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イタリア留学から、オーケストラの客演のために日本へ帰国し、再びイタリアへ帰ってきた守村悠季の修行の日々の物語です。
京都弁を話すお茶目なエミリオ先生から「一ヵ月半の間に三つのコンクールに出て、全部金賞をとってくるように」という命令が出てしまいます。
曲は悠季が今勉強中のバッハのシャコンヌ。
ところがこの曲が思うように理解できない悠季は、先生のバカンスに同行する許可をもらえずローマに残ることに。
そこにいきなり圭が現れて…!
悠季の格闘と、圭のちょっと危ないストーカーぶりが楽しい一冊。
課題の三つのコンクールがとてもユニークなところも、お茶目です。
日に焼けて無精ひげもたくましい圭に、悠季はくらくらと引きよらせられて、野外で思わず…という刺激的なシーンもあります。
シリーズ第4部の5冊目。通しで21冊目になります。表題作のみの収録です。
《出版社あらすじ》
神よ、どうか僕の音楽をあの高みまで招いてください──。
イタリアに戻った悠季はエミリオ先生から突然、わずか一ヶ月半の間に開催される三つのコンコルソ(コンクール)に出場して、全てで金を取るようにと至上命令を出されてしまう。圭には禁欲宣言をして早速猛レッスンを始める悠季だったが、課題曲であるバロック音楽の名作『シャコンヌ』が理解できず、苦しむことに……!
今回は、圭の悠季依存のほどがバッチリ分かります。悠季がいないと何もできない、生きていられないのではないか?と思いました。今回の圭には笑えます。
ローマに戻ってきた圭と悠季ですが、悠季は帰って早々にエミリオ先生からコンクールに出場して金を取るよう言い渡されてしまいます。7月28日にナポリ『ウヴァ・フェスタ(ぶどう祭り)』での『バロック・コンクール』、8月8日にパルマでの『パガニーニ・コンクール』、9月5日からはヴェルチェリで『ヴィオッティ・コンクール』。しかも先生はコンクールまでは毎日レッスンしてくれるということで、当然バカンスにもお供することになります。青ざめる悠季。圭のことどころではありません。
しかし、バロック音楽が掴めない悠季は1人残って留守番をし、バロック芸術を理解することから始めます。そして彫刻作品や建造物を見て回っている最中に圭と出会い(なんと圭は悠季を尾行していたのです)宮殿に連れて行ってもらいます。そのおかげでイメージを掴んだ悠季は練習中にスコンとバロックの情感を理解し、エミリオ先生を追ってサルディーニャの別荘に行くことになります。出発前日に圭のアパートに行くとベッド横の壁一面に自分の写真が貼られていてビックリ仰天。圭にとっては心の慰めだそうです。 そして、別荘に着いた悠季は音楽家3人と画家を紹介され、アレッサンドロ氏には絵のモデルを頼まれ、ピアニストのチェーザレ氏とチェリストのフィリッポ氏にはトリオ演奏に誘われて12月のクリスマス・リサイタルに参加することになります。ちなみにフィリッポ氏はスイスの大学講師で留学中の延原さんとは知り合いだそうです。
さらに、圭は悠季を追ってオルビアから泳いでサルデーニャに来ていました。そんな彼はエミリオ先生から『Bebe(赤ちゃん)』という愛称を貰い、以降は堂々と悠季に同行しまくります。コモ湖の別荘しかり、ナポリの『バロック・コンクール』しかり、パルマの『パガニーニ・コンクール』しかり。エミリオ先生一家の人たちは圭と悠季の仲を知ってからも変わらず接してくれていた上に、ちゃんと圭という人間のことも認めてくれていて、いつの間にか圭は先生と色々な話をする仲になっています。
なお、悠季はナポリでは名誉町民として金色の鍵型メダルをもらい、2人で行ったパルマでは金のパガニーニ像をもらいます。またパルマで圭の25歳の誕生日祝いと悠季の祝勝を兼ねたディナーを楽しみ、積極的な悠季との熱い夜があります。
ここにきて音楽家としての成長めざましい悠季に、圭は思うところがあるようです。自分の才能への疑い深さを捨てられない悠季にミューズの寵児であることを自覚するよう言ったり、これまでのように手取り足取りの励まし方をしなくなっています。