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3つのお話が収録されている短編集。
ネタバレ含んでいます。ご注意を。
表題作『おにあいのふたり』
主人公は翻訳を生業とする元木くん。ほぼ彼視点でストーリーは展開します。
高校生の時にゲイであることをネタにいじられた過去があり、それ以降人を信頼できず、恋もできず引きこもって生きてきた。が、寂しさが募り、出会い系にアクセス。そこで知り合い、会うことになったのはイケメン・リーマンの静賀という男性で…。
というお話。
出会ってすぐに、映画の趣味を通してあっという間に恋人という関係になる彼らですが、元木君の目を通して見えてくる「静賀」という男性が非常にミステリアス。
過去の恋のトラウマが原因で静賀を束縛してしまう元木くんですが、そんな元木くんに対して静賀くんは非常にやさしい。元木くんの何が、そんなに静賀くんを引き付けるのか。正直、元木くんはさほど魅力的な男性とは言えず、ゆえに元木くんとともに、読者も静賀くんの気持ちを図りかねる。
そのストーリー展開が非常にお上手でした。
終盤に静賀くんの「過去」も見えてきて、元木くんに執着する理由もわかってきます。が、その原因に関してはややこじつけ感を感じました。もう一声ほしかったな、というのが正直な感想です。
『おくれてもこい』
とある理由で彼女に振られ、寂しさから男友達の友情を心のよりどころにしている新芽くん。
ある日、友人に誘われ訪れたライブ会場で元カノの弟・雪生と出会うが、元カノに激似な雪生くんを元カノと勘違いしたことで二人の仲は急速に近づくが…。
元カノに振られた理由とか。
姉弟で、いくら似ているといっても性別も違うのに間違えるだろうか、とか。
雪生が新芽くんと身体の関係を持ってみようと思った理由とか。
展開の仕方がやや強引で、ストーリーの進む速度が速い。
雪生が新芽くんに惚れてしまった、というその過程をもう少しじっくり描いてくれたら、あるいはもう少し萌えたかな、と思います。
『お味見におあがり』
腰を悪くした父親の代わりに、八百屋の跡を継ぐために帰郷した透くん。
父親に、お得意さんのシェフ・千川さんを紹介され…。
イケメンで、人気シェフで、料理も上手で。
そんなイケメンシェフに胃も心も鷲掴みにされてしまった透くん、のお話。
ノンケさんの透くんに惚れてしまった千川さんの葛藤も描かれていて、このお話が一番ツボでした。
短編集なので仕方がない面もあると思いますが、もう少し彼らの内面が描かれていたらなお良かったな、と思いました。どのお話も、気づいたら恋人になっている、みたいな展開で、ゲイであることの葛藤だとか、少しずつ気持ちを通わせていく過程に萌える性質なこともあって、若干物足りなさを感じたのが残念。
たださすがというか、絵柄は超絶にきれいで、表情とかちょっとしたしぐさで彼らの内面を魅せる描き方は秀逸でした。
「おにあいのふたり」2.5割
「おくれてもこい」 2.5割
「お味見におあがり」 5割
【おにあいのふたり】
優秀なリーマン×引きこもり
共依存BL!
トラウマ持ちで人が怖い、嫌な受けが一大決心して攻めと一夜限りの関係になる…つもりが、付き合うまでに発展。
どんどんメンヘラになっていく受けと、どこまでも優しい理想の攻めが見せる意外な展開がとても良かったです。
収録されている3つの中で一番インパクトがありました。
【おくれてもこい】
ワンコ×元カノの弟
受けのキャラ(というか髪型)がすごく個性的で可愛かったです。
【お味見におあがり】
地元に出戻ってきた ×料理教室の先生
胃袋を掴まれ、心も掴まれちゃったお話。
受けのパ〇パンが…!