電子限定特典つき
バキバキに心が折れたら甘やかしてダメダメにしてあげるからヒモになって
表題作3話と短編2作+それぞれのオマケが描き下ろしです。
初コミックだそうです。全てコメディ調でしんみりする所なんかもあって読みやすく、なにより勢いがある感じでした。細かい部分で微妙に違和感を感じる所もありましたが、私は楽しく読めました。
「フヨウ彼氏」
「俺のヒモになりなよ」という強烈なセリフとは裏腹に、コメディ調で二人が結ばれるまでを丁寧に描かれてます。
内容は、新しい異動先で仕事に対して熱すぎる為に浮いている受けと、そこに出入りする運送業者の攻めが親しくなり、仕事の愚痴等をこぼしていたら「俺のヒモになりなよ」と押し倒されてしまう…というものです。
攻めが「誰かをヒモにしたい性癖」との事ですが、これには申し訳ないけど違和感が…。とにかく甘やかして自分を頼って欲しい、というのはよく分かりますが、なんだかそうなった動機を考えると「ヒモにしたい性癖」というのは強引すぎる気がしちゃうのですね。この「ヒモになってよ」というフレーズに惹かれて私も購入したので、確かにインパクトはあるのですが…。しかし、とにかく相手を甘やかして、自分に依存して欲しい、という欲求は強烈に感じます。そして、「頼られる自分」に依存してる感も。頼られる事で必要とされて、安心したいんですね。
そんな攻めに対して、受けはかなり男前。臆病な攻めをドーンと受け止めてあげる包容力があります。「ヒモになって」と押し倒される強烈な体験をしながらも、攻めと過ごす心地いい時間や、病気になった時の攻めのかいがいしい看護等が丁寧に描かれているので、攻めに惹かれるのが自然に感じられます。惹かれるというより絆される?
そんな感じで、実はヘタレで臆病な攻めに、男前な受けが絆されていく、というのが萌えました。
エロは少な目ですが、ここでも男前な受けが素敵でした。
「トイレの田中くん(仮)」
陰で努力して人気者の地位を築いている攻めと、天然ものの美少年(受け)の話。高校生ものです。
攻めがトイレで愚痴っていると、個室にいた誰か「田中くん(仮)」に聞かれていて…。ページ数がすごく少ないので駆け足気味ですが、サラッと楽しく読めます。美少年が結構毒舌だったのが面白い!
「最弱カウンタースター」
最初に時系列がゴチャゴチャっとして分かりにくいかも…。雀荘で負けていた受けを、攻めが助けたところなつかれる…という話です。
受けがかなり天然でアホの子です。助けられたお礼に「良かったらお礼にどうぞ! 俺のうしろの穴!」と言い出す…。真面目で小心者の攻めは当然逃げますが、なんだかんだとまとわりつかれちゃうのですね。申し訳ないのですが、話自体はあんまり面白くなかった。ただ、受けが子どものようにボロボロ泣きながら思いを告げる所は、一瞬で心を持っていかれました。
表題作は、同い年の運送屋×インテリアショップ勤務のサラリーマンというカプ。
店舗異動で違う支店にやってきたものの、元からいる社員たちと折り合いが上手くいかず孤立気味の受け。そんな受けは提携運送会社の担当である攻めと仲良くなり、飲みに行く間柄に。しかし攻めは、人間関係でボロボロバキバキに心折れた受けを養いたい、自分のヒモになってほしいと迫るドSだった…というお話です。
ドSで「俺のヒモになって」と迫る攻め、と聞くと傲慢鬼畜なタイプのように思えますが、強引ではあるものの、どちらかといえばヘタレワンコなタイプでした。運送会社に勤めてはいますが、実像はタワーマンションに住む超セレブ。
そんな攻めに迫られる受けは、努力家で仕事大好きなサラリーマン。でも新しく配属された店舗は社員がゆるゆるで、受けのやる気は空回り。職場でもどんどん孤立していき、心が荒む日々です。
そんな日々の癒しが攻めとの会話であり、愚痴を聞いてもらう飲み会だったのですが、実は攻めには「弱った受けを自分が養いたい」という歪んだ願望がありました。それを知り、ドン引きの受け。
攻めの「人をヒモにして養いたい」という性癖は、かつてのトラウマから来ています。そのトラウマは理解できるのですが、そこから「人をヒモにしたい」になるのが少々首をかしげちゃう感じではありました。
でも可愛い話ではありましたし、受けの男前さにも好感が持てました。
同時収録作が2点。
ひとつは高校生もの。努力してモテイケメンを保っている攻めが、天然物でイケメンの下級生に一方的にライバル心を燃やしていたところ、当の本人にそのライバル心を知られてしまい…という展開。
やや出来過ぎ感というか、偶然がすごすぎる気はしましたが、可愛いお話でした。エロはなく、どちらが受けか攻めかは分かりませんが、多分上級生×下級生でしょうか。
個人的には逆の方が面白いという気がしました。
もうひとつは本屋の店員が麻雀の強さを買われ、大学生の貞操を守るための賭け事に参加させられるというお話。
受けの「穴を守ってくれたお礼に穴を差し出す」的な気持ちの動きがやや理解できなくもありました。でもコミュ障根暗と根明天然という組み合わせが面白かった。