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上下巻同時発売!!
あーもう………。
これはネタバレしちゃうと勿体ない気がするので
詳しい展開は自粛しますね。
面倒だったり先延ばししたい事だったり、
見えない先が怖くてどうしたらいいかわからない時も
自分なりに前向きでいれば結果はおのずとついて来る。
逃げ続けた事にもちゃんと向き合わなければ
気持ちのおとしどころがずっとわからないまま。
そんな昭の億劫さに真摯になってくれたのが久留米で良かったー…。
思っていたよりちょっと短気だったけどww
あれくらい物事に白黒つけられたら
あまりストレス感じずに生きていけそうで羨ましいです。
久留米にだって悩む事もありましたけども。
考えてることを相手に話すって、当たり前だけどとても大事で
もし様々な感情がぐわーっと押し寄せて来たって
本音で向き合わなくちゃ相手にも失礼ですもんね。
あと、阿部のタフさに救われたような笑ってしまうような…ww
ところどころに出てくる単語
(MMKとか、よっこらshotとか)も味があって大好きだし
登場人物みんなが優しくてとにかく読後心があたたかくなるんです!
私もこんなふうでありたいなって思わせてくれて元気をくれる。
とても染み入る作品でした。
ちなみに雁須磨子さんのお描きになる散髪後のキャラは
かっこよくなりすぎるので困ります。
これはやられた!
そう来るのか!
個人的には、上巻が昭編で下巻は久留米編という感じです。
阿部のアプローチに真面目に向き合う様に伝えるために、昭は自分がゲイであることを久留米に伝えます。それによって久留米は自ずと、日夏先生(昭の父ですね)に対する自分の想いを振り返らざるを得なくなり……
ネタバレしようにも出来ません!
あらすじを書いてしまうと、全く別物になってしまうんですもの。
何と言いますか、理屈で作られたお話ではないのですね。
昭も久留米も、日夏先生に言えなかったこと、言わなかったこと、そのためにどこかスッキリしていなかったことを解決し、自分なりの『和解』を行えたのだと思います。でも、それは何か劇的なことがあってそうなった訳ではないのです。
強いて言えば、日常の積み重ね。
その人が暮らしていた街で、その人の暮らしの中にいた人達と、話したり、一緒に仕事をしたり、飲んだり、その人が経験しただろうことと似たような経験をしたりする中でじわじわーっと解ってくる。そういう日常は、どこか間抜けだったりみっともなかったり、端から見るとコメディそのものなのだけれど、でも、とても愛おしい。
解った後、昭も久留米も失ってしまった時間を悔やむのではなく、日夏先生との関わりを大切なものとして暮らしていくであろう結び方もとても素敵でした。
あ、上巻では薄かったLOVEもたっぷりありましたし(これ、大切)。
あー、読んで良かった!幸せだ!
最後に、おまけマンガは泣けます。
それなのに最後のコマの書き文字で、またしてもクスッと笑えるという。
最高です。
雁須磨子さん作品を「あぶりだし」だと表現した友達がいます。
それを聞いた時に、これ以上的確に雁須磨子作品を評した言葉はない!!と雷に打たれたような気がしました。
(その方ご自身はレビューをしないそうで、代わりにこの言葉を私のレビューで使ってくださいとのことなのですが、本当に素晴らしい表現だと思いません?言葉のセンスに脱帽です。)
直接核心には触るような事は描かず、エピソードや行間を読ませることで、じわじわと本質が浮かび上がってくる。
一度読んだ時には掴みきれずピンとこないこともある。
だけど、そこには素晴らしい何かが隠れているという確信に導かれるように、二度、三度と繰り返し読むうちに、その輪郭が姿を表し、次第に核心が浮き上がってくる。
気づいたらすっかり雁須磨子中毒になってるというおまけ付き。恐ろしい。
この作品は、まさに「あぶりだし」作品です。
だから、このうえなくレビューが書きづらい。
あらすじをまとめたとしても何も意味をなさない作品だし、もっともっと繰り返し読めば更に浮き上がってくるのではないかと思ってしまう。
一体いつになったら納得のいくレビューが書けるのかと思ったけど、多分、一生満足のゆくレビューなんか書けそうにないので、現時点の感想を書きます。
美術教師だった亡き父親。
父親にゲイばれをし、逃げた息子。
曰くありげな父の元教え子。
優しくてとっつきやすい先生としての一方、プライドは高く硬くさわると石のような冷たさがある人間だったと息子の昭は思っていたけど、見ようともしてこなかった生前の父親の姿が、周囲にいる人々の思い出によって浮き上がってくる。
その知らなかった、見ようともしてこなかった父親の姿を知っていく昭。
何もかも捨てて東京へ逃げたけど、捨てたはずの故郷で逃げたものと向き合う昭。
父親は、そして世界は、昭が思っていたような固くて冷たいものではなかった。
そう思わせていたものの正体は、昭の中にあるものだったのかもしれない。
その棘が、未だ自分の胸にあるということも認めることができた時、世界はただすべすべでやわらかいものだと気づくことができた。
父親は、たった一人の息子に対して父親らしいことができずに死んでしまうことを、最後の最後まで悔やんでいただろうし、息子の行く末を何よりも心配していたと思うんです。
だから舟とこういう関係になったことを一番喜んでいるのは、昭本人よりも父親じゃないかな。
彼の人柄に惹かれていた人々との縁、生前の父親が紡いだ縁によって、昭が故郷に戻ってきても、自分の居場所を見つけることができた。
良かった良かったと草葉の陰で言ってる気がしてなりません。
上巻ではほとんど進展のなかったストーリーですが、最終的には収まるように収ります。
うん、まあこれで収まりませんでした、みたいな話になるはずがないので、ザックリ言いいすぎてネタバレと言えばネタバレかもしれないけど、結末についてはまあ置いとくとして、
この話のメインは「それとこれとは関係ない。全く別の話なんだ」ってことが、見えるか、見ようとできるかって所にあって、そこを見極めることができたからこそ、舟は昭と一緒になることを選び取った。
昭も舟と一緒になって、それまで、見えなかった、見ようとしなかったものを、胸に残った棘だと認められるようになった。
上下巻、2冊揃って「神」です。
やはりすばらしい。飄々としたようでいて、しっかり考えられたお話運びと、セリフ、表情。
下巻は舟がカバー。内容を表すように、舟側の視点で進む。
ドストライクのイケメン、舟との同居生活という、やましい心持ちもあった昭。しかし、それはそんな軽い下心にとどまらず、ついにカミングアウトした上に、舟にキスしてしまう。
そこから、舟のターン。
二人の関係を進めるに当たって、舟に果敢にアタックする高校生、阿部が当て馬くんとなる。男同士ということで対象と思っていなかった舟に、ちゃんと向き合えと迫る昭。
愚直と言ってもいい、純粋で一本気な舟は、阿部に向き合い、そして次に自分に向き合う。
あのとき、日夏先生に感じたもの、今、昭に感じるもの。
短髪にした舟に、沸騰する昭と同じ目線で読みました。かっこいいね。
そして、Hになっちゃう舟もかわいい。
何度もするめのように読み返すだろうな、という作品。