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対人恐怖症の佳人は、カウンセラーをしている兄と暮らしています。
自宅の小さな庭の手入れをするのが日課で、何処に出かけることもなくひっそりと暮らしています。
なぜ対人恐怖症なのか…、それは佳人が6年前に性的暴行を受けたことが原因なのです。
高校の時から好きだった藤堂大司と恋人として付き合っていた大学時代。
その頃から藤堂の生活は派手になり、地味な佳人を疎んじ始めます。
藤堂とトラブルを起こした者が、報復として無関係な佳人を集団レイプします。
誰にも助けてもらえず、藤堂からはひどい別れを宣告され、傷ついた佳人の心は藤堂を記憶から消し去る事で、自分の殻に閉じ篭ってしまったのです。
6年後、藤堂は初めて会う男として佳人の前に現れ、ムリに記憶を呼び起こす事はしませんが、進まない関係を苛立ち、ついに性的関係を強制的に求めてしまいます。
結果、佳人は記憶を取り戻すのですが、それは藤堂にとってつらい贖罪のはじまり。
佳人に拒絶されても、藤堂は気持ちを抑えることができず、何度も何度も近づこうと試みるところなんか、とても痛々しいです。
徐々に佳人も藤堂に引かれていくのですが…、佳人の中では「藤堂」と「大司」は別人なのです。
現在、佳人が好きな人は「藤堂」で、昔付き合っていたのが「大司」。
心の傷が歪めてしまった記憶の障害、それを治してやりたい気持ちは一途なのですが、藤堂の行為は益々佳人を追い詰めるばかり。
二人が各々に抱えている傷がどんな風に痛み、癒されていくか、刻々と描写されていてとても胸を打つお話でした。
六青先生といえばファンタジー作品というイメージがあったのですが、今作の現代物も素晴らしかったです。
これはかなりの攻めザマァと言いますか。健気可哀想受け&攻めが後悔する話がお好きな方はにはたまらん作品になってます。
ほんと、過去の攻めが嫌なやつで、そのせいで受けはとんでもなく可哀想な目にあってしまいます。本当に受けは何にも悪くないのに…(輪姦の描写がありますので、苦手な方はご注意を)
過去の悲劇で傷ついた二人の心を癒していくようなお話になっていて、読者としては、二人が元通りになってくれたらいいのにな〜と思いながら読んでいたのですが、終盤の受けのモノローグにハッとさせられました。そんな流されるみたいに許しちゃダメだよなぁと。
現代物ではありますが、六青先生らしさに溢れている作品でかなり楽しめました。
おすすめです!
大学生の藤堂は、地味な佳人にあきてしまい助けを求めてやってきた佳人を追い返す。藤堂にまで冷たく拒絶された佳人は、深く傷つき藤堂のことを忘れることで、精神の均衡を保つようになる。
佳人の変わり果てた姿を見てはじめて後悔した藤堂は、許してもらおうと佳人に近づくが、傍に寄るだけでパニックを起こす。忘れ去られて8年。それでも佳人を求めずにいられない藤堂に、やがて怖いけど惹かれる物を感じる佳人。冷たくされた記憶と、現実の藤堂とのギャップに戸惑う佳人。
自分の過去の罪を佳人の症状で突きつけら苦しむ藤堂。しかし、それでも佳人を求め近づこうとする藤堂がけなげです。
六青先生の作品には、けなげな受けが特徴ですが、今回攻めまでけなげです。
トラウマがあって対人恐怖症という主人公のお話です。
主人公が悲惨なめにあっていて大きな傷があるという、ある種の王道的なストーリーだと思ったのですが、攻めキャラの一連の行動を誠実と思えるかどうかで評価が別れそうな気がします。
主人公の佳人のトラウマは攻めキャラの藤堂に起因しているのですが、藤堂のしたことはかなり酷いと読んでいて感じて、前半は藤堂に対してムカムカ…。
もちろんそこで終わりでなくて、藤堂は自分のしたことを酷く後悔し、佳人の傷が癒えるまで、家族に疎まれても、佳人に拒絶されても、雨の日も風の日も佳人のもとに通います。
それはなかなかできることじゃないし真摯だと感じるのですが、それでも藤堂のしたことの酷さがどうも、自分なら簡単には許せないなあと感じてしまいました。おそらく佳人視点が多かったからだと思うのですが。
酷い攻め、いわゆる「クズ攻め」が心を入れ替えて受けを大事にする、という展開のストーリーです。前後編になっているのですが、前半がう~んと思った分、後半半分が個人的とてもよかったと思います。
過去自分に酷いことをした藤堂と、心を入れ替えた藤堂を頭の中で無意識に別人だと分類している佳人。藤堂を愛しているのに、藤堂に傷つけられた恐怖がまだ残っているんですね。
お互いに傷ついて長い時間をかけて許し合うカップルのお話です。
スッキリ明るいお話ではないので手放しで楽しめた!という感じではなかったのですが、トラウマのある受けのお好きなかたには、痛々しい部分も含めて楽しめるのではないかと思います。
六青作品を初めて読んだのですが、全体に漂う透明感のあるせつなさと痛さとほのかに甘いトーンは、もう神領域だと思いました。
なのに何故、神評価でなく萌え評価にとどまったかというと、他にも書いてらした方がいらっしゃいましたが、ラストの方の駆け足っぷりが物足りなかったから。
思い切って2冊とかにした方がよかったんじゃないだろうか。この作品。
とにかくラストが物足りない。
紙面が足りなかったのでばたばたと書き急いじゃいました的な放り投げ感があります。
物語的にもどうもいろいろごまかされた感があって、勢いで読まされるんですけど、読後しばらくして、「あれ?何にも解決してなくね?」と小首を傾げてしまいました。
過去の出来事のせいで、受けは一部の記憶を失い、対人恐怖症と冷感症にもなっているんですが、記憶こそ戻るのですが、対人恐怖症と冷感症は解決されないんですね。
ラストで攻めとの最後のわだかまりはなくなり、二人が一緒に暮らそうと示唆するシーンがあるので、恐らくは完治したか、もしくは今後二人でゆっくり治していくのだろう、と感じ取ることができるのみ。
できればここらへん読者任せにしないで書いてほしかったなぁと。
ことに、全体を通して受けは痛々しいSEXを強いられていて、幸せな人肌の感触というものを知らないままラストを迎えるので、一度くらい受けにも幸せなエッチを味わわせてあげてもよかったんじゃ…と思わなくもなかったです。
それから、前半の受けは、記憶を失って対人恐怖症がありつつも、自らの足でちゃんと立とうという前向きな意思と、自分が対人恐怖症であるにもかかわらず他人を癒そうという、痛々しいながらもしなやかな包容力があったのですが、後半で記憶が戻ると、記憶のなかった六年間が逆行したかのように急に幼稚なうじうじくんに変貌するので、痛々しい受けが好きな人にはツボなのですが、うじうじ受けが嫌いな人には苛々するかと思います。
この辺ももう少し丁寧に描写されていればよかったなぁ。
なんかいろいろ惜しいというか、やっぱりこの倍のボリュームがほしかったように思います。