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表題作巫女神楽の夜の契り

貴伏公則
29歳、三好野原村の大地主の長男
氏原充紀
大学四年生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

研究資料を借り受けるため山奥の村を訪れた光毅。その村では独特の催事を執り行っている最中で、光毅は村に引き留められるが…!?

作品情報

作品名
巫女神楽の夜の契り
著者
水原とほる 
イラスト
街子マドカ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344839656
3

(7)

(0)

萌々

(2)

(3)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
19
評価数
7
平均
3 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

僻地のオカルトがかった因習に巻き込まれる大学院生

巫女神楽の夜の契り

大学院の修了を控えた氏原充紀(受け)は恩師の代わりに貴重な民俗学に関する資料を譲り受けるため、山奥の村を訪れます。
訪ねる約束をしていたのにも関わらず、特別な祭事の期間中ということで追い返されそうになっていると、偶然通りかかった譲り受け元の息子、貴伏公則(攻め)に当主に確認するだけの間だけということで入村を認められます。
が、この祭りには村の男子のみが参加するため、当主である未亡人は資料を持って村の外に出ていました。
村に入ったときから不穏な空気を感じていた充紀は急いで村の外に出ようとするのですが、村の外に出られなくなってしまいます。そして、祭で奉納するイヅナ舞の巫女役をさせられることになります。

充紀は大学で心理学を専攻し大学院では比較文化学科の教授戸上に師事しています。プライベートでもパートナーですが、戸上は別居中とはいえ妻帯者で、政略結婚だったため離婚できず、不倫関係を続けています。大学院修了後も戸上のもとで助手としての仕事も決まっていて、これからも関係を続けることになっているのです
が、漠然とした不安をずっと抱えていて、今回一人で行動した背景にはそのことに関して独りで考えたかったということもありました。
実家は神社なので神楽舞や神事に関する知識があります。

公則は村の大地主の長男で、地元を出て東京で会社を経営しています。
現在当主は母親の未亡人で妹夫婦が跡を継ぐことになっているのですが、イヅナ舞の舞手になる貴伏の男子は公則を除くと4歳になる甥しかいないため、しぶしぶ引き受けることになったようです。

イヅナ舞とはイヅナに取りつかれた巫女を助けるため、恋人が取り付いたイヅナを退治するというもので、前年村に厄災があったときに奉納される特別な神楽舞です。舞の最後の射的に失敗すると、村にも巫女役にも禍が降りかかるとされており、巫女役を誰もやりたがりません。今回も弓道の心得のあるものが選ばれましたが辞退されてしまい、充紀の実家が神社で子供のころ巫女舞を踊ったことがあると知った村人たちに白羽の矢をたてられたのです。イヅナとはイタチ科の動物のことで、妖怪の管狐の別称でもあるのですが、今回のイヅナは大量虐殺された狐の怨霊のようでした。

祭りをするタイミングは様々な要素が絡まるので、ぎりぎりに決まるとはいえ、当主が村を出ていることの連絡に齟齬があった事、追い返されそうとしていたところをたまたま公則が通りかかったこと、公則はずっと縛り付けられているしがらみを取り払いたかったこと、充紀が一人になって戸上とのことを考えたいと思っていたことなどいろいろな要素がうまく絡み合っていて、人ならざる者の意思を感じさせる展開になっています。
また、よそ者は入れないことになっているため祭りの全容をあまり知らされず、公則が何故村を出たのか、前回の祭りの巫女はどうなったのかなど気になることがある中、神楽と弓の練習が続いていきます。

ただ、巫女舞を引き受けなければならない経緯は、もともと打診されていた男性が拒否できたのに村人でもない充紀に拒否権がないということは矛盾しているため少し強引だなと思いました。

毎日神楽舞と弓の練習でへとへとになり、夜になると失敗したときの恐怖感で充紀は心身ともにとても大変で、自分の問題でも頭を悩ませているところなだけにとてもしんどそうでした。
そして、この状況で頼れる人物が公則一人ということでどんどん惹かれていく状況は理解できます。
が、結界の張られた隔離された空間にいるため現実感が薄く、公則とは運命共同体のような関係なのもあって、充紀自身が不倫関係にあるとはいえ恋人がいる状態なのに、罪悪感なく関係してしまうのはどうかと思いました。もともと倫理的なこともあり、戸上との関係について考えたいといっていたのにさらなる不貞となるこの関係はあまりよろしくないと思いました。
できれば、ちゃんと関係を清算してからか心情だけでも戸上と別れる決意をしてからにしてほしかった。また、行為の最中はしょっちゅう戸上と公則を比較していて、これは戸上とのことで自分が違和感として思っていることを洗い出している行為でもあるのですが、それでもちょっと嫌だなと思いました。その上、本当に最後までゆらゆらしていたのがちょっといただけませんでした。
ただ、状況のせいか嫌悪感はあまり感じなかったです。

また、充紀視点なため公則がどう思っていたのかというのがわからなかったのが気になりました。
吊り橋効果からなのか、昔の恋人に重ねたのか、本当に好きになったのか、公則の感情の変遷が知りたいと思いました。
そして、最初は自分でこの忌まわしい因習は終わらせるという決意を語っていましたが、最終的に次にこのようなことがなければいいという感じで終わっており、終わらせるという目的は達成できたのかそのことについて触れられていなかったのも気になりました。

物語は田舎の因習に巻き込まれた旅人の体験という2時間ドラマ風で、仄暗い雰囲気が話全体を覆っていて話としてはよくできていたと思います。
最後は、東京で仲良くというのを期待していましたが、後は読者のご想像におまかせという本当にドラマのようでした。
オカルトの部分もありますが、悪意がないためあまり怖くなく悲しい感じがします。
話としてはよくできていましたが、萌えという意味では今一つです。萌えはなくともストーリー重視という方には良いのではないかと思います。

0

BL的萌えが少なくて

水原とほる先生の作品は初めてなので、拝読させて頂くのが楽しみでした。

個人的、各項目5段階で
オカルト 2
仄暗い 2
エロ 1
な感じだと思います。

公則さん×充紀さんのカプです。

研究資料を受け取る為に訪れて村で、特別な祭事期間はよそ者は入村出来ない筈だったのに、何故か巫女神楽を舞うことを強制させられた充紀さん。

少しオカルト要素もあり仄暗い雰囲気ではありますが、結局一番怖いのは人だな、と再確認出来た気がします。話が通じない、手のひら返しの村のオッサン達の気持ち悪さとイラつきが凄かったです。

そして、疑問や不安を抱えたまま「イヅナ舞」の練習をする公則さんと充紀さん。舞いや殺陣、弓矢のやり方など、色々なことが細かく書かれているので、読み応えはあると思うのですが、イヅナ舞の練習などが多くて公則さんと充紀さんのBLや恋愛的なやり取りが少なくて萌えに繋がらなかったですね。

充紀さんは、既婚者である教授の戸上さんと関係を持っています。戸上さんは、奥さんへの愛情はもう無いが、世間体を気にして離婚はしないが、愛しているのは充紀さんだけという発言に、充紀さん自身は不安と抱いています。
公則さんの方も、忘れられない想い人がいて。充紀さんも公則さんも気持ちや想いの種類は違うけど、お互い違う相手はいるような状態なのでイヅナ舞をする間だけの関係性という、所謂吊り橋効果というやつなのか…そこまで萌えは感じなかったですね。

ほんのり仄暗くてオカルト要素もある、不思議な雰囲気。でも最後はバッドエンドにはならないのでご安心を。弓を引く時のやり方など、細かく書かれているので、興味を引かれる人はいると思うので、読んでみては如何ですか。

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