今回初めてレビューを書かせていただきます。
もともとこの作品は知っていたのですが、基本雑食で表紙買いが当たり前な私がなかなか手を付けなかった数少ない作品の一つでした。
もしかしたら無意識のうちに分かっていたのかもしれません、軽い気持ちで読む作品ではないと。
BLだと思って読む作品ではないと私は思います。それよりも、もっと奥深くにある作品でした。
永井三郎先生の作品はこの作品が初めてなので、最初は単純にギャグのシーンやいきなりホラーテイストになるシーンの場面転換の面白さに興味を持って読んでいました。
しかし、読み進めていくうちにどんどん涙が溢れてきて物語の世界観に飲み込まれていました。
この物語の良さは三者三様の母親ですね。
三島の母親は、ゲイでもゲイでなくてもこんな母親が良かったと思えるような母親です。彼女が三島の母親で良かった。
三島がいじめられていても世界に絶望していないのは、彼の母親の強さを確実に引き継いでいるからだと思います。
「私のために選んだその道が少しでもお前の我慢や諦めの上にあるのなら、それでお前の思った道を行けないのなら、私は凄く悲しいしそれこそ不幸だ」
この言葉に涙が溢れてきました。
夢野の母親はこの親ありでこの子ありって感じでした。
「仕方ないんじゃないかなぁ。」って言葉が本当に良かった。ノンケだった夢野が三島を好きになるって、現実の世界で考えたら結構すごいことだと思うんですよね。男でも女でも本気で好きになれる人がいるってことの素晴らしさに改めて気付きました。夢野の父親、何気に好きでした(笑)
アメリカは日本よりもゲイやレズということをオープンにするぶん、ホモフォビアの方も多いですから…。だから、そういうことにも切り込んでいたので感心しました。
そして、桐野の母親。私はこの母親が一番リアルで当たり前だと思いました。どの母親もリアルなのですが、桐野の母親が一番、ゲイをカミングアウトされた母親の反応で自然だと思います。「子どもなんて産まなきゃ良かった。」なんて、母親として最低の言葉だと思います。でも、自分の子どもがそのようなことをカミングアウトすれば誰でも動揺してしまうと思います。
柳田先生もまた、かわいそうな人でした。三島にしたことは絶対に許せないことだと思います。でも、嫌いになれないんですよね…。「受け入れてくれよ」っていう言葉に色々な意味が含まれていて、すごく苦しい気持ちになりました。
私はこの話を読んでいるとき、なぜ中学生にしたのだろうかと疑問でした。高校生でも良かったんじゃないのか、と。
しかし、最後まで読んで分かりました。
この物語は中学生で進めていくからこそ、桐野が自分の成長について苦しんでいたり、三島が女の子みたいな容姿であることに説明がつくと。
夢野と三島の現在はほっと胸をなで下ろしたのですが、桐野の決断には何とも言えない気持ちになりました。
でも、桐野がそれで幸せならばそれで良いのです。
色々な行動に意味があって、言葉に思いが込められていて、本当に読んで良かったです。
たぶん、近年発売されているどのBL本よりもリアルでした。
リアルな恋愛で、リアルな決断で、リアルな物語でした。
三島と夢野と桐野と、そして柳田先生、みんながそれぞれの幸せを感じて過ごしていることを信じています。
そして、このような物語を書いてくださった永井三郎先生とこの漫画を出版してくださったふゅーじょんぷろだくと様に感謝の気持ちを伝えます。
ありがとうございました。