電子限定おまけ付き
落ちこぼれの淫兎、穂澄は術者の精を貰わなければ消滅してしまう危機に陥っていた。飢えと暑さで行き倒れていたところを救ってくれたのは、心優しい警察官の青年六辻。
彼の家にはなんとすでに数体の妖が住んでいた。本来、雌しかいないはずの淫兎の雄である穂澄は、六辻に自分の正体を隠し彼の身の回りの世話をする様になる。
本家筋の術者でありながら式神を持ちたくない六辻と、淫兎でありながら式神になりたくない穂澄。
争いを嫌う二人は次第に、お互いが無くてはならない存在になっていく。
淫らな兎と書いて淫兎なので、どんだけエロい兎が出てくるのかと思えば、普通のモフモフファンタジーでした。
悪い人というのは出てきません。優しい世界の優しいお話です。私の好みではありますが、人によっては物足りなさを感じてしまうかも。
六辻と穂澄は契約を交わしたばかりで、仕事というのは行ってないから続きがあるのかなぁ。虹烏の謎もまだ残ってる様なので、これから先解けていくのを期待しています。
六辻の穂澄に対する想いが、いつ恋慕となったのかが分かりやすく描かれていれば、尚良かったです。
淫兎の穂澄(受け)は住んでいた森を追い出されてしまい、道端で死にそうになっていると、そこを通りかかった六辻(攻め)に拾われます。
彼の家は妖怪がたくさんいました。ただの化け兎だと思っている六辻は穂澄も家においてくれると言ってくれます。
六辻も妖たちもいい人ばかりでとても居心地がよくて・・・
穂澄は雌しかいないはずの種族なのに何故か雄で生まれてきた淫兎です。
その上とても体が弱かったのですが、今までは都会の中の小さな林で優しいたくさんの姉たちに守られて暮らしていました。淫兎とは男性の精気を糧に生きる妖です。
妖を見る能力のある人間からしか貰えないのですが、今は妖を見る能力の人間は少なくなってきており精気をもらうことが難しくなっています。そのため姉たちは術者の式神となって精気をもらっています。人型をとっても少年にしかなれない穂澄は姉たちのように誰かの式神となって精をもらうことはできないと思っていて、もし式神になれても誰かを傷つけることも良しとしていないので成体になったら、霧になって消えることを覚悟しています。
六辻の部屋では今まで守ってもらうばかりだった自分にもできることがあり、感謝されることで生きがいを感じ、消えたくないと思うようになります。
六辻は術者一族の直系で強力な術者なのですが、妖に心を寄せるやさしい性格のため妖を道具のように使い捨てにする一族のやり方に反発し、式神を持たないと誓っているため、ほぼ勘当状態です。
先住妖怪たちが本当にいい妖ばかりです。化け化け猫の鈴之助、化け鼠のネズ、土鍋の付喪神の窯爺、遊び火たち、かまど神。
みんな六辻が大好きで六辻のために何かしたいといつも思っていて、でもできないことをもどかしく思っていて、人型がとれる穂澄がきたことで自分たちも六辻のために動けるととても喜びます。
穂澄が霧になってしまうことを聞いてとても心配し、少しでも永らえるよう心を砕いてくれます。
穂澄の姉たちもやり方は穂澄にとって受け入れがたいものであったけど、穂澄が大事で心配する気持ちは本物でなんとか霧にならないでいいように心を砕きます。
穂澄のために少しでも生きながらえさせようとする鈴之助たちや土下座して懇願する姉たちの姿は胸がつまりました。
ただ、契約のときはちょっとコメディタッチでした。
衆人環視(先住妖怪の見守り)の中でやらないといけないし、二人ともが初めてで六辻もキスまでした後「その後どうするんだっけ?」ってなるし、「姉様から一通り教わってます」という穂澄は雰囲気もなにもなくいきなり口淫始めちゃって慣らしてないのに入れようとして入らないし、頑張ってお膳立てしたのに~って鈴之助は嘆くし・・、笑ってしまいました。濡れ場で笑うなんて初めてかも・・
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無事式神になってからもひと悶着ありますが、ここでもやはり穂澄の味方の従弟の伊波が協力してくれて無事解決し、二人が仲良く妖怪パラダイスに帰ることがで、幸せに暮らせることになって本当によかったです。
登場人物はほぼいい人ばかりで、嫌な気持ちになるような人はあまりいません。
悪い人だと思っていた人も実は・・というくらい皆いい人でした。
ただ、周りが賑やか過ぎて2人の恋愛があまり無かったのがちょっと残念でした。特に六辻に関しては出番が少なくて、契約することを決意するところ以外はほぼ全部他の妖たちや従弟のお膳立てに乗っかっていただけという印象でした。六辻にもう少し男気があったらもっと良かったのではないかと思いました。
雌しか生まれないはずの淫兎の雄として生まれた受け。住んでいた森が開発されて行き場を失い、ウサギ姿でさまよっていたところを警察官の攻めに保護される。普通の人間には見えないはずなのに、攻めのアパートには他にも先住の妖たちがいて…。
妖を見ることができる攻めと、突然変異的に雄で生まれた淫兎という妖の受けです。
ウサギ姿で行き倒れていたので、最初はただの(?)ウサギの妖だと思われていて、翌日受けが人間の姿になったときは攻めはびっくりです。
その攻めは、妖を使役する一族に生まれたものの、妖を痛めつけるのが嫌さに家を出て警察官になったキャラ。行き場のない妖を拾ってきては家に置いているので攻め宅には受け以外にも5体の妖がいます。
受けは術者から精がもらえないと消滅する状態に置かれていて、死を覚悟しています。その切なさが、たくさんの妖とのドタバタ生活によって印象が薄くなっていて、なんでこんな設定にしたのかなと思いました。猫の妖だけでよかったのに、ネズミやらなべやら鬼火やら、特に鬼火は何の役にも立ってないし、この妖たちの設定を説明するページ数でもっと攻め受けの恋愛描写をして欲しかったです。
あと、攻めの存在感が薄すぎて…。受けが攻め宅の妖に使われて家事しているあいだはずっと仕事に行ってるので、最初の頃は帰ってきてご飯食べて礼言うだけ。それからも、大層な能力のある術者という割に受けの正体にトリプルで気づかない。ただの妖と思っていたのが実は人型になれる化けウサギでした、化けウサギだと思っていたのが実は淫兎でした、淫兎と思っていたのが実は…(以下ネタバレにつき伏せます)。本当にそれほど能力あるの? と思っちゃいました。
そもそも妖を酷使する家業が嫌だと逃げ出したというキャラなので、その時点ですでに情けなさがあるんですが、その後も基本逃げの姿勢。受けのピンチにはネズミの妖に呼ばれる始末。
受けの最終的な正体が判明した後も、なぜかわざわざ受けを本家に連れて行き、案の定ちょっとピンチに陥らせる。結局助かるんですが、これ無理強いされてたら受けは一族の手に落ちてるし、むしろ何で助かったのかわからないくらい甘々な見通し。頼りないというか、頼れないというか…。
受けは意志は強いんだけど、出て行こうと思っているのに出て行かないし、妖にお膳立てしてもらって攻めにキスしてもらって…キスしろと囃し立てられてるシーンが非常に萌えない。
あと攻めは何を思ってキスしてたのかな? 自分が嫌じゃないから、受けも嫌じゃないと言ってるから、というだけでキスしてる感じで、そこで「もしかしたら自分とのキスで精を得てるのか」と考えが至らない攻めはやっぱり大した能力者には思えなかった。
エッチシーンは2度。1度目のエッチの時の、妙に積極的な受けが意表を突かれてちょっと面白かったです。エッチシーンの評価で萌です。
個人的に、攻め視点の作品はあまり好きではないのですが、この作品は攻めの視点の方が面白かったんじゃないかな、と思ったりしました。
モフモフファンタジーです。『淫兎』の雄が、受けの穂澄です。受け視点で進みます。
こちら、オチが分からない方が面白いと思うので決定的なネタバレなしで書きたいと思います!
『淫兎』というのは淫妖の一種で、男性からもらった精気を餌にして生きています。そのため雌しかいないはずが、穂澄は雄として生まれてきてしまったんですね。成体になれば男性の精気でしか生きられないのですが、雄で力も弱いため精気をもらう事は難しいという状態です。また、そんな場合は術者と式神の契約を結べば生き延びる事が出来ますが、式神として他者を傷つける事もしたくない穂澄は、このまま霧になって消えてしまう事を覚悟しています。そんなある日、行き倒れていた所を六辻(攻め)という青年に保護されて…という展開です。
六辻の家には『化け化け猫』だったり、『土鍋の付喪神』、『化けネズミ』、『遊び火』と、穂澄と同じように保護された妖達が居て、にぎやかに暮らしてます。そこに穂澄も加わり、みんなで協力してご飯を作ったり、掃除や洗濯を六辻の為にするというほのぼの場面が続きます。しかし一転、穂澄が成体になる時期が近付いて来たため、どんどん弱っていくというシリアス展開です。霧になって消える事を覚悟していた穂澄ですが、恋心を抱いてしまった六辻や、にぎやかな妖達と暮らすこの生活が楽しくて、死にたくないと願うのですね。
このあたりが切なくはあるのですが、あまりにグダグダ悩んでいる穂澄に少しイライラ来ます。一途で健気ととてもいい子なのですが、死にたくない、でも他人を傷つけるのはいやだ、とずっとやっていて、ちょっと頑な過ぎるのではないかと…。そして、お互いの気持ちがわかる場面では、妖達や穂澄の姉の淫兎達がやたら出張って来て、主役二人が頑張らなくても良い状態というのでしょうか。周りがワーッとまくしたてている状態で、大事な場面なのに読んでいて少しシラケてしまいました。
攻めは攻めで、術者であるにもかかわらず、過去の苦い経験から式神は持たないとやっていたのに、これまた割とあっさりと穂澄と契約する事を了承。二人ともあんなにグルグルやってたんなら、もう少し覚悟を持ってにして下さいよと言いたくなります。
この後、さらに二転三転と驚きの展開がまっていて、話としてはとても面白かったです。
そして淫兎という設定の為、初エッチが意外性があり!です。純情でピュアそのものという感じの穂澄ですが、意外な積極性と色気を見せてくれるんですね。さすが淫兎です!!
そんな感じでちょっと違和感を感じたり、シラケてしまう場面もありましたが、話自体が面白かったのとエッチが萌えたので『萌』評価です。
妖のお話ですが、兎やら猫やら鼠やらが出てくるのでもふもふ好きには楽しめるのではないかと思います。
攻めと受けの恋愛というより妖達のギャラリーがわいのわいの楽しんでる感じです。
設定の説明が多かったり、色々上手くいき過ぎていて、恋愛への萌え度は少な目でした。
もう少しドラマチックな事件や攻めの能力者としての本領発揮の場面があったら萌えたのかなー?
壮大さがなくてややこじんまりでした。
ほんわかしているお話がお好きな方には良いのではないでしょうか。