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表題作2119 9 29

阿部孝嗣
38歳,実家のレストランを手伝うシェフ
高嶺
常連客が阿部に託した裏ドール

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

人間に尽くす精巧なアンドロイド"ドール"との結婚という阿部 孝嗣の夢は、人を模したドールの製造が禁止された大学時代に潰えた。けれど三十八歳になった今も愛は変わらず、独身で童貞を貫いている。ある日、阿部は家業のレストランの常連客から、存在自体が罪となる美しい裏ドールを託される。彼の名は高嶺。無愛想で反抗的というドールにあるまじき彼の態度を不思議に思いながらも、憧れの存在との同居生活に阿部は胸をときめかせるが――。

作品情報

作品名
2119 9 29
著者
凪良ゆう 
イラスト
草間さかえ 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778122355
4.6

(190)

(158)

萌々

(16)

(6)

中立

(5)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
25
得点
877
評価数
190
平均
4.6 / 5
神率
83.2%

レビュー投稿数25

神の中の神作

この作品、もう本当に本当に良くて、神of神だと思いました。
通勤電車で読みながら泣いてました。こんなに愛に溢れたやさしいお話があるでしょうか。
そして、二人の選択もとても慈愛に満ちたもので、私はもうずっと応援していました。
こうして書いていても泣けてきます。こんなに素敵な作品を読めて本当に幸せです。
阿部氏も高嶺くんも勿論ですが、美優ちゃんも芝も御両親も大好きです。
「私は起動したときから人が大好きでした。」という美優ちゃんの一文に泣かされました。
戦争にドールを送り込んだ人間を許せず、あり得そうで恐ろしいし、ドールが可哀相で可哀相でやりきれない。
この作品が埋もれてしまうことがもったいなさ過ぎます。
重版をかけたり、一般書の文庫からも出したりして、たくさんの人に読んで欲しいです。

0

前作より好き

前作(ショートケーキの苺にはさわらないで)のスピンオフです。もちろん前作を読んだ方が話の流れが分かるので読んでからが良いと思いますが、私は断然こっちのスピンオフの方が好きです。前作が悪かったというより、賛否両論ある前作よりも本作の方が自然だったなぁと。自然なラストの方がスピンオフというのも面白いですが、全編通して幸せな気持ちになれたので「神」を100個くらいつけたいです。

本作は前作にて大活躍(?)したオタクの友人、阿部ちんを主人公にしています。設定などは概要通りですが、ドールオタク×幸薄ドールというのは前作と同じパターンですね。なので、どうやって前作と展開を変えるのか気になったのですが、記憶がなくなる不幸をテーマとして扱った前作に対し、記憶が永遠に残る不幸をテーマにした本作は、物語の構成も結末も前作とガラッと変わっています。同じ作者さんでこの振れ幅はすごい。改めて凪良先生の表現の幅に驚かされました。
キャラクター性で言っても、阿部ちんはオタクでありながらベースが陽キャラです。ゲイであることに悩んでドールにハマった南里と違い、阿部ちんは美優に憧れる形でドールにハマります。一口にドールオタクと言っても全然違うんですよね。なので、南里にあった危うさが阿部ちんにはなく(年齢的な要素もありますが)、その辺りも本作が読みやすかった理由だと思います。情熱と冷静さを等しく併せ持つ阿部ちんの本質は、恵まれた両親やその両親が経営するレストランの常連さん、学生時代の友人との関係性が全て影響していると思います。誰かに優しく出来るからこそ優しくしてもらえて、誰かを助けられるからこそ助けてもらえる。理想的な人間関係を築ける人なんですね。そのせいか、前作は切なくて泣けるシーンが多かったのに対し、本作は幸せ過ぎて泣けることが多かったです。阿部ちんは素敵なお客さんが通うレストランの魅力的なシェフであり、この軸が最後の最後までブレなかったことが本作の魅力に繋がったと思いました。

ちなみに以下ネタバレですが、阿部ちんは美優と暮らすこともマスターになることも選びませんでした。夢は何一つ叶えていないんですね。ただ、高嶺と恋をして一生をともにしただけ。私はこの結末がすごく好きです。「家族がいれば数千万円くらいかかる」「神に誓って結婚しても、別れるかもしれない不安は消えない」「どんなに好きでもどちらかが先に死ぬ」など、高嶺(ドール)との関係が、人間同士の関係と何も変わらない大切なものだと理解できました。ドールである高嶺が人間のように心を持ち、システムに反した愛情行動を示してくれる。ロマンチックな愛の形だと思いました。「おやすみなさい、また明日」が好きな人は絶対好きだろうなと思えるラストです。

0

アベちんの約束「2119 9 29」

悲しい結末だと想像がつくのでずっと積読していた本。
「ショートケーキの苺にさわらないで」を読み、やっと今頃読了。
目が腫れてしまった。
悲しいというより、安倍と高嶺が築いた信頼関係に感動して泣けました。

製造禁止になった裏ドール。
安倍が欲しかった裏ドールの新品はもう入手不能。
中古の裏ドールをひょんなことから手に入れた安倍ちん。
愛想のない裏ドールだけど、安倍ちんは大事に「人格を持った一人」として大事にする。
南里のような決意ができない安倍は、老化していく。
老衰していく安倍に併せて、高嶺も老化をメンテナンスしていく。
安倍を看取り、葬儀を終え、身辺を整えていく高嶺。

エピローグの「2119 9 29」の意味を知る場面で、すっかり感情移入して、読みながら泣けた。
大事な安倍の為に力を使い尽くした高嶺は、立派な人格を備えたドールだった。
安倍ちんも高嶺も、お互いに愛に応えようとする姿勢に感動。


0

絶対に前作を読んでから!

「ショートケーキの苺にはさわらないで」のスピンオフです。
読まなくても分かるかもしれませんが、出来ることならそちらを読んでからこちらを買ってください。
そしてショートケーキを読んだけどこちらは買うか悩んでいる、という方がいらっしゃったら是非こちらも読んでほしいです。

ショートケーキを読んだ際にもボロ泣きしましたが、こちらに関してはショートケーキの二人の描写が出てくるだけで涙が滲みました。後遺症が重症です。
ただ、ショートケーキの方では「萌×2」評価をつけましたが、こちらは文句無しの「神」です。

人間とアンドロイド。
大団円の円満ハッピーエンドにはならないことは誰が考えてもわかると思います。決められた終わりへと話が進むだけですが、読みたかったお話を読ませてもらえました。

1

(いい意味で)BLの枠じゃない

「ショートケーキの苺にはさわらないで」の阿部ちんがキャラ立ちしていて好きだったので、期待と心配半々で読み始めました。
こちらだけでも楽しめるとは思いますが、話が絡んでくるので「ショートケーキ~」共に読むことをオススメします。

読んだ人に、考えさせる物語だと思いました。
この本を読み終えたとき、あなたの心に語りたいことが浮かんでいるでしょう。
ドールのこと、戦争のこと、人間のこと、心のこと・・・・・・読む人に問いかける物語です。
あのシーン、このシーン、思わず泣いてしまいました。
心に訴えるような物語を生み出していただき凪良先生ありがとうございます。

欲を言えば、私は「ショートケーキ~」の阿部ちんが好きだったので痩せる必要はなかったのでは?と(笑)
阿部ちんは阿部ちんのままでとても魅力的なので・・・この本から読む人にとっては痩せて主人公っぽい阿部ちんの方が入りやすいのは分かりますけど。編集さん、ダメですか?

0

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