ボタンを押すと即立ち読みできます!
こちら、作者さん初のオメガバースになります。
私はオメガバースが大好きなのですが「たった一人の運命の相手」と言うのに、たまらないロマンを感じるんですよ。
で、今回も当然、二人は「運命の番」です。
が、キモとなるのは、その運命への抵抗なんですよね。
自身のオメガ性と言う運命に対して、真っ向から挑む受け。
そして、本能のままに、自分の番にしたい攻め。
この二人の、ギリギリで繰り広げられるせめぎ合いに、とにかく萌えるんですよー!!
また、落とし所が素敵なんですよね。
そう、結局は、運命なんてほんのキッカケの一つに過ぎないのです。
ここから、本物の愛を育てて行けるかどうかは自分達次第!
これだからオメガバースは最高なんですよ!!
内容ですが、国内シェアナンバーワンの製薬会社創業者一族の門脇×
発情抑制剤の開発に没頭する大学助教・保による、シリアス寄りのオメガバースになります。
自分自身と、自身と同じオメガ性を持つ人々の為に、発情抑制剤の開発に心血を注ぐ保。
22才で初めて訪れた発情期により、行きずりの男達に襲われてしまいます。
そこに偶然通りかかり、助けてくれたアルファの男性・門脇。
本能に逆らえず門脇に抱かれた保ですが、そのことにより彼が運命の番だと分かります。
しかし、自身のオメガ性に甘んじたくない保は、門脇と番になる事を拒否してー・・・と言うものです。
まずこちら、ストーリーがしっかり練られてて面白いのです。
パンデミックにより人口の50%が死亡した「大厄災」。
そこから半世紀ー。
大厄災時に使用した新薬により、人類に新たに誕生した「オメガ性」。
そして、大厄災時のワクチン開発により、国内シェアナンバーワンなった製薬会社「KADOWAKI」の黒い噂。
と言った所でしょうか。
今作でのオメガの扱いですが、かなり社会的地位が低いのです。
発情期にレイプされようと、悪いのはオメガ本人。
また、オメガと言うのは容姿を磨き、優秀なアルファとつがうのが一番の幸せ、と言うのが一般的な常識になっちゃってるんですね。
その為、わざわざ発情期を抑える必要は無いとばかり、発情抑制剤の開発も進んでいないー。
こう、ホント酷いのですよ。
ただですね、この設定のおかげで、主役である保の魅力が、より引き立ってもいるんですよね。
オメガだろうとアルファやベータに負けないと懸命に勉学に励み、22才と言う若さで助教に。
そして、オメガ性に縛られたくないと、発情抑制剤の開発に没頭するー。
運命に従う事を良しとしない、その生き方が清々しいのです。
で、そんな保が出会う運命の相手・門脇。
彼はですね、典型的なエリートアルファです。
オメガと言うのは自分の番になりたいと、発情期をこれ幸いと迫ってくるようなのばかりみたいな。
こちら、面白いのが、こんな二人の掛け違いなのです。
オメガだろうと、一人の人間として自立していたいと強く望む保。
自分の番にしてやると言うのに、保が何故抵抗するのかサッパリ分からない門脇。
門脇にとっては、オメガはアルファに囲われるのが一番の幸せなハズですからね。
あのですね、この二人、もう完全に両思いなのです。
ただ、互いの考えの違いから、すれ違ってなかなか結ばれないのにジレジレさせられると言うか。
門脇なんか、何だかんだ言って保にベタ惚れなんですよね。
権力にものを言わせて、保の研究室を閉鎖し、アパートからも追い出す。
で、行く場所の無くなった保の為に、いそいそと自宅に彼の部屋を準備して、新しい研究室も確保する。
やってる事は間違ってるんですけど、彼にとっては「番なんだから一緒に住むのは当然」なんですよね。
あまりに嬉しそうに保の部屋を準備する門脇が、不覚にも可愛く見えちゃって。
おおおーーーい!!
方向がズレてる。
完全に方向がズレてるよ!!
なのですが、ここからが更に萌える展開。
最初こそ保の言ってる事がさっぱり理解出来なかった門脇。
しかし、保と過ごす時間が長くなるにつれ、これまでのオメガ達とは全然違う、保の考え方や生き方にどんどん惹かれて行く。
そして、自身の偏見に気付く。
また、保ですが、門脇の自身に向ける偽りの無い愛情に、頑なだった気持ちを緩ませて行くー。
これまた、料理と言うアイテムが巧みに使われてるんだなぁ。
もうこの二人、早くくっついちゃってー!!
ここからまだ一波乱あったりするのですが。
ただ、ラストがすっごく素敵なのです。
これ、オメガバースだからこそだよなぁて感じで。
こういう、ロマンチックなのに弱いんですよ。
ところで、こちらエロ濃厚です。
一回のエッチで、30Pとか使ってます。
エロ自体にもちろん萌えるんですけど、それ以上に二人の攻防が滾るんですよー!!
身体から籠絡して、番にしちゃいたい門脇と、グズグズになりつつも意地で拒む保みたいな。
最高ですがな・・・。
脳天気な私はつらいことが会った時には楽しいことを考えて、大概は気を紛らわせることが出来ますが1回だけ、どうしてもそれが出来なかった時があるんです。入院した時なんですね。
病気自体は大したことがないものだったんですが、24時間、口からの摂取を禁じられまして。喉が渇いて仕方がなかったのに水が飲めない。15時間位経ってからの頭の中は「水が飲みたい!」ってことだけになっちゃって、5分おきくらいに時計を見ちゃうんです。24時間経ったのに、時間が来たことに気づかれず、それまでとってもいい人だと思っていた看護師さんを本気で恨みました。
落ち着いてからしみじみ思ったものです。
肉体の苦痛は理性を崩壊させるものなんだなぁ、って。
このお話を読んで、いの一番に思い出したのはそのことだったんですね。
ωの保は大学の助教としてヒートの抑制剤の研究をしています。
番のαに頼るのではなく自立して生きたいと思い、脇目もふらずガリ勉して薬の開発が出来る立場を勝ち取った保はまさしく理性の人です。不器用な生き方だとは思いますが、ものすごく共感しちゃう。
それがねー、その新薬が完成する直前に初めての発情を迎えてしまうんですよ。
で、やむにやまれぬ理由で研究室から出た時に強姦されかかっちゃう。
颯爽と現れた『運命の人』門脇に助けられて難を逃れたと思ったら、門脇に食べられちゃう。
この時に思い出したんですよ。肉体的苦痛(この場合は快楽?)は理性よりも強いってことを。
腐女子的にはキモのシーンで、可哀想感と無念さが先立ってしまいました。
だから、その後の門脇のアプローチがとっても良かったんです。
ガツガツ来るんじゃなくて、一緒に食事をすることを繰り返すという。
このお話の設定では『食事』は『完全栄養食を食べる』ことで、調理されたものを食べるのは旧時代の習慣、もしくは金持ちの趣味とされています。だから、保にとって調理されたものを誰かと一緒に食べるというのは、特別な、そして目新しい経験なんですね。
そして、保が美味しそうに食べるのを見るのが好きだと言う。これ、上手いなぁと思いました。
一緒にそんな経験を積み重ねるうちに保は門脇の人柄に惹かれていきます。
でも、門脇は黒い噂のある製薬会社KADOWAKIの御曹司。
おまけに、保はやはりαに人生の全てを寄りかかって生きるのは断固として拒否したいと思い続けている。
普通に考えたら、門脇のやるべき事は『保の研究を支援する』ことなんですけれど、オメガバースに出てくるαの例に漏れず『自分のところに来て何不自由なく暮らすのが保の幸せ』と考えて、大学で研究が出来ない様に手を回しちゃうんですよ……αって頭が良いはずなのに何故にこんなに馬鹿なんだろう?
社会的に作られた偏見は人の目を曇らすものなのねぇ。
で、保は研究に出資してくれるという甘言に釣られて、うさんくさい研究所と契約をしてしまうのですが、実はそこは……と、この辺で止めておきます。
保は大きな危機に瀕しますが、なんだかんだ言って『努力する人は努力した分の結果を得る』というお話で、スカッとしました。
蛇足ですが『KADOWAKI』という社名、某大手出版社と酷似しているため、何度も読み間違えちゃった。
何故アルファベット表記の社名にしたんでしょう?
笑っちゃったんですけど、これ、バーバラさんの洒落ですかね?