ワケあり薬売り×囚われの踊り子

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表題作青い泡沫

隆也・薬売り
朱鷺
「旅館」の男娼

同時収録作品bf

野中徹
高校生
真木坂尊
高校生

その他の収録作品

  • 「桜便り」描き下ろし

あらすじ

とある旅館の踊り子である朱鷺は、怪我したところを薬売りの隆也に助けられる。
儚げな容姿とは裏腹に、言葉は乱暴で気の強い朱鷺にも真摯に治療してくれる隆也。
朱鷺は次第に心許していくが、芸だけでなくその身も売る男娼と知られてしまい――。
一方、隆也にも明かせぬ秘密があって…!?
鈴の音が響くクラシカル・ロマンス!

作品情報

作品名
青い泡沫
著者
瀬納よしき 
媒体
漫画(コミック)
出版社
KADOKAWA
レーベル
あすかコミックスCL-DX
発売日
ISBN
9784041069233
4.2

(18)

(10)

萌々

(3)

(4)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
75
評価数
18
平均
4.2 / 5
神率
55.6%

レビュー投稿数3

想い合う物語

薬売り×男娼という設定に惹かれて購入。
こういう時代設定ものは大好きで楽しみに読みました。期待を裏切らないお話でした!
収録されている2作品とも、短いページ数ながら綺麗にまとまっていました。

ーーーーーーー感想とネタバレーーーーーーー

【青い泡沫】
攻めは薬売りをしているけれど、その正体は医療系製薬専業財閥の後取り息子。
親の経営方針が気に入らず、家を出ています。
受けは「旅館」の踊り子という肩書きですが実態は男娼。
舞踊を生業にしていた家の生まれでしたが、借金の形に売られてきました。

そんな2人は、自分の生い立ち(財閥の後取り)や過去(踊り)に囚われています。ここが共通点であり、共有できる部分です。
精神的にわかりあえる部分があると、惹かれてしまうのも理解できます。

攻めの見た目は真面目で硬派な印象を受けますが、その実、静かに熱い男でした。
攻めのアピールに照れる受けが、とても可愛かったです。美人。
受けは男娼として他の人と関係をもっていますが、ちゃんと攻めと愛を育んでいます。
この2人のいちゃいちゃは、とても可愛らしくて幸せそうです。
お互いがちゃんと相手のこのを好きなんだなとわかる描かれかたでした。

この物語でキーとなるアイテムが、受けが腕に付けている2つの鈴。
この鈴は「腕の鈴が2つなのは、いつか大事な人ができたときに1つを渡すため。」という意味を持っています。

物語の終盤で、攻めと受けが離れてしまう結果になるのですが、攻めの腕にはしっかりと鈴がつけられていました。
これがあるからこそ、遠く離れていてもお互いの気持ちを確かめることができました。

その後、攻めは自分の背後にあるものを全て綺麗に清算し、受けを迎えに行きます。
再び2人が出会えるのは、数年後ですが、変わらず互いを想い合っていました。

描き下ろしの「桜便り」は表題作のCPでした。
再開後、2人で旅を続けながら薬を売っているときのお話。
ちょっとしたすれ違いの後のらぶらぶ感がたまりませんでした。

お互いに好き合っているのが伝わります。
攻めの愛情がかなり大きいことと、それに照れる受けがほんとに可愛かったです。
描き下ろしで、本編が補完されたような気になったので、描いてくださって本当にありがとうございます、という気持ちです。

【bf】同時収録作品。
飄々としていて浮世離れしたひとりを好む、すこぶる顔がよくてモテる攻め。
男前だけれど料理をするのが好きな、正義感のある受け。
はっきりとは書かれていないのですが、攻めは恐らくゲイかな...?
ゲイバレした攻めの好意の先が、自分に向いていたことを知ってします。
男同士でも、相手の好意が他人に向いているときは理解を持って受け入れられるけれど、いざ自分に向いているとわかると途端に自分勝手になってしまう。
ここの受けの精神的葛藤が巧みでした。

ハッピーエンドです。
表題作目当てだったのですが、とてもよかったです。青春の恋物語。

ーーーーーーー
お互いが想い合っているのがわかって、読んでいてとても幸せなきもちになりました。
静かで相愛な物語を読みたいときにおすすめです。

3

鈴の音が繋ぐ「薬売り」と「踊り子」の物語

表題作と【bf】を収録。
今回は特に好みだった「青い泡沫」のレビューを書かせて頂きます。

時は大正頃でしょうか。
着物姿の華奢な男性が鈴を鳴らしながら水辺で扇子片手に踊っています。
風呂敷を背負った男性が橋の上から見惚れていると、視線を感じた華奢な着物姿の男性は足を捻り川へ落ちてしまいます。
これが、薬売り隆也と、とある「旅館」の踊り子、朱鷺の出会い。
儚げな見た目に反し、気の強い朱鷺。全く怯まない隆也。
医者の真似事が出来る隆也は留守の医者変わりに暫く「旅館」へ滞在することに。

そんなある日、朱鷺のもとへお客さんが。
実はここは一部の金持ちだけが使える「旅館」で、朱鷺は芸だけではなく体も売る男娼でした。
客に抱かれる姿を隆也に見られてしまった朱鷺。
もともと舞踊を生業にしている家で育ち、たくさんの人の前で踊るのが夢だった。
今じゃ客と寝るためのただの前戯だと自嘲気味に打ち明けます。
隆也はそれに対し「同じだなと」自分について語り始めます。
代々医者の家系に生まれ、金儲け主義のやり方が気に入らなくて家を出たこと。でも何故か医療に関わる「薬売り」の仕事を選んでしまったこと。
踊るのを辞めればよかったのにそれでも手放せなかったのは踊りが好きだったからだと気づく朱鷺。
『綺麗だった 川辺で舞うあんたに一目惚れするくらい』そう告げられ、やがて2人は恋仲になり、体を重ねるようになります。
いつか終わりがくるとはわかっていても、幸せそうにじゃれ合う2人の姿はどこか儚げで、その分とても美しく見えました。
『足が治ったら ここを出て一緒に旅をしよう。俺と生きて欲しい』と真っ直ぐ申し込まれ、『夢を見てもいいのだろうか。未来を願っても』と思い始めた矢先、朱鷺の元へ不穏な噂が流れて来ます。
薬売り隆也の正体は松戸財閥の跡取り。追っ手は報奨金をかけ、すぐそこまで来ている。
隆也に何も問い正しはせず、ただ抱いてくれと頼む朱鷺。
この手を離したくないと思いつつも「家を出るという自分の選んだ道を後悔したくなかった」と言う隆也の話を聞き、心を決めます。
わざと悪役を演じ、懸賞金目当てで隆也を売ると嘘をつき、しびれ薬をかがせ、そっと隆也を逃がし、その罰として体中傷だらけになるまで折檻を受け続ける朱鷺。
一方その頃どこかの草の上で目を覚ました隆也は、朱鷺が大事にしていた二つの鈴付きの腕輪のひとつが自分の腕に付けられている事に気づきます。
それは「大事な人が出来た時相手にひとつを渡す」と以前朱鷺が言っていた腕輪。全てを悟り、涙を流しうずくまる隆也。

隆也の気持ちを尊重し、逃がして尚、「俺と生きて欲しい」と言ってくれた隆也の気持ちだけで充分だと微笑む朱鷺が健気で切なくて泣きそうになりました。

数年後、身辺整理をし、スーツ姿の大人になった隆也はフラッと「旅館」を訪れ「忘れ物(朱鷺)を取りに来ました」とほほ笑むところでお話は終わりです。

描き下ろし【桜便り】では2人のその後の姿が見られます。

ともかくこの先生の描かれる、どこか懐かしくて儚げな絵が、物語にピッタリで美しく、何度目を奪われたかわかりません。2人の切ない関係性をより盛り上げているようにも見えました。
同時収録の【bf】も切ない中に暖かさが溢れる優しい作品でしたが、いつか丸一冊時代モノや男娼モノを描いて欲しい!!
そんな期待を込めて萌×2ではなく神評価とさせて頂きました。

1

切なBL

表題作と同時収録の2本立てでした。
どちらも切ない!けど、ちゃんと納まるとこに納まってハッピーエンド!
中々良かったです!

表題作
『青い泡沫』 訳あり薬売り × 表向きは踊り子の男娼
大正浪漫的なBLでした。
「娼館から一緒に逃げよう」的な本当によくある系のお話で切ないのだけど、悲しくなる感じの切なさではなく、ラストに向かうに遵って幸せや甘さを感じる切なさのあるお話です。
その後の2人のお話の『桜便り』の最後から2ページ目の隆也の笑顔がすごく良かった…。


同時収録
『bf』 周囲から浮いているけどモテモテイケメンDK × 正義感の強い男前料理男子DK
等身大男子高校生の青春BL。
他人事ならいくらでも正義感振りかざせるけど、友達だと思っていたヤツに好意を向けられて…。
野中の飄々としたキャラ、すごく良いです。

2作ともすごく上手く1冊に纏まってるんじゃないでしょうか。
もっと読みたい!と言う、物足りない感じもそこまでしないし、だからといってもうココで終わりでいいよーと言う、楽しくなかった投げやり感もないです。

1

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