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愛されたいから、愛したい―――
軽い気持ちで読み始めました。
こんなに心抉ってくる作品だとは思わなかった…。
私はいつからゲイ同士の葛藤やしんどさについて深く考えるのを止めていたのだろう。
重た過ぎずさらっと読めるこの一冊に、ずっしりとしたテーマがたくさん詰め込まれていました。
ただのセフレとして関係を続けている央倫と駿斗。
ある日、駿斗の働く呉服店でまさかの遭遇。
駿斗がキラキラの笑顔で接客モードになっている姿には笑いました(笑)。
商社で働く央倫は専務のお嬢さんに気に入られ、いずれ結婚する予定だと告げます。
駿斗の店に一緒に行ったのは恐らく顔合わせのため。
家族に一度ゲイバレしたことのある央倫はもうあんな目には遭いたくないと。
少しずつ変わり始める2人の関係。
セフレではなく、一緒に遊びに出かけ、とうとう自宅に呼ぶ仲に。
そこに、突然遊びに来た駿斗の兄・佑斗(佑兄)。
酔いつぶれた佑兄を起こさないように自分の過去を語り始める駿斗。
跡取りとして、優秀な兄だけを大切にし、愛情を注ぐ両親。
そんな自分に唯一愛情をくれた兄。
ずっと自分が佑兄の一番だと思っていた。
でも、兄が結婚し、子供が出来たと聞いたときショックを受けたこと。
佑兄は自分の家庭を作る。そこに自分はいない。
…もうこの駿斗の話が辛くて、辛くて。
がんがん心抉られるんですよ。これでもか、これでもかって。
でもね、この後話を聞いていた央倫が黙って駿斗を抱きしめるんです。
「優しい言葉が思いつかなかった」って。
クールで無愛想でそんなキャラじゃないのに。
余計に泣けて困りました。
一方、央倫の縁談は着々と進みます。
本気になる前にセフレの関係を終わりにしたいと切り出す駿斗。
本当は、もう完全に本気になってるのに…。
さて、その後、無事佑兄の赤ちゃん誕生!!
実は先日央倫と駿斗の関係に気付いていた兄は、駿斗の感じてきた孤独に気が付いてやれずごめんな…と謝るのですが、駿斗は逆に惨めな気持ちに…。
ところが部屋に戻るとそこには央倫の姿が。
「結婚やめてきた」と言う彼でしたが…。
この日は央倫と洋子(専務の娘)さんがコンサートに行く日でした。
コンサートまでの間喫茶店で待つ2人。
きっかけは、たばこなのかな?
央倫が突然他に大切な人がいるので、もう会うのは最後にしましょうと。
この後の洋子さんの振る舞い。すごいんです。
央倫が傷つかないように上手に返して、最後のコンサートで涙を流すんです。
彼女にもいつか本当に幸せになって欲しい…。
「大学の経済学部を受けた時も、ゲイがばれた時も、自分の本当の望みはいつも誰かを傷つける。」央倫の心の声が痛かった。
その足で駿斗の元へ向かった央倫でしたが、ここで簡単にハピエンにはなりません。
央倫に「お前と一緒にいたいだけだ、ずっと」とほぼプロポーズのような言葉を言われても、いくら体を重ねても、怖いと脅える駿斗。央倫に「信じろ」と言われ、少しずつ心の傷を癒していきます。
その後家を追い出された央倫は駿斗の家で一緒に暮らすことになりますが、行先を告げずどこかへ出かけようとする度不安そうに行先を訪ねる駿斗。
そんなある日、駿斗は佑兄に、家に戻って来ないかと誘われます。
でもここで央倫、ビシッと男を見せます。
「大丈夫です。俺がいるので」
帰り道で央倫を茶化す駿斗ですが、「マジで嬉しい時って茶化すよな」と見抜かれて赤面。
部屋に戻って待ちきれず抱き合う2人。
「愛されたい」「誰かに愛されたい」「だから」「誰かを本気で愛したい」
物語中盤で駿斗が辛そうに望んでいた言葉。
愛した兄は自分の愛すべき家族を見つけ、央倫は結婚を選ぼうとしていた。
「愛」なんてずっとずっと望めなかった駿斗が央倫に抱かれながら初めて「愛してる」と幸せそうな顔をしたのが印象的でした。
何度も何度も心抉られたその先に見つけた大切な関係。
もう駿斗は出かける央倫に「どこに行くの?」と訊ねません。
「愛してる」は「信じてる」に近いのかもしれないとこの作品を読んで感じました。
傷ついた分、辛かった分、2人には思い切り幸せになって欲しいです。
そして、ゲイ本来の葛藤や悩み、生き辛さについて改めて考え始めた自分がいます。
そうだなぁ。それがBLだったよなぁ。
これからも、心に残る素敵な作品を描いて下さる日を楽しみにしつつ…。
この作品に出会えて本当に良かった。
ありがとうございます。
大島かもめ先生...。今まで何冊か読ませて頂きましたが、自分的に何かピンと来るものがなく…。でも今作は!素晴らしい!購入を迷った自分に喝を入れたい!!
セフレから始まり愛してるになるまでの道のりが長いからこそ、愛がじっくり育つんですね!
受けの照れからくる茶化しグセも可愛いし、それを受け止める冷静な攻めの姿勢が良かった!読後感も良く、とっても好きな作品になりました!
書き下ろしペーパーも申し込もうかなぁ!
表紙に惹かれて購入しましたが、中の絵も表紙通りの綺麗さ!
ストーリーもセフレの軽い話なのかな?と思いきや、ゲイのトラウマや不安をベースに、二人の繋がりをしっかり描き出すもので、心に刺さる良作品!!!
感情面を丁寧に描いた大人のラブストーリーを読みたい方に全力でオススメしたいです!
ストーリーは受けのハヤト視点で進みます。
ヒロミチとハヤトは、呼び名とメアドしか知らない完全なるセフレ。
バーで誘ってきたヒロミチは、余裕があるように見えたのに、セックスには慣れてない風で…
(余裕のあるイイ男なのに、遊び慣れてない、何か影があるところに惹かれます!)
それから、ぶっきらぼうなヒロミチ、明るめのハヤト、二人はホテルで待合せるようになります。
ハヤトは呉服屋の店員で、ある時、お得意様と一緒にヒロミチが店にやってきた!
ヒロミチは上司のお嬢様の婚約者?って感じで、愛想の良い笑顔はハヤトと会ってる時とはまるで別人!
それからもセフレとして会うと、ヒロミチは家族にゲイバレした時の混乱を繰り返したくないから結婚するつもりだと。
ハヤトから「女と寝れるのか?」と聞かれると、「女と寝れた時はホッとした。普通の人間でいられる感覚」と話す。
一言一言に重みがあって、ヒロミチがどんなに傷ついてきたかわかるのが辛い…
そして、このことをキッカケに二人の待合せはホテルから駅前になり、食事したりゲーセンで遊んだりして寝ない日もある、まるで心を許した友人か恋人同士のように関係を深めていきます。
ヒロミチもハヤトも女は愛せない完全なゲイ。
ヒロミチはゲイバレの混乱と言っていたけれど、厳しい祖母や両親に愛されていることを知っているから、家族の期待に応えたくて無理して ”普通” でいようとする。
ハヤトは結婚して子供を持つ、”普通” の家庭を築くことを諦めている人間。
小さい頃から両親の代わりに愛情を注いでくれた兄が結婚して、子どもができたことを知ると、兄はべつの家族を築き、そこに自分の居場所は無いことに、どうしようもない孤独を感じている…
二人はこんな本音を語り合える、心を許した関係になれたのに、ヒロミチの結婚を前に、ハヤトは別れを切り出します。
たとえ偽装結婚でも一緒にいれば情がわいてくる、兄が家族を築いていったように、ヒロミチが新しい家族を持つことを側で見ていることはできないから…
ヒロミチの自分を惜しむ表情、そんなささいな喜びの記憶を薄め込みながら生きていこうとするハヤトのゲイとしての諦め、寂しさが心に刺さります!
”普通” じゃなくたって、想い合ってる二人が一緒にいて楽しくて幸せなら、それだけで十分なのに…
結末は、二人で一緒に生きていこうとするハッピーエンドです。
でもヒロミチはハヤトと生きていくために、家族を混乱に落とし、結婚に期待していたお嬢様を裏切る、傷つけたくない人達を傷付けても、ハヤトと一緒に生きていく覚悟を決める。
ハヤトは明るく見えるのに、実はゲイである孤独に大きな不安を抱えている。
ヒロミチと一緒になったからって、その不安は簡単に消えるものではない。
ヒロミチは思ってることが顔に出ないクールなタイプ。
でも、ここぞって時には表情を変えないまま、とびきりの宣言をします!
それを聞いてやっとハヤトも安心できるようになったんだなってエピソードが心に沁みてきます。
ゲイであるがゆえにぶつかる壁や、内面の葛藤を丁寧に語り、ただ幸せになって終わりじゃない、大人が関係を築いていくまでを描いた良作品です!
どこか苦みが残る大人の幸せ、余韻を引きずるお話です。
大島先生の作品は『仕立て屋と坊ちゃん』しか読んだことがなかったのですが、画力がかなりアップされていて、この画力があるからこそ、この大人のストーリーがより心に沁みてきます!
表紙に惹かれるまま読んで本当に良かったです。これからも作家買いします!
ストーリーとしては、王道なのに、他の作品とはどこか違う、逃げ切れない現実の辛さと、ゲイ同士の恋愛の切なさとを、きちんと読者側に感じさせてくれる良作でした。
ストーリーとしては、
ゲイ同士のセフレ関係。攻にはお見合い話があり、でも受は「それでもまあこの関係は楽しく続けていこうね!」というままセフレ関係を続けていて。でも会うことを繰り返しているうちに、どんどん攻のことを好きになっている自分に気づき、傷つくのが怖いから「もう会うのはやめよう」と切り出して。
この流れとしては王道。しかし、大島先生の描かれる表情一つ一つが素晴らしくて切なくて。「もう会うのやめよっか」その言葉を頑張って切り出した受と、それを受け止めるしかない攻の表情が、切ない。本当は引き止めたい攻と引き止められたい受、でもどちらも勇気を出してその一歩を踏み出せなくて。それが表情と台詞で、読者側に痛いくらいにきちんと伝わって来るから、凄く切なくて凄く天才だと思いました…。
でも別れを切り出された時に踏み出せなかった一歩を、自分は受といたいという決意で、逃げてはいけない現実とケリをつけ、受の元に戻ってきたときは切なさと嬉しさで、読んでいる私までもが泣きそうになりました。そして、ベランダでのやり取り、攻から出た台詞、その台詞を言う為に乗り越えた現実。その重みがわかるからこその、受のあの表情。全てにトキメキ、台詞の良さに、読みながら顔が皺くちゃになりました……。そんな大切な台詞を言う時までも、攻はいつもの表情。そこで、攻は実は最初からちゃんと受のことが好きだったのではないのか、とも思いました…そして、その上での最終話は本当に嬉しさでいっぱいでした、本当に文句なしです!!表情、表現、台詞、全てが本当に素晴らしかったです!!
本当はもっともっと伝え切れない良いシーンがもっとあります、表情一つ一つからの感情の読み取りも最高です。是非、読んで頂きたい作品です!私は出会えて良かったです!これから、何度でも読み返して、切なさとトキメキに浸りたいです!
ヒロミチのポーカーフェイスの裏に隠されているものと、ハヤトの明るさの中に潜んでいるもの。
二人の大人が、どうにもならない柵に雁字搦めになって身動きできない状況や、勇気を出してそこから飛び出す怖さ。
多くはないページ数の中で二人のセリフも多くはありませんが、だからこそ言葉一つ一つが胸に刺さりました。
「愛されたい」「愛したい」そして「信じろ」というセリフが涙を誘いました。
神です。