ぽややん受と大らか攻の組み合わせの妙とでもいうんでしょうか、全体を通してのBL部分とファンタジー部分のバランスがよく、最後まで一気に読んで楽しめました。
受は健気という言葉より頑張り屋さんの方がぴったりで、食いしん坊だったり庶民的なところはあるんだけれども、純粋で無垢なところもあってやっぱり王子様。
攻は押せ押せムードで受を可愛いっていうのが丸わかりなんだけど、そこはそれ、節度と欲望の狭間に悩みながら、煩悩が勝って触りまくるは構い倒すはするし、周りから見たらバレバレな愛情なんだけど、肝心の受がぽややんな子なので通じない。
全編通して二人の会話ややり取りがとても楽しく、読みながら光景が浮かんでニヤリとしたことが何度もあります。
そんな二人の周囲も個性的な人たちが揃っていて、文字の中の騎士団と主人公の生活や日常を身近に感じられました。
BLだから愛がテーマではあるんだろうけど、愛だけで生きてるわけじゃなくて、ちゃんと地面に足を着けて生活している風景をいろんなシーンで見せてくれるから、主人公や登場人物たちを身近に感じたり、親しみを覚えたりするのだと思います。
そうして前半で人物や背景を固めて怒涛の後半へ。
戦闘シーンや流血表現はあるけど、逆に避けたら不自然なところをきちんと書いているのも、BLに限らずファンタジー好きには嬉しいです。
別にそのシーンが好物ってわけじゃないんですが、騎士と戦があって、流血がないのは逆に変だから、主人公の成長を読者に意識づけるためにも、必要不可欠な場面だと思っています。
その戦闘シーンなんですが、挿絵に悶えました。
作者もあとがきで書いていましたが、確かに萌える。そしてカッコいい。
ファンタジーって、挿絵が大事なんだと再確認させられました。
後半に入ってからの激情をぶつけ合うシーンは印象に残ったし、受が真実を知らされた時の数ページのやり取りには涙腺が緩んでしまって。
読み応えは十分、すでに続きが読みたくて仕方ありません。
ちらっとだけ出て来た竜が続編ではたくさん出て来ると嬉しいです。