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西田ヒガシさんは完全作家買いなのですが、本作は戸惑いました。すごくミステリアス!
殺人事件が絡むことでの推理・サスペンス要素あり。
死んだと思われる友人とのセックスの夢を夜毎見てしまう、というオカルト的要素もあり。
瓜二つの弟の出現、死体が出ないこと、妄想……
そんな舞台装置で、今までの西田作品の中でも際立ってミステリアスで、ちょっと怪談話のようでもあり。
そういうちょっと怖い話、奇妙な話が大好きな私は、読んでてゾクゾクの連続です。凄く私好み!
このように謎解き的なストーリー運びもありますので、あらすじは書きません。
ただ、本作はいわゆるBLとしての甘い恋愛模様は描かれず、「エロいシーン」の内訳はノンケの日浦検事がなぜか毎晩見る夢の中で、学生時代の友人の弁護士・影山と現実にはしていないセックスをしている、という展開の中でのシーンになっています。
夢で感じる触感や快楽のリアルさはどこから来るのか。
私は影山が好きだったのか。
影山が私を好きだったのか。
本当は弟が家に忍び込んでいるのか。
完全に私の妄想なのか…
現実なのか妄想なのかもわからず、擬音もなく喘ぎもない、挿入も射精もない…
しかし、漂うこのエロさはなんなんだろう。
そして事件の真相は非常に不気味で不条理で、まさに影山は意味もなく犯罪に巻き込まれて、生霊を飛ばすほどの生死のあわいに漂う。
日浦の夢にまで侵入するほどの影山の恋心だったのか、あるいは夢を見た方が実は強く想っていたのか、影山が助かった後、弟はどうなったのか。
この辺は全て明かされているわけではありません。
でもそこがいい。
夢では結ばれていても現実ではない2人。その夢も妄想に似て。そしてその夢の意味も薄々?いやはっきりわかっている2人は、まだこれからで。
そこが萌えるんです。
これから2人はリアルに寝るの?寝るのね、そうなのね?そういう想像をかきたてる。
それはすぐヤって、お汁いっぱい喘ぎいっぱいなんていう作品よりもずっとエロいし官能的だと思う。こういう作品を読ませてくれるから、西田ヒガシさんが好きでたまらない。
これまでは読むだけでなかなかレビュー出来ずにいた西田ヒガシさんですが、初めて投稿します。
「西田ヒガシ流奇譚」とでも言いますか、ミステリアスであり、オカルトチックでもあり、それでいてとてもロマンティックなお話でした。
夢うつつの境目が曖昧なストーリーと後に残る余韻にグイグイ引き込まれます!
このまま映画にできそうな感じ。
西田さんのメンズ達は2次元イケメン過ぎないせいか、イメージにピッタリな役者さん達も難なく浮かんできます。
登場人物は主人公の〔日浦〕、日浦の同期〔影山〕、影山の弟〔直人〕の3人。
でも三角関係なお話ではありません。お話の主役は日浦と影山の2人です。
検事と弁護士。堅物と遊び人。
職業も人柄も真逆だけど、日浦は華のある影山に同じ男ながらも少なからず性的に惑わされ、影山は日浦にだけゲイをカミングアウトしながらも日浦に対しては“憧れ”が勝って手が出ない。
特別懇意にしているわけではなかったものの、どこか特別に思わせる関係性の2人。
障害事件に巻き込まれて行方不明になった影山が、毎晩日浦の夢に出てくるようになったところからお話は始まります。
日浦は毎晩のように夢で影山に抱かれ、頭の中が日に日に影山で占められていく。
当の影山は生死すら分からない。それもまた日浦を影山に縛り付ける。
そこへ影山の弟・直人が現れ、ここから不思議な展開の始まり。
日浦は直人を影山に瓜二つだと思うのに対して、周りは「雰囲気は似ているかな?」という反応。このやりとりが1冊の中で何度となく繰り返される。
どういうことなのか?と思う読者に、作者から次々に色んなリードが与えられます。
本人が弟のフリをしているのか?
それとも弟が影山そっくりに整形をして現れたのか?
しかしいずれにしても日浦だけに瓜二つに見えている謎が残ってしまう。
影山が直人に乗り移っているのか?
それとも単に日浦の願望が見せる幻影なのか?
オカルト方面の可能性も捨て切れずに、読者は作者のリードに振り回されながら読み進めていくしかありません。
日浦と一緒に、こちらの頭の中までもがどんどん曖昧になっていく感覚。
最初は夢の中だけだった影山とのエロティックな時間も次第に昼夜問わず日浦を襲い始め、それがまたなんとも巧みに現実と幻覚の境界をさらに曖昧にしていきます。
影山の幻影を追う日浦が事件の真相と自分の深層心理に少しずつ迫っていく。
言うならばそんなお話でしょうか。
グイグイ引き込まれます!
日浦と影山の会話が影山本人なのか弟なのかはたまた幽霊なのかというハッキリしない中ですべて繰り広げられるために、読み終わってもなお、これは誰のセリフだったのか、影山だったのか、弟の代弁だったのか、それとも日浦の願望だったのかと考えを巡らせてしまいます。
読み終わってすぐまた読み返したくなるタイプのお話でした。
面白かったです!!
それにしても直接してるのはキスくらいなのに日浦の艶かしさといったら…!
【電子】ひかりTVブック版:修正-、カバー下なし、裏表紙なし
「西田さん、新境地?」
この作品を読んでそう思ったのですが、一回読んだだけでは落ち着かなくてもう一回読んで「いや、筋とかは全然違うけど、肌触りが似ているのは前にもどこかで読んだ様な……」
加齢のため衰えた脳細胞を最大動員して思い出したのは『社長 桃井くん』の中に入っている吸血鬼の話『ジャン』だ!不思議な感じ、読者をクールに突き放す感じ、そしてオチを付けない感じが似ていた様な気がします。あのお話が好きだった方は、今作を読んだ方がいい!何と言うか不思議な読後感に萌え滾ります。
検事の日浦は司法研修所で一緒だった弁護士の友人、景山に抱かれている夢を毎日の様に見ます。現実にはなかったことですし、しかも景山は暴行を受けた後、川に遺棄されて死んでいる可能性が濃厚。被疑者は逮捕されており、日浦はその事件の担当になっています。しかし、川に捨てたという死体は上がっていません。日浦は景山から、自分がゲイであること、そして日浦は自分の憧れの対象であるが故に恋愛対象にはならないと言われたことがあります。夢の中に出てくる景山が自分に何を伝えようとしているのか、もどかしい想いを抱き続けている日浦は景山にそっくりの男を見かける様になります。幽霊でも良いから会いたいと思う日浦が事件の調査のために会った景山の弟は、景山に生き写しで……
読んでいて思い出したのはウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)の小説です(作品の紹介に他の作家を持ち出すのは野暮の極みだと思うのですが……ごめんなさい)。しっとりとしていて、哀しい、そしてとことん神秘的で不可思議。
かと言って荒唐無稽な感じは一切しませんし、物語のつじつまはきっちり合う様になっています。
そればかりではなく、景山がどういう風に日浦を想っていたかが明らかになる『第四夜』では、西田さんお得意の『眩いものに対する嫉妬と反発、だからこそ強く惹かれてしまう』っていう、男×男の関係性がブゥワーッと爆発するシーンがあるんですね。そこがとても熱いんですよ、それ以外の部分との対比で。
西田さんのことはデビューから大好きなのですけれど、今作は「やはり意欲作なのかな?」と思います。何と言うか『ずーっと昔からの友人が、思わぬ引き出しを持っていることを見せてくれた』感じ?
うーん……このお話のスゴイ所を的確な言葉で表せる表現力を持っていない私に言えることは、
「とにかく、イイッ!のよ。読むと解ると思うんだけど……」
の一言なのでありました。
初めて読み終わった時は、理解しきれず頭の中が??でいっぱいでした。
司法研修所で知りあった弁護士の影山と検事・日浦。
影山がチンピラに絡まれ川に遺棄されたかもしれないという証言がでるが、未だ行方知らず。
そしてその事件を担当することになる日浦は、影山の幻影に抱かれる日々。
そこへ影山に瓜二つの弟が登場し…。
影山の生死不明、事件の真相、瓜二つに見えてしまう弟の存在、そして影山の幻影など、不思議要素が絡みつつのサスペンスで終始ハラハラしながら読みました。
そして何度か読むうちに、現実と非現実が入り混じるこれは西田さん流のファンタジー作品なんだと思うよ
スーツを着た男のファンタジーなので、ケモミミや羽とかはないけど、きっと心に羽が生えて日浦の元へと飛んでったり、弟の身体を使ってみたり…。
日浦は通常であれば幽霊とか幻影とかそういったものに付け入る隙なんか与えない男だと思うんです。検事やってるくらいだし、非常に理性的なタイプだと感じるので。
だけど、影山の死を強く意識せざるえなくなって、そういったものをキャッチできるようになった、或いは自分の願望も一緒に引き摺り出されたんじゃないかなと。
童貞の日浦の発言を聞いた影山が「だから手が出ない…」と呟いたシーンが私はこの一冊の中で一番印象的なんです。
好みの男だし、ちょっと喰ってやるか…みたいな感じで近寄ったけれど、日浦と仲良くすればするほど手の届かなくなるような感覚。
ゲイでヤリチンの影山にとって、日浦という男の存在がどういうものかというのが良くわかる。
乱行写真を見せたシーン。
クラウド共有というのは嘘で、あれは弟の身体を借りた影山だったんじゃないかな。
そういう姿ではないと本当の自分を晒し出せない影山…。
そんな写真を見せても動揺せず、会いたいと言う日浦とそれを見つめる影山。切ない。
雨の日に日浦のアパートの家でのキスに至るまでのやり取りも切ない。
キスなんかよりも、もっと以上の事をしたいと長年思っていたけど、弟の身体だから今はキス以上はしたくないというところも何とも切なくて。
ある意味究極の状況にならないと心の奥底を曝けだせない二人…というところがいいなと思いました。
私は余韻漂う描き下ろしも好き。
お互いあの状況ではあんなに素直だったのに、再び元に戻ってしまったかのような二人。
だけど、少しずつ外側の皮を剥いて核心に触れていくような描き方がとても素敵だと思いました。
レビュータイトルは帯より
一般の刑事物小説を読んだ後で、BLにもハードボイルドさを求めた故の西田ヒガシ先生。しっかり期待に応えてくださった。ストーリーテラーです。特に今作は西田ヒガシ先生お得意のおふざけが少なめ。そしてオカルト的なエッセンスが追加され。
いつものおふざけも勿論大好きですけれど!スーツは胸ポケットからラーメンを食べるんだね!
ちるちるの攻め表記「(幻影の)影山 ,弁護士,または彼の弟」が良いですね。結局本編では生身の影山とすることはない。けれど2人はこれからずっといい夜を過ごすわけで。余韻もまた良い素晴らしい1冊でした。