非BL映画だけど東京の会社員優馬×素性不明の男直人。役者が豪華すぎるくらい豪華なので演技も当然上手い。役作りの段で実際に同居までしたらしい。
優馬と直人は言葉が足りないことで重大なすれ違いを起こしてる。相手がどうでもいい人ならそれでもいいけど、大切な人なら怖くても不安でも、最終的なところで対話を諦めないで向き合わないといけないんだな。大切な人を疑うっていうのは自分の人生を疑うことに等しくて、それはとても苦しい。でも人は人を無条件に無尽蔵に信頼できるほど無邪気でもいられないから、自分のことを開示していかないと長期的な信頼関係は望めないのかも。そんなことを思った。
ちなみに原作小説ではもう少し2人が会話してる。対話じゃないけど、この映画を観ると他愛無い会話をする2人ならいくらでも見たい気持ちになるし、優馬が直人に心を許していく感情の動きがより丁寧に描写されているので小説『怒り』上下巻は読んだ方がいいと思う。あと、まだパラパラめくってみた程度だけど『小説「怒り」と映画「怒り」』っていう優馬役の俳優さんと原作者のインタビューが載ってる文庫もセットで優馬×直人の解釈を深めるのに役立つ。
とにかく、優馬と直人が同じ墓に入ることを願ってる(墓の話も小説の方が若干すっきりできる)。
とここまでBL的観点で感想を述べたけど、作品全体では優馬と直人以外の登場人物たちもすごく魅力的で引き込まれるのと、素性不明の3人全員について「この人が犯人であってほしくない」と思わせられるのがすごい。
本屋で表紙に一目惚れして購入しました。
一言で言うと最高でした。本当に大好きです!
ゾンビの描写は結構おどろおどろしく描かれています。
それがまた良いのですが、私が1番に感じたのは切なさでした。
登場人物それぞれが抱えるトラウマがあり、それぞれに愛しい存在があります。
側から見れば誰も救われない悲劇。
しかし渦中の彼らには世界がどう見えているのか。
彼らは不幸だったのか。
幸せとは何なのか。
切なくて哀しくて愛しい彼らの生き様と死に様が、脳裏に焼き付いて離れません。
そして本編を全て読んでカバー下を見た時、
「ああ、そういうことか……。」
と目を見張りました。
私が読んでいたのはただの漫画ではなかったのです。
きっと、「彼」が物語り続ける限りは、「彼ら」の人生が終わることはないんだと思います。