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ただ一途で優しい下手なピアニスト・祐介が、人間的の情の部分を捨てて壊れてしまったかのようなヤクザの深見と出会い、それでも恋をして、ただひたすらに報われなくても愛をささげ続けていくという、感動的なヒューマンストーリーの第1巻。
こんな二人に恋愛はありうるのか?とさえ思える展開ですが、そこに交錯するそれぞれの想いが、切なく苦しく、胸を打ちます。
バーでピアノを弾く祐介をいつもじっと見ている深見、絹川はゲイなので自分に気があるのかと思ったら、昼間も追いかけてきて、ピアノを教えてくれという。
そうして祐介とヤクザの深見の交わりが始まるのです。
深見はヤクザだけに色々と組の人間が出入りしては、鬼のような態度をしたり、キレて怖いセリフも祐介に吐いたり。
それでも彼は深見に、真正面からぶつかっていきます。
この健気さは、恋でもあるのだけど、決して自分を好きになってほしいという下心のあるものではなく、ただ側にいたいとか、人間として放っておけないとか、無償の愛に近いものを感じます。
不器用ながら、なんの力もないのに、精一杯で深見を想い、そして彼を助けようとする祐介に、少しは深見も優しさを見せる部分に、どうか彼も変わっていってほしいと願わずにはいられません。
深見に執着を見せる有島という男も登場し、彼のこともあり、ゲイに嫌悪感を抱く深見ですが、祐介にキスをされても、その翌日は普通にしている。
どうか、祐介の気持ちに深見も気が付いて受け入れてほしいと思うのですが・・・
波乱は2巻、そして最終巻の3巻まで続きます。
地味な作品ですが、西田作品ですので絶対心打つこと間違いありません!
超お勧めの作品です。
こちらの作品はしがないピアニスト×ヤクザのお話です。
かなりヤクザな内容です。
理不尽な義理・暴力、薬、女とのセックスなどが描かれています。
全3巻ともシリアスです。
これを西田さんが書くとなぜか普通の任侠ものとは違う味わいがあって面白いです。
BLですが先ほど書いたようにヤクザなので「金と女」なわけで、
けっこう女性との絡みのシーンも多いんですよね。
普段BLに出てくる女性キャラはあまり好きではないですが、
こちらの作品の描写はちっとも不快でもなんでもなかった。
何度読み直しても全然嫌じゃない。おもいっきり画面の中で絡んでいますが。
お互いに割り切ったセックスだからかもしれません。
ヤクザだからこれぐらい当たり前と思って読んでいるからなのかもしれません。
それとも西田さんの作品だからそう感じるのか。
なぜか分かりませんがキツイ場面も普通に受け止めている私がいます。
ピアニストの絹川の献身的とも思える愛情には、
どうしたらあんなヤクザをこんなにも好きになれるのだろうと不思議に思うのですが、
お互いの目を見ていると納得してしまうんですよね。
理屈抜きに「惚れる」ということのもっと本能的なものを感じます。
危険な男ほど惹かれる人も世の中にはいらっしゃると思いますが、
そういうモノも理由にあるのかもしれません。
ところで西田さんの作品の特徴でもありますが、
どんなにシリアスでも時々ギャグを挟んでくれるところが好きです。
それも大げさな言葉や大きなコマで見せつけたりするわけじゃなく、
しれっと画面に入れていて「あれ!?ここにギャグ絵入れていいの?」という感じが大好きです♪
どうもこのさりげなく入れてる感じが自分のツボのようです。
ちなみにギャグに関しては過剰にやるならあーみんレベル推奨派です。
西田東さんの漫画のなかで一番好きな作品がこれです。みんなに勧めてまわりたいぐらい大好きです。
主人公は下手なピアニストです。
そんな彼が、ヤクザに恋してしまったところから物語は始まります。
このヤクザはエキセントリックな性格をしてます。人間として歪つ。ネジがゆるんでるというか、タガが外れてるというか。ヤクザとしての顔のときは鬼畜。命にすら執着心がない。常識もない。けど、時折見せる奇妙な行動の一つ一つが可愛かったりして。
そんな彼は、唯一、ピアニストくんのピアノを聞いてるときだけは安らげる。そこに恋愛感情はありません。
ピアニストくんは優しくてまともな性格してます。
ヤクザが平気で犯罪を犯す現場を見て脅えたり葛藤したりはするんだけど、募る恋心だけはどうにもならない。
ただそばにいたい、それだけでいい、何も望まない。そう決めて、それを実行します。
もう、めちゃくちゃ切ないです。
1巻 内表紙のドアノブのあたり、
仕上がり後に水滴落としちゃったんだろうなと初っ端から吹きましたw
こういう本筋以外での笑いが西田東さんですよね。最高です。
たまに作中、日常的なシーンで狂ったギャグが挿入されてるのを見ると、
いいのか?シリアスなストーリーでそこまで笑いに走っちゃって?と心配になりますが、
この適度な脱力感がスルスル読める秘訣なんでしょうね。
彼らのほんわかした日常にひとかたならぬ愛着もわきますし(笑)
全3巻読み終わっての感想です。
一巻はヤクザの深見と二流ピアニスト絹川の出会いから絹川が深見に惹かれていく様子について描かれていました。
バーでピアノを弾く絹川をじっと見据えるヤクザの深見とその視線が気になる絹川。やがてピアノを教えるようになり、ピアノを介してヤクザと一般人の交流が始まります。
絹川のピアノを聴くときの深見の表情にたまらなく惹かれていく絹川ですが、深見は裏社会の人間の生き様を隠さないので、それを目の当たりにした絹川は恐怖を感じて逃げ出し、何であんな男をいい人だと思ったんだと絶望するのです。
深見は歪んでどこか壊れてしまったような危険な男であり、絹川も絶望と深見に惹かれていく自分の本心との間を揺れ動きながら、そばにいれたらいいんだと覚悟を決めていく様子が切ないです。
あくまで普通の優しい男である絹川が、深見の事になると後先も考えず、無鉄砲な行動を取ったりする。それは好きレベルではない無償の愛みたいな強さを感じさせます。
ヤクザものの話なので深見は女とセックスもするし、暴力行為も躊躇せず、流血沙汰も起きます。
一貫してハードでシリアスなのですが、ところどころ西田さんお馴染みの爆笑あとがきを彷彿とさせる人物描写や変な食べ物が出てきたりして、そこが良い息抜きになってます。
巻末に「恋は近くて遠いけど」という会社の同僚二人(どちらもゲイでタチ)が可愛い同僚長谷川ちゃんを狙って…というリーマンものの短編が収録されていました。
表題作「願い叶えたまえ」とは全く異なる世界なのでそれを読んでちょっとキュンとして、さらに爆笑あとがきを読んで笑うと、表題作で張りつめていた心がほぐれて日常生活に戻ることができるといった構成になっています。