『二哈和他的白猫師尊』も遂に5巻が発売されました。
日本語版ラジオドラマの配信開始や初のポップアップショップの開催決定など、盛り上がりを見せる二哈界隈。
と同時にこの5巻、盛り上がりに盛り上がってくれました。
ひたすらに最高でした。
まずはこの物語を5巻まで読めて本当に良かった、とその余韻をしみじみ反芻しています。
盛り上がりに盛り上がった結果、あんなことや!こんなことが!起きるのですが、ここまでストーリーが進んでくるとネタバレ回避が難しすぎて、もう何も書けなくなってくるのがなかなかつらいところです!
この5巻ではBL部分の進展のみならず物語も重要な局面に入ってきており、重くシリアスなシーンで今巻は最後のページを迎えます。
今後墨燃を待ち受けているであろう大きな試練。
墨燃、そして側にいる楚晩寧が、この局面をどのように受け止め受け入れ昇華していくのか、そして肉包不吃肉先生がその痛みと苦悩をどのように描いてくださるのか、とにかく楽しみで楽しみで仕方ありません。
毎度新しい巻が発売される度に言っているような気がしますが、やはり今回もこれを言わずにはいられません…、今すぐに6巻が読みたいです。
『鎮魂』全3巻を読み切って、今その余韻に浸っています。
第2巻で大きな時空の広がりを見せた物語は、この第3巻でより壮大な中国の神話世界へと波及していきます。
お陰様で理解を深めたい欲が高まり『山海経』や『中国の神話』(講談社学術文庫・貝塚茂樹著)などなどに手を出すに至りましたが、たとえ中国神話の知識はなくとも、ひとつの完成した物語としてこの作品自体を楽しむことができると思います。
とはいえ、『中国の神話』を読んだお陰で、天地ができる以前に生じそこに存在した “混沌” 、混沌として何者でもなかったそれに名前をつけ役割を与えた山聖、という図がよりはっきりと見えてきたように感じました。
何でも無いものに名前をつけ「何か」にして存在を定義するということ、それはその実在をこの世に明らかにすること。
その意味で、山聖によってこの世に生まれたと言ってもよいその小鬼はやはり山に見出された鬼であり山の鬼、嵬であり巍なのだなと。
ラストに収録された外伝「山鬼」も非常に良かったです。この物語ひとつで短編映画を見たような余韻を感じました。
ドラマから入った私にとっては、ドラマとの違いを楽しむという意味でもとても得難い読書体験となりました。
映像化にあたって様々な制約が待ち受ける中、原作小説内にちりばめられたエピソードや繊細な心情の揺れなどを彩り豊かに拾い上げて脚本や構成がなされたのであろうことが垣間見え、ドラマ、原作小説どちらもそれぞれにかけがえのない作品であることをより強く感じました。
『鎮魂』、この作品に出会えて本当に良かったです。
おどる先生の『春のデジャヴに踊れ』とても柔らかであたたかな読後感でした。
春、少しずつ吹く風が優しくなっていく季節の空気感がそこにありました。
二人の間で微妙に意思疎通できていないように感じられてしまうような不安を煽る些細な言動、お互いに無理をさせているんじゃないかと心を痛める瞬間、そういったものが決して強くなり過ぎることなく柔らかくたおやかに描かれています。
個人的に好きだったのはスタジオ内の細かな描写です。
淳さんがスタジオでマットを敷いて、軽くストレッチしながらイヤホンをして音楽を聴いている、もしくは動画チェックしているさまや、鏡の前のバーに掴まって大腿四頭筋ストレッチしているさまなどなど。
わかるわかる!とついつい注目してしまいました。
ぜひまたおどる先生のダンステーマの作品を読んでみたいです。
普段あまり兄弟物に手が伸びる方ではない私ですが、その絵の醸し出す尋常ではないオーラに引き込まれ読み始めた『兄弟失格』。
素晴らしかったです。潔くテーマを表したタイトルに準じたストーリー。読みながら体中の血がザワザワするのが感じられるほどに面白かったです。
絵やセリフの間まで読ませてくれるような匂い立つ作品でした。深く引き込まれてしまいました。
そして絵が、線が本当に素晴らしいなと感じます。
身体のラインや動き、コマひとつずつが際立っていて、見惚れてしまいます。
細身でヒョロヒョロしてて眉毛は細いし三白眼だしのキハチ、なんだか謎の色気があって凄いです…。読みながらも凄い…と思わず声に出てしまいました。なんなんでしょう、この不思議な色っぽさ。
対する八尋は、前半の狼狽え憔悴していくさま、からのシャワータイム遭遇シーンで見せた急な“男”のギャップが非常に良かったです。
浴室から漏れる明かりの逆光も相まって、濡れた前髪をかき上げる八尋の色気、爆発してました。
まず漫画として非常に面白く、キャラクターも脇役まで皆魅力的で、BL部分の心の動きも色気度合いもこれ以上なく最高です。
このお話の続きを読めないことに駄々を捏ねて暴れてしまいそうな気分ではありますが、余白と想像の余地を残して物語の幕を閉じる、そこにもまた粋なものを感じます。
りんごの実先生の作品をもっともっと読みたくなりました。
これから追わせていただくのが非常に楽しみです。
話題の中華耽美小説の作者としてお馴染み、墨香銅臭先生のデビュー作品『人渣反派自救系統』の待ちに待った日本語訳版小説第1巻です。
こちらは既に先にアニメーション化作品『クズ悪役の自己救済システム』が上陸済みということもあり、多くの日本の愛好家の間で本当に念願の日本語訳小説の刊行となりました。
私も英語版で読了しており、初めて通して読んだ際にはその多重層につらなる物語構成の面白さに圧倒されました。
ただでさえ面白かったその物語をこうして母語で読める幸せを噛み締めています。
言葉遊びやノリツッコミがより身近に感じられることで、沈清秋 / 沈垣の脳内で駆けめぐる早口セリフが生き生きとしてテンポ良いことこの上ありません。
逆に、沈清秋 / 沈垣の考えていることが我々にも読めてしまうため(文字通り)、沈垣が自分自身に言い含めることで覆い隠している、彼自身も見つめきれていない想いがあったりすることにも気づかされました。
この物語の凄いところは、そもそものオリジナルの『狂傲仙魔途』の悪役沈清秋として転生してしまった沈垣が、その物語の主人公である洛氷河や沢山の物語上の登場人物と関わり合って行くうちに、気づけば沈清秋である彼自身が物語の主人公となっていくさまです。
沈清秋は自分自身が主人公とはまるで思っておらず、あくまでも洛氷河を絶対的主人公であるとして物語の中で奮闘していくわけですが、その沈清秋の起こす様々な行動は結果的に彼自身の物語を紡ぐに至り、それが『人渣反派自救系統』になるという…。
いやーーー本当に面白いです。
ここから先も更に深まっていく沈清秋と洛氷河二人のすれ違いっぷりを味わえることに、大きな期待しかありません。
この先の日本語版の刊行も心より楽しみにしています。
甘くてとろけるようなエンゲージ4巻でした。
ここに至ってようやくこんなことあんなことができるようになった創紫さんと盟、良かったね……と心から祝福してあげたい気持ちです。
盟が持つ光の属性、圧倒的陽の性質に、創紫さんのみならず他の沢山の人々が癒され浄化されていくさまがとてもあたたかな作品だなと。
素直で明るくて頑張り屋さんな盟。
そんな盟くん、その出生にまつわる波乱がまだまだ待ち受けていそうです。やや不穏な予感を見せて物語は次巻に続きます。
そして改めて、創紫さんの森のサンルームのお家の美しさに見惚れてしまいます。
大きな窓ガラスから陽光や月の光が差し込み、映り込む屋外の木々の影、そこで二人水入らずの時間をゆったりと過ごすさま。
以前ポーラ美術館併設のカフェに行ったときに、大きな一面のガラス張りの窓の外、森の美しい緑の木々が広がる眺めを楽しんだことを思い出します。
毎度サンルームのシーンはじっくりと見入ってしまいます。
この物語がどのように結末を迎えていくのか、次巻も心から楽しみにしています。
『二哈和他的白猫師尊』第4巻です。
こんなに面白い物語があって良いのでしょうか。
起伏に富み、シリアスを突き詰めつつも要所にふわっと楽しませてくれるシーンがあり、キャラクターたちの心理的成長と変化のさまが恐ろしいほどの説得力と具体性で描かれている物語です。
現時点でほぼ毎月一冊のペースで日本語版を刊行してくださっていることへも感謝の言葉しかありません。
一ヶ月ごとに新刊が出てくださるペースだと、まだ前巻の内容が記憶に新しい状態で読むことができます。
また前巻のみならず、物語全体の細かい出来事が頭に入っている上で新刊に進むことができるので、え?これがここにこうして伏線として繋がるんですか!?と、波乱に満ちた物語を心からの驚きで楽しめます。
つまり、今年は二哈を読み始めるには最適な年です!
今巻の伏線回収はひときわ見事でした。肉包不吃肉先生、なんと巧みな書き手なのでしょう。
第1巻での彩蝶鎮での陳員外の事件、羅繊繊の悲劇、蜜柑の木がここにこうして繋がってこようとは。
そして第2巻の桃花源、葉忘昔の登場シーンからその声の響きについて触れていること、また梅含雪との一連の事柄がこのようなかたちで答え合わせとなろうとは。
他にも以前との様々な対比があったり(第1巻では気まずいシーンで師尊が墨燃の耳を塞ぐのに対して、第4巻では墨燃が師尊の目を塞ぐ)、金成湖で師尊が言い淀んだその内容が明かされたりと、とにかく端から端まで面白い第4巻です。
前巻で遂に自身の渇望に “気づいてしまった” 楚晩寧の愛欲はすくすくと育ち、彼自身認めざるを得ないところまで来ています。
方や、師尊を敬い崇めるのだと覚悟を決めたはずの墨燃も、また今巻に至って “気づいて” しまい。
そんな二人の悶々とし続ける両片思いのさまが非常に良いです。
お互いがお互いの一言一句に動悸したり赤面したりしつつも、お互いが相手を想っているはずなどあり得ないし不毛な恋だと思い込んでいて。
それでもいい、不毛でも構わないと相手のことを一途に想い続ける二人。
この二人の想いは今後どのようなかたちで昇華されるのでしょうか。
その瞬間がどれほどのカタルシスとなろうか、今から楽しみで楽しみで仕方ありません。
起承転結の転から始まる『てぺとる!』下巻。
上巻からの緩急の豊かな展開はそのままに、少しずつ淳太くんの変化が見えてきます。
これがまた最高でした……。様々な出来事や新たなキャラクターの登場によって淳太くんの心情の変化が描かれていくさまには説得力があります。
上下巻通してストーリーそのものの面白さ、そして亮くんの攻めスイッチが入る瞬間のガツンと脳幹に来る色気がもう半端じゃなく最高です。
龍星くんが色々と想像しちゃって悶々とするコマ、可愛かったです。
オチが龍星くんなのも最高でした。きっとみんな大好き、龍星くん。
あと10話、11話の扉絵が大好きです。
淳太くんのジャケットに和柄シャツ、ゼブラのネクタイを合わせた柄柄オラオラのスタイリング、立てた髪も似合ってます。
そしてベレー帽にショートジャケット、スラックスの亮くんも可愛すぎます。こちらからは某集英社の月刊少女漫画雑誌を思い出しました。
あとがきを読んで、更に胸があたたかくなりました。素晴らしい読後感でした。
これからも凡乃ヌイス先生の作品を追いかけていきたいです。
凡乃ヌイス先生の『てぺとる!』もう最強に面白かったです。
ひとつの漫画作品としてめちゃくちゃ楽しませていただきました。これはもう、ぜひ沢山の方にお勧めしたいです。
『6と7』で凡乃ヌイス先生を知り、続いてこちらの『てぺとる!』を拝読したのですが、それぞれまったく異なったテイストを恐るべき完成度で読ませてくださるさまに、もうただただ「凄いお方だ…」と感動しています。
作風の緩急の付け方、シリアスなシーンを絶妙に彩るナチュラルなボケとツッコミ、またコメディ色の強い物語中でアクセントとして光り輝く攻めの攻めムーブ(これが不意打ちでやって来るので悶絶することこの上ない)……最高です。
受けの淳太くんも何も考えてない根明キャラかと思えば意外と洞察力があったり、倫理観あったり、攻めの亮くんより先輩ということもあってか大人な面もあったりとギャップが見える瞬間が非常に良いです。
そして脇を彩るキャラクター達がまた素晴らしく、それぞれがそれぞれの役割を見事に果たしています。
全体を通して、やはり完成度が非常に高い作品であることを感じます。
この作品に出会えて本当に良かったです。
そのシンプルで内容を想像させないタイトルと白い百合の花の表紙に惹かれ、試し読みをした『6と7』。
試し読みの数十ページから受けた印象は、既に付き合っている二人による緩やかでちょっとシュールな生活ものストーリー、です。
そのような第一印象でしたので、試し読み時点では、ネタバレを含まない口コミなどの情報で “ダーク” “メリバ” という語句が目立つことにむしろ不思議さを感じました。
この話がどのように進むのかひどく興味をひかれ、全編を拝読するに至りました。
カラリとライトで肩の力の抜けた雰囲気の入口を入り中へ進んでみると、こんなにも深く薄暗く未来のない空間が広がっていようとは。
人間の闇と影を淡々とドライに紡ぐその語り口、余白を残した構成が物語の魅力を更に押し上げています。
個人的に一番心に刺さったのは物語後半、七海の「…なにがダメなの」「…あ 知らない奴だからか」の台詞です。
これを、もう本当に、何の感情もなく淡々と言うんですよ…。この2コマから背筋が冷たくなるような狂気がうかがえます。
自らのことを知ってダメージを受け心身が弱っていく禄斗、それに並行し加速度的に壊れていく七海。
でも初めから、この二人の生活に明るい未来などあり得ないことは七海には分かっていたわけで。
“禄” の字が名前に使われるのはあまり見かけないよな、と思い、意味を調べてみました。
「禄… 神の恵みによる幸運」(小学館 デジタル大辞泉より)
文字の意味を知って、余計に胸が痛いです。
彼を “禄(6)” と名付けた七海。
既に先の無かった七海にとって、彼は正に神様からの贈り物、天からの授かり物だったのだな、と。
私はラストはこれ以外あり得なかっただろう、と考えています。
ぜひ人の闇と影を味わいたい方に読んでみていただきたいです。