、失恋してしまう。そんな傷心の折、総一の弟の修司に出会い、ある悩みを打ち明けられる。高校三年生の修司は、快活な総一と違い寡黙で控えめだったが素直で優しく、有能なバレーボール選手として将来を嘱望されていた。相談に乗ったことをきっかけに、毎週末修司と顔を合わせるようになったが総一にそっくりな容貌にたびたび恵那の心は掻き乱され忘れなくてはいけない恋心をいつまでも燻らせることとなった。修司との時間は今だけだ―。そう思っていた恵那だが、修司から「どうしたらいいのか分からないくらい貴方が好きです」と告白され…?

作品情報

作品名
初恋にさようなら
著者
戸田環紀 
イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
ISBN
9784344837836
3.9

(42)

(16)

萌々

(17)

(4)

中立

(1)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
8
得点
161
評価数
42
平均
3.9 / 5
神率
38.1%

レビュー投稿数8

攻めが愛されることを強く願った

すごくよかったです。
受け視点のお話なので、いつもなら受けに感情移入して受けがメタメタに愛されることを望むのですが、このお話では攻めが愛されることを強く願いました。初めての体験でした。
受け視点で語られていく受け(恵那)の過去の恋愛や現在の状況を鑑みると、その受けを慕う年下攻め(修司)が心底愛されることを願わずにはいられなくなるのです。
そして、あらすじにもありますが、受け(恵那)の片思いの相手の速水総一がこれまた、見た目だけでなく中身もいい男です。このことが恵那だけでなく、物語を追っていくうえで読者も救っているように思いました。また、いろいろなことが起きる中で修司の家族の温かさに救われました。
思春期の葛藤、カミングアウト、身内や自身の病気といった重いテーマを含みつつも、心地よい読後感があります。
複雑な関係性や過去の回想を織り交ぜながらも、恵那と修司の関係がしっかりと描かれていることで感情移入できました。
美しい比喩表現や情景描写も随所にあり、読み応えのある作品です。
ちなみにRシーンのテーピング表現に萌えました(^^♪

14

丁寧な心理描写に萌える

ずっと気になっていた作品。すごく萌えました…(余韻に浸っている)

設定的に萌え満載でした。冒頭はなんだか少し読みにくいというか、うっすらと感傷的に感じる表現にゔッとなりましたが、心理描写が巧みで、ストーリーが進むにつれキュンキュンしながら読ませていただきました。作者の風景や情景描写がとても綺麗で好きです。


中学生の頃にセクシュアリティを自覚し、高校の同級生だった速水総一に10年片思いをしていた恵那。一度は思いを伝えたけれども、友人として側にいることを選び、社会に出て研修医として働く今も友情は続いている。

しかし、総一が結婚することになり、絶望感に打ちひしがれていた恵那は、友人代表スピーチを頼まれてしまう。披露宴で無事大役を果たした後、総一にそっくりな弟の修司と挨拶を交わし、改めて総一に弟がいたことを思い出した恵那だった。


切ないんです…。恵那は自分がゲイだと自覚があるけれど、両親からは認めてもらえなかった過去があります。両親を騙し、片思いしている総一を騙し、自分を騙して大切な恋を守ってきた、孤独な思い。

他方、子供の頃、愛犬のあんこをかわいいといってくれた兄の友人を覚えていて、高校生になってから再会したその人に恋心を募らせていく修司。彼も高校生なりに悩みや重圧、孤独感を抱えていました。

恵那は、バレーボール選手として将来を嘱望されている修司の体と心の悩みや勉強の相談にのっているうちに、総一へ抱いている思いが揺らぎはじめます。

身代わりものは大好きなのですが、こんなに穏やかな気持ちでぎゅーんとさせられたのは新鮮でした。それは速水兄弟が本当にめちゃくちゃいい男たちだったからかも。見た目は似ているけれど、年が離れているせいか互いのことを尊重していて、とても家族思いなんです。

それと、息子の恋愛に理解を示す速水ママの複雑な心境もとりこぼさず、なおも子供を尊重してあげたいという愛情の示し方も、BLとしてこれからの時代を感じました。愛し合う二人を咎める権限なんて、一体誰に許されているのか?…と。

速水兄弟みたいなイイ男たちを拝めるのがBLの魅力。さらに、恵那が恋愛でダメージは受けても、(身体的にはさておき)メンタルがなよなよしておらず、しっかりと仕事の将来を見据えてキャリアを積もうとしているところもよかったです。

野球ボール、チョコレート、修司セレクションのCDなどの演出も効いていました。こういった小物やモチーフ使いにも作者のセンスがでますよね!

あぁ〜、とっても切ない現実逃避の時間を過ごさせていただきました。電子だったので小椋ムク先生のイラストが拝見できず残念でしたが、カバーイラストでイメージ補完します笑

4

受け・攻め双方の気持ちに胸が締め付けられる

昨年12月発売の『熱砂の相剋〜獅子は竜と天を巡る〜』で戸田環紀先生を知り、好きすぎて再読した後、先生の作品を探して読んでみた、こちら。

素晴らしかった…開始数ページで物語に引き込まれました。

年齢差(10歳!)×年下攻め。
最近、年下攻めでも「アンタ」呼びする作品を続けて読んでいたので、敬意を忘れず、最後まで丁寧に話す年下攻めっていうだけで、もう胸キュン。

切ない二人のすれ違いに、ぎゅっと胸が締め付けられる現代もの作品でした。

前半は、受けの恵那→攻めの兄である総一への叶わぬ片想いに。10年の夢破れ、結婚が決まった報告を真っ白な頭で聞く恵那の心境が痛いぐらい伝わってきて切なかった。。

中盤では、攻めの修司の、嫌われることを怯えながらのストレートな告白に胸を打たれて…

後半は、恵那が好きだったのは兄の総一であったと知った修司とのすれ違いに苦しむ恵那の姿に。

高校時代から10年も好きだった相手の弟から、本気で「好きだ」と告げられたらー
だんだんと修司に惹かれていく自分に気付きつつも、どこかで「身代わりにしているのではないか」と恐れてしまう恵那の気持ちにぐっと共感してしまって、読みながら苦しくなったりしました。

総一・修司どちらも素晴らしく好感の持てるキャラだったのに加え、彼らのお母さんとのエピソードもね。。良かった。。涙ぐむ恵那と一緒に、うるっと来ました。

お母さんの震える両手と、紡ぎ出される温かい言葉。
実の両親には認めてもらえず、”治療”と称され連れ回された辛い過去があるからこそ…お母さんの気持ちがどれほど恵那の心に響いたか。思い出すだけで、今ちょっと泣けてきた、、

初めて読んだのはファンタジー作品で、そちらも文句なく素晴らしかったのですが、現代ものってよりリアルに身近に感じられて、心を揺さぶられる気がします。

しっとりと世界観に浸ることのできる、素晴らしい作品でした。
戸田先生の作品、他のものもチェックして読んでみようと思います。

0

190センチ高校生攻め

研修医の恵那(受け)は、高校時代から10年間好きだった友人の結婚により失恋する。親友なので結婚式に出席し、スピーチまでこなし、心がはりさけそうなとき、友人の弟だという修司(攻め)を見て衝撃を受ける。修司は高校生だった頃の友人にそっくりだったのだ。
あまり関わらないようにしよう、と思ったのに、後日、偶然勤め先の病院で修司に再会した恵那は、その相談に乗ることで懐かれてしまうが…。


片想いの相手にそっくりな弟17歳×研修医27歳の、逆歳の差カプです。
攻めは高校生で、バレーボールの全国レベルの選手。身長は190以上あります。
受けの初恋相手の兄のほうは社交的で明るく、現在弁護士の好青年ですが、弟のほうは当初は寡黙でむっつりしていて、人を拒絶しているような子です。
受けは、高校生の頃に友人に告ったものの振られ、でも親友関係が持続したまま10年間片想いしている一途なキャラ。まだ好きなことがバレてはいけないと思うあまり、誘われたら飲みに行くし、結婚式に出席しスピーチまでしてしまう自虐的な人です。

おばあちゃん子の攻めが、祖母の通院に付き添ってきたのを機に研修医の受けと再会。そのときは攻めはむっつりしていたものの、街で受けがチンピラに絡まれたときに助けてくれ、以来交流が生まれます。片想いの友人に顔が似すぎていて精神衛生上距離を置きたい受けですが、攻めの相談に乗ったりしたことで懐かれ、惚れられてしまいます。

好きな相手とそっくりの弟、というありがち設定でしたが、心理描写や細かいエピソードなどが丁寧に描き込まれた、とてもいい作品でした。小椋ムクさんのイラストも素敵でした。
高校生攻めの悩みが、性欲が強すぎてどうしよう、な感じだったのにも萌えました。高校生、しかも190センチのバレーボール選手の体力および性欲萌えすぎる。
これは、さぞかしエッチシーンがすごいことに、と思ったのですが、攻めが受けのことを好きすぎるあまりねっとり濃厚系でした。これはこれで萌えるなぁ。
受けが少し健康に問題を抱えているので、余計に気を遣って抱く攻めがいい男だと思いました。

攻めのおばあちゃんや、昔攻め宅で飼われていたワンコ、受けが片想いの友人にもらったホームランボールなど、エピソードやアイテムが印象的にうまく使われていました。
年下攻めがお好きなかたにはオススメの良作です。

10

まるで読みやすい文学作品


神経内科医の研修生恵那千尋(受け)は、10年片想いしていた速水惣一の結婚によって失恋します。結婚式を気力で乗り切った恵那は最後の挨拶で10年前の惣一そっくりの弟修司(攻め)に出会います。あまりにそっくりなので心をかき乱される恵那でしたが、会わなければ忘れるだろうと思っていました。
ある日、修司たちのの祖母が認知症の疑いで来院し図らずも再会してしまいます。その後も、トラブルに巻き込まれたときに修司に助けてもらったことをきっかけに家に呼び、相談に乗ったり、勉強を教えてあげることになります。そうこうするうち懐かれて告白されるのですが、過去の自分が投影されてうまく拒絶できません。友達として付き合いを続けるのですが、一途に自分を見てくれる修司と一緒にいるのが居心地よく惹かれていくのを感じます。


恵那は中学の時にゲイだと自覚したのですが、そのときの相手には裏切られ両親には病気だから治るはずだと病院へつれていかれ、大いに傷つき、人付き合いがうまくできなくなってしまいました。惣一はクラスでもクラブでも一番の友達でいてくれました。うっかり告白してしまった時も、周りからの奇異な目を友愛にうまくすり替えて守ってくれました。それからずっと好きだったのでなかなか惣一から修司に心が移ったことを確認することができません。そのため修司を愛してると気付いた直後にいろいろ修司にばれています。

修司は高校3年のバレーボール選手でインハイで準優勝するような強豪高のエースで大学も推薦で実業団の入団も決まっているスポーツエリートです。
社交的な兄と違って不愛想ですが、真面目なやさしく祖母の面倒も率先してみるようなとてもいい子です。
あまりに容姿が惣一と似ているため、できた兄を尊敬していますが、同じようにできた人間になれたらいいのにとも思っています。
だから、恵那が惣一のことが好きだったと知ったとき、自分は身代わりだったのではないかと疑ってしまい、恵那の言葉を信じることができなかったのでしょうね。

すれ違っているときは本当に切ないです。特に恵那目線なので修司がどれほど苦しんだかというのが表現されていなかったのですが、きっととても苦しんだことでしょう。

最後、修司が恵那を信じることができるようになって、家族にも認めてもらえて本当によかったです。
修司はきっと優しく恵那の居場所になってあげるでしょう。でも、それ以上に恵那には修司の甘える先になって癒してあげてほしいと思います。

それにしても当たり屋に「医者にいかないと」って言われて動揺してるのみて、あんた医者だろって思わず突っ込んでしまいました。動揺しすぎで訳がわからなくなってたんだろうな。

小椋ムク先生の表紙がとてもきれいで思わず本屋で手に取ってしまいました。
中の挿絵も勿論素敵ですが、特にカラーイラストはちょっとした絵画のようでした。
そして、文章も「文学的な」という表現が正しいかどうかわかりませんが、綺麗な文章がたくさんあって、心理描写や風景描写、言葉1つ1つがとても綺麗で、読んでると心が洗われるような、イラストにぴったりな文章でした、でも、決して読みにくいものではなかったです。

5

この作品が収納されている本棚

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