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以前より紗久楽さわさんの漫画がとても好きで、こちらも本になるのをずっと楽しみにしておりました。
月代(さかやき)好きさん、お江戸好きさん、お待ちかねの一冊です。
主人公は元陰間(男娼)の百樹と篠笛吹きの卍。
百樹は体は大きいけれど甘えたで無邪気な子犬のような子。そしてもっちもっちなお尻がたいへん可愛らしい。
卍は背中に立派な彫り物を背負い、切れ長で涼やかな目元のいなせな江戸男子。女が放っておかない見た目ですが百にベタ惚れです。
年季明けで見世(みせ)を出た百樹ですが、どこに行くあてもなく一人お堂で眠っているところを卍に拾われる。一目で百に惚れた卍は百を連れ帰り、狭い長屋での二人暮らしがはじまった。
百は卍を「兄ィ」と呼び慕い、卍は百が居ないと生きてはいけぬと言う。
睦み合い、笑い合い、愛し恋する二人。
物語は甘い幸せに満ちた二人の暮らしとともに、互いの語られぬ過去も垣間見えます。
中盤には百が卍に出会うまでの陰間時代のお話もあります。
ちるちるさんのインタビューにもありましたが、作者さまは江戸の春画風俗をエロシーンにふんだんに盛り込んだり、陰間の実態についてなどを調べ史実に忠実に描いたとおっしゃっています。
確かに『陰間』って江戸時代の男娼という、うすらぼんやりとした知識はあるけれど、実際どのようにして陰間になるのか。その作法や出で立ちなど調べた事もありませんでした。
百樹の過去編では少年が陰間になるための仕込みから、使われる道具、陰間を仕込み世話する男、『まわし』の存在、陰間を抱く客層(のプレイ)などわかりやすく描かれておりとても興味深いものでした。
それらを上手く取り入れながら陰間というひとつの地獄のなかを懸命に生きる百樹の姿もしっかり描かれております。唯一の拠り所であったはずの『兄』を最後まで想い続ける様は健気でもあり不憫でもありました。
そして舞台は『江戸時代』の江戸の町です(浅草、上野、湯島辺りを描いていおります)。
台詞はもちろん町人たちの暮らしぶりや火事、花火、見世物小屋などなどリアルな江戸の空気を感じられます。サブの登場人物も多種多様です(わたしのお気に入りは四三婆さん)。
端々に描いた草木や花などで季節の移ろいを巧みに表現し、二人の過ごす時間は夏から秋、冬へと移り変わります。まるで浮世絵のような情緒溢れる素敵なシーンも。
どこもかしこも本当に細やかに丁寧に描かれておりますが、二人のまぐあいも色気たっぷりです。卍の手で甘くふやける百、艶かしく濡れる卍の表情。大好きな卍の優しい愛情に包み込まれる百は幸せそうです。
喘ぎにも少しばかり春画のような表現が入っていて面白いです。
この本は漫画としても楽しめるし、江戸時代の風俗、文化などをわかりやすく且つ忠実に描くことを心がけた作者さまの真心が込められた一冊のように思います。
私自身、紗久楽さわさんの影響で江戸や日本の古い文化、芸術に興味を持ちました。別段詳しいわけではありませんが、好きなもの(興味を持てるもの)が増えるというのは良いものです。
物語を純粋に楽しむも良し、何かしらに興味を持つきっかけになるのも良し。読み手それぞれの楽しみ方で『百と卍』の世界を堪能できればと思います。
特典が欲しくて発売に翌日にアニメイトさんに買いに行ったら売り切れ。
え、マジか!という事でほかのショップさんを覗いてみても軒並み完売状態。買えないとなるとどうしても欲しくなって探しに探して、ようやく手に入れました。
内容はすでに書いてくださっているので感想を。
「なんちゃって」ではなく、かなり忠実に江戸時代を表現されてるんじゃないでしょうか。ワタクシ、うっすい知識しか持ち合わせていませんが、きっとお好きな方が読んだらかなりツボに入ると思われます。陰間ものには必須の「いちぶのり」が甘いという事を、この作品を読んで初めて知りました。
江戸の言葉遣いや小物なんかが細かく描かれていますが、それをさらに盛り上げているのが紗久楽さんの絵柄と文字の字体。なんか、すごくしっくりくるんですよね。紗久楽さん自身、江戸文化がお好きなんだなというのがひしひしと伝わってきます。
で、そういった「江戸文化」をバックボーンに、ストーリーがこれまた良い!
陰間だったもも。
そのももに惚れて、桃の過去もすべてをひっくるめて愛している卍。
二人の、相手を想う愛情に激萌えしました。
百の幼少時代。
百と、百の実兄との関係。
そして、陰間としての哀しくつらい過去。
「兄ちゃん」を慕う百と、兄ちゃんとの間にあった深い愛情には思わず涙腺が崩壊しました。
二人の「兄」の愛情に包まれて、百はなんて幸せ者なんだ…!
百の体つきがちょっとムチムチッとしてるんですね。
このムチムチ加減がなんともたまらない色気を醸し出してます。
思わず褌を剥いてしまう卍の気持ちがよくわかる。ぷりっぷりのお尻が可愛いんです。
卍兄ぃも。
帯に書かれている通り、まさに伊達男。カッコよかった。
何が嬉しいって、終盤に「つづく」の文字が。
まだ読める!ヒャッホイ!
と喜び勇んでしまいました。
次回は予約しておこう。
と思っておりますです、はい。
陰間あがりの受け・百と、義兄弟の契りを交わした攻め・卍の、ラブラブにして甘々な江戸時代の男夫婦の日常話です。
表紙などから予想していた「暗いエロス」的なイメージ予想とは遠かったです。いや、過去編ではそういう面もありましたが、とりあえず卍×百のカプの間にあるのは明るいエロスと愛と嫉妬。周りの人たちにも公認の男夫婦はあっけらかんとラブラブで、しょっぱなからエロい戯作を元にしたぷれいを楽しんでらっしゃいました。
とにかく百と卍のキャラクターがいい。かっこよさとヘタレさが入り混じった攻め、可愛くて明るくて大らかな受け。お互いの存在がそれぞれにとって何よりの宝物で、揺るぎなくラブラブ。時々攻めが陰間時代の受けを思って嫉妬したり、訪ねてきた攻めの兄と攻めの絆を知った受けがモヤモヤしたり、そういう事件はあっても仲はわずかも揺らぎません。「エロくて耽美」と「粋でいなせ」と「きゅんきゅん甘い」が奇跡的に同居している作品です。
でも、合間に挿し込まれる陰間時代の受けの話は切なさ一色。受けの実兄との最後の別れには思わず涙しました。(注・死んでません)
攻めは嫌だろうけど、いつの日か受けと兄が再会する話なども見てみたいな。
腐女子歴ン十年、こんなBL見たことありません。絵、ストーリー、キャラクターすべて言うことなし。文句なしの神評価です。
編集さんのおっしゃるように、私も二人を見守る障子になりたい。二人をつなぐふのりでもいい。(笑)
素晴らしくよかった!
私は存じ上げない作家さんでしたが、杉浦日向子さんの作品をBLにしたかのようなお江戸もので、すっかりとりこになりました。べらんめぇ調の江戸ことばが粋で艶っぽいし、月代(さかやき)のビジュアルにも思いのほか抵抗無く楽しめました。伊達男の卍兄ぃはもちろん、中年の祝さんまでもが強烈に色っぽい。悲しい生い立ちのお百は元気で素直で絵に描いたようなかわゆいワンコです。画風も美麗でBLファンを自認する皆様なら決して読んで損はないと思います。江戸の風俗に興味をお持ちの方もぜひ!
初読みの作家さんです。
あらすじなどはみなさん書いてくださっていますので感想を。
タイトルにもしたんですが、もう全てがそのまま1つの世界として成り立つくらいぴったりでした。
違和感なく百と卍の世界にどっぷりはまれると思います。
イラストの、細くて細かくて繊細な部分と、筆(かな?)の太くて艶かしい線のバランス。
手書き文字。
百の大柄だけど可愛くて健気で純粋なところと、卍の男前で懐が深くて嫉妬深いところ。
もちろん内容も。
最初のページをめくってから、最後まで夢中で読みました。
続くとわかって本当にうれしい。
全体的には明るくやらしく可愛くという感じですが、やはり過去の百のお話は可哀想で(そういうの大好きですけど)切ないです。ただ重たく暗くなりきらない。
今が幸せなのがわかってるし、百の性格が本当に本当に健気で人を恨んだりくよくよして悩みすぎないのでとっても良いのです。
ただ百の兄ちゃん切ないなぁ。
続きがとっても楽しみです!