イラスト入り
最近、柊平さんのお名前を拝見してなかったなあ、と思いつつ購入。柊平さんの書かれたあとがきによると、ここ数年BL作品は刊行されていなかった模様。でもまたBL作品を書いてくださるとのことで嬉しい限りです。
という事でレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公は深紅。
駐ゲルマニア共和国大使・日浅泰三の長男でありながら、とある理由から父親に疎まれ憎しみを一身に向けられ生きてきた。「深紅」という名前は「辛苦」からきている。そんな日浅大使は深紅を苦しめることなら何でもする。
深紅が13歳の時から肉体的に執着してくる辺境伯に、息子を差し出すことさえする。
大使である父親に逆らえる人物はおらず、深紅は子どものころから父親の虐待に一人孤独に耐えてきた。
その日もパーティーで気分が悪くなってしまった深紅だけれど、彼をいたわってくれる人はいない。辺境伯に身体をまさぐられ精神的に限界を迎えたときに、そこから救い出してくれたのは大使館付きの医務官・鹿島だった。誰一人味方になってくれる人がいなかった深紅にとって、鹿島の医師としての優しさに対する感謝の思いは、やがて恋心へと変化しー。
というお話。
とにかく深紅という男の子が薄幸さんです。
父親に疎まれる理由が、深紅を出産する際に母親(大使の妻)が亡くなったことに起因している。妻を深く愛していた大使は、息子のせいで妻を失い、その悲しみの全てを息子にぶつけた。
ゆえに愛されることなく深紅は成長しているわけですが、孤独な心に鹿島先生の優しさはどれだけしみ込んだのだろうかと思うのです。
やがて深紅は辺境伯の元へと愛妾として差し向けられることに。
深紅は辺境伯を心の底から嫌っていますが、辺境伯のもとに行くことになる理由がこれまた泣ける。鹿島先生を守るためなんです。
が、辺境伯のもとに行くためにつき添いとして父が選んだのは鹿島先生。好きな人の手を借りて、嫌いな男の元へと身を差し出すことになる深紅の絶望が読者の胸を打ちます。が、ここで鹿島先生に「愛してる」と言われ、そして抱かれ―。
薄幸・健気受けさんを、スパダリが救い出す話か?と思いつつ読み進めたのですがこの作品はそれだけに非ず。
ここから怒涛の展開を見せます。
実は鹿島先生は単なる医師ではない。
とある理由から、日浅大使を探っている。
鹿島先生に愛されていると思ったのもつかの間、自分が利用するだけの駒だと知ってしまった深紅の哀しみ。
二転三転するストーリー展開で、読んでて非常に面白かった。
が、鹿島先生の思惑とか深紅への深い愛情は透けて見えてるんですよね。
なので、シリアスになりすぎない。
正直に言ってしまうと、ありきたりというか既視感があるというか。
深紅は確かに父親から愛されず孤独な人生を送ってきてはいますが、鹿島先生の感情が見えているので先が読めてしまう。
さらに、深紅のネガティブさがややくどかった気もしました。
自分がいかに薄幸か。
鹿島先生をどれほど大切に想っているか。
自分が犠牲になることで鹿島先生を守りたい。
そういった彼の心情を描いた部分が作中多く割かれていて、完全に好みの問題ではありますが、もう少し男気にあふれた受けさんが好きなこともあってちょっと萎え萎えな気持ちにはなりました。
が、この作品は2007年に刊行された「小説花丸 初夏の号」に収録されていた『刹那の蜜月、切なの恋』を大幅に加筆修正したものなのだそう。ああ、なるほど、確かにこういうストーリーも多かったよなと思いつつ読破しました。
深紅は子どものころから辺境伯に性的に嬲られ続けていたこと、そして深紅を辺境伯に渡したくない鹿島先生によって若干強引に抱かれてしまうこともあり、純愛にカテゴリされるストーリーでありながらもエロ度はやや高めです。
鹿島先生が深紅を愛するようになった過程がやや甘かった気もしましたが、スパダリ攻め×薄幸受けという王道ストーリーがお好きな方にはお勧めな作品かと思います。
表紙買い。何作か読ませていただいていましたが、久しぶりの柊平ハルモ先生。当作は2007年雑誌掲載作を大幅改稿したものとのことです。お話としてはとっても安心して読める王道健気ものと思います。さっくり読めてしまったので萌にしました。「本編+攻め視点の後日談+あとがき+受け視点の後日談」です。
ゲルマニア共和国の日本大使公邸から身の回りのものを全て片付け、旅立とうとしている深紅(しんく)。すべての艱難辛苦がふりそそぐようにと名付けられたことから分かるように、出産時の不幸により妻を亡くした父親(駐ゲルマニア日本大使)は全身全霊で実子である深紅を憎んでいるのです。今回、隣国のグロッケンシュピール公国の主、マルトリッツ辺境伯の元へ愛人となるべく深紅を送り出すべく、車で行くといいと告げて用意していた運転手を紹介し・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
マルトリッツ辺境伯、受け父、攻めの同僚、マルトリッツ辺境伯の弟 といったところかな。二人で長らくしっぽりしておられる印象が強いです。
**より内容に触れる感想
深紅ちゃんが結構手酷い目にあってまして。おとーさん、いくら嫁を愛していたからってそれはないやろと感じます。ヨーロッパの日本人社会狭いだろうし、大使を頂点としたヒエラルキー強烈だろうから、深紅ちゃんの置かれる状況、厳しいのはとっても良くわかるんですが、あまりに理不尽。それを歪まず、でも逃げず(逃げられず)、まっすぐ真っ白な受けさんが、なんだかなあ・・・という印象です。いい子なんです、めっちゃ。自分にかかわる人がお父さんによって不幸にされるのが分かっているので、人と関わりを持たず、ひっそり消えていこうとするのがね・・・やっぱりちょっとだけ「戦え!」と思ったり・・・
攻めさんはやや策士より&スパダリ30代です。武闘派のイメージもあり、攻めとしては完璧好み。後半の攻め視点SSでは溺愛が過ぎて変態臭少々(笑)。まあ枕もって部屋に訪ねてこられたら、ちょっと頭の回路壊れるよな、納得。
王道健気路線でした!