まず、ドラマCD化決定の報を受けて原作を拝読しました。普段、擬似親子から恋人になる展開を個人的には好んでいないのですが、こちらの作品については、琥士郎が人外であることや源慈がすんなりとは琥士郎の想いに応じなかったこと、琥士郎の源慈への想い、源慈の感情の動きなど、とても丁寧に描かれ、2人の関係の変化の描写がとても好みだったため、大好きな作品になりました。物語を追うと、この2人は擬似親子ではなかったと個人的には思ったのも大きいです。(ドラマCDのレビューの場で原作の感想が多くて、すみません・・・)
読後、少ない声優知識から、何人かキャラクターに合いそうな方を想定していました。そして、発表されたキャスト陣。その想定していたうちの1人である、阿座上洋平さんが琥士郎役との報に胸を膨らませました。源慈役に松田健一郎さん、火夏役に江口拓也さん、イオ役に田丸篤志さん、幼少期琥士郎役に田中貴子さん、つばき役に松井暁波さん、との素敵な布陣に加え、過去作から時雨役の森川智之さん、雪鷹役の小野友樹さんが続投と熱いキャスティング。キャストが発表され、試聴動画が公開され、発売までどれだけ楽しみの気持ちを膨らませてきたか、どれだけ繰り返し試聴動画を拝聴してきたか。
そして、ついに発売の時が来ました。ワクワクドキドキで全編拝聴しました。本当に、本当に、最高でした。良すぎて、感謝の言葉もありません。声も芝居も、SEもBGMも、作品を彩る全てが素晴らしかったです。期待通りの、いえ、発売を心待ちにして膨らみまくった期待を優に超える音声化でした。宝物になった原作に加え、ドラマCDが新たな宝物になりました。
「ヒズ・リトル・アンバー」は物語の良さだけでなく、その物語に説得力を付与するナツメカズキ先生の絵力もあって成り立っている作品だと思っています。台詞のない、表情から伝わる想い、背景に描かれるキャラクターの動きなど。だからこそ、音声化でこの世界観を、物語を表現しきれるのかと、気になってもいました。しかし、それは杞憂に終わりました。SEにBGM、何よりもキャスト陣の素晴らしい表現力で、最高の物語を魅せてくださいました。
例えば、琥士郎はルックスだけ見たら、格好良いキャラクターだと思います。ただ、原作を読んでいる方はご存じだと思いますが、琥士郎は滅茶苦茶可愛いです。その可愛さを感じる要素の一つは表情の豊かさだと思います。それが、阿座上さんによって見事に表現されていました。コロコロ変わる表情、感情の揺れなど、見事に声色とお芝居で表現されていました。そして、琥士郎の魅力の一つでもある、ふと見せる色っぽさ。こちらもバッチリ表現されていました。
琥士郎の好きなところが数え切れないほどあったので、全てを述べるのは控えますが、いくつかピックアップさせてください。
・つばきさんへの「行ってきます」を筆頭に、つばきさんに関する言葉に乗せる感情全て。
・memento.1で源慈に“手伝い”をして貰っているとき、「げんじ」と連呼するため源慈から口を塞がれているときのくぐもった声。
・memento.1で昔の話は今はいいと源慈に言われて返した「・・・いいじゃん」の言い方。
・memento.4で車中で寝ぼけて源慈の腕を舐めているときの吐息。
・memento.6で寝顔について源慈に言われて返した「・・・んだよそれ いつも見てんなよ」の言い方。
・the last mementoで火夏たちが去った後、源慈と見つめ合った後の「源慈、家、帰ろ」の言い方。(この台詞、ドラマCDオリジナルですよね!?)
源慈はここの声!とかここの台詞!とかではなく、もう終始その声に乗る琥士郎への感情に心揺さぶられました。もちろん、対琥士郎だけでなく、対つばきも、対時雨も、もう全てが、源慈がもう源慈なんです。
火夏は尊大なのに嫌味な感じがなく、イオへの愛情、弟である熒への愛情も感じる面白いお兄さんでとても良く、イオはクールな感じなのに可愛さも同時にあり、控えめなようで火夏にツッコむ気安さも持つ話し方がとても良く、どちらもただの人間じゃない存在感を声から感じられて、凄く好きでした。
幼少期琥士郎はもう終始可愛くて、ずっと、この子を守らなきゃ、笑顔にしなきゃ、って気持ちにさせられました。源慈への大好きな気持ちもずっと伝わってきて、本当に良かったです。
篠原兄弟はどちらも好きなのですが、特に兄の「琥士郎くん えっちだなぁ」「なんだ愛娘でもあるまいし~」の言い方や源慈にドアを壊されたときの反応がツボでした。正吉とだいちゃんも琥士郎との遣り取りが微笑ましくて、凄く良かったです。つばきさんはそのお声から、つばきさんがどんなに素敵な人だったかが伝わってきて好きでした。
文字数の関係でこれ以上言及するのは控えますが、本当にどのキャラクターも最高のお声とお芝居でした。キャストの皆さんに感謝申し上げたいです。
ラブシーンについてですが、正直、個人的にキスシーンやベッドシーンを聴くのに苦手意識があり、普段は通しで聴くとき以外では改めて聴かないタイプなのですが、こちらの作品では、ラブシーンでの感情の交わり方が本当に、好きで好きで、お芝居が最高すぎて、BLCDを聴いていて初めてリピートできました。
特に、広島のホテルでのシーンは原作でも大好きで何度も読んでいたこともあり、ドラマCDでも最高のシーンになっていたので、繰り返し聴いています。2人の気持ちが近づいてぶつかって重なって溢れて、愛に触れられるとても素敵なお芝居で嬉しかったです。
最後になりますが、本編だけでなく、ミニドラマもどれも最高に良かったので、是非そちらも聴いてください。より幸せな気持ちになれます。
原作既読です。原作から既に涙腺を刺激する内容ですが、そこに音がつくことで、完全にトドメを刺されました。感情に訴えてくるお芝居を聴かせていただきました。
コメディちっくな掛け合いも台詞の言い方も良くて、クスッと、ニヤッとできました。
中盤から終盤にかけてのあさひと爽の掛け合いが特に素晴らしく、ずっと聞いていたくなりました。あさひの過去についての語りやそれに対する爽の「いま楽しい?生きてて」の言い方、凄く好きでした。あさひと爽が互いに気持ちを伝え合う遣り取り、その声のトーンや言い方など全て最高でした。
そして、何よりも、回想で描かれる7年前の爽と亮二の物語は、ただでさえ原作での描き方が良いところに、より深みが足されたように思えました。まさか『夜夜中』が聞けるとは思わず、こうした部分が音声化の醍醐味でもあると思いました。
キャスト様方について、まず、高佐役の田中章貴さん。優しそうだけど、強かな大人というキャラクター像にぴったりなお声とお芝居でした。あさひと爽の物語をそっと支える役割をしっかりこなされていたと思いました。
次に、雪平亮二役の羽多野渉さん。食えなさそうなところもありつつ優しく、生きづらさを抱える傷ついた「子ども」である爽にフラットな距離感で向き合う「大人」として、とても安心できる温かいお声とお芝居でした。歌声も見事でした。
そして、八神爽役の阿座上洋平さん。傷を抱える繊細なキャラクターを演じるのが上手すぎます。独白での感情の乗せ方が凄く良く、心の内側に触れているような気分にさせられます。若い頃を演じるとき、声を現在より高めにして若さを表現することはよくある方法だと思いますが、今回、17才の爽はそこまで声の変化を感じず、話し方というのか、声の出し方で17才の子どもを感じ、そういう表現が好きだと思いました。
最後に、柊あさひ役の石谷春貴さん。お声から感じられる包容力が凄かったです。真っ直ぐに爽を見て、気持ちをぶつける強さと眩しさを感じるお芝居が素晴らしく、聞いているこちら側まで救われる気持ちになりました。一方、あさひの過去からくる屈託さの表現も見事で、ツッコミやポソッと零す声、振り回されてアタフタする声、いろんなお声が聞けました。「無茶ぶり―」「絵本強請る子供か」の言い方が特に好きでした。
「翻弄系小説家とのロマンスについて」は二人の出会いから始まり、爽が中心の話ですが、これは是非とも恋人らしい二人やあさひについてより深掘りした内容の続編「相愛系小説家とのロマンスについて」の音声化も期待したいです。
原作全巻既読です。原作の繊細で、風景画のような、彼らの生活の景色を眺めさせて貰っているような、静かで淡々としながら温かな、あの雰囲気をどのように音声化するのかと思っておりましたが、期待以上の完成度でした。
まず、ベンジャミン役の斉藤壮馬さんですが、落ち着いた低めのお声がとても良かったです。浮世離れした雰囲気をお声だけでもここまで表現できることが凄いと思いました。105歳という年齢だけみると年上受けですし、落ち着いた感じもありつつ、「元天使」ということで、未知に対する無邪気さで大人を振り回す幼さも感じ、年上感と年下感の両面があるように思わされ、甘えたくなるような甘えさせたくなるような絶妙なお芝居に感じました。とても魅力的なキャラクターとして表現されていました。
次に、ターナー役の阿座上洋平さんですが、優しく穏やかなトーンで、良い意味で普通なお声がとても良かったです。ベンジャミンが浮世離れした雰囲気のため、そこに対する「普通の人間」と言いますか、普段からそこに居るような実存感のあるお声を感じられて、凄く好きでした。道で元天使を拾う形になるわけですが、拾われる側として、この人ならついて行っても大丈夫だろうという安心感や信頼感を持てると同時に、ただ優しい人良い人だけで完結せず、自身の性質に後ろめたさをもつような、及び腰がある様子も感じられるお声とお芝居に思えました。とても人間らしいけど生々しすぎないキャラクターとして表現されていました。
彼らの掛け合いが心地よく、耳に優しく、とても聞きやすいからこそ、安眠導入剤にもなり得そうなとても染みわたるお声たちでした。続きのお話も音声化の機会があると嬉しいです。
BL作品を「読む」ことはこれまで何度も楽しんできおりますが、BL作品を「聞く」ことは本作品が初めてとなります。そのため、BLCD初心者のレビューだと思っていただければ幸いです。
これまでBLCDに手を出さなかったのは、濡れ場を音で聞くことに気恥ずかしさがあるからなのですが、原作既読の本作品については濡れ場が控えめなことを把握しており、キャスト様も好きなお芝居をされる方々だとわかっていたので、意を決し購入しました。
購入は大正解でした。原作の良さが旨く表現されており、本を見ながらCDを聞いても、CDだけに集中しても楽しく面白く聞くことが出来ました。ただ、本を見ながら聞くと、構成上カットされる台詞も目に入り、原作ファンとしては「この台詞も音声で聞いてみたかった!」となりもするため、そうした気持ちを持たず聞きたいのであれば、まずはCDだけで楽しんでみるのが良いのではないでしょうか。
個人的に、本作品はラブコメ寄りだと思っているのですが、原作でクスっと笑えたところがCDでもクスっと笑えて、テンポ感など、キャラクターの掛け合いがとても良かったです。もちろん原作同様、クスッと笑えるシーンだけでなく、真剣にグッと胸に入るシーンはCDでもバッチリでした。
濡れ場が少ない作品ではありますが、濡れ場がしっかり見たい方は、「いちゃラブ増量盤」に手を出されるとより楽しめると思います。濡れ場が少ないから購入したはずですが、通常版が良かったので、「いちゃラブ増量盤」にも手を出しました。通常版でまず先に二人の馴れ初めをじっくり聴かせていただいていた後なので、濡れ場を音で聞いても気恥ずかしさより微笑ましさが勝ちました。可愛いカップルです。
最後に、キャスト様方についてですが、メインのお二人も脇を固める方々も皆さん、声質、お芝居と、聞き心地のよいものでした。各キャラクターにしっかり合っていました。桐生も大前も落ち着いたお声だったのが個人的には聞きやすくて、嬉しかったです。
桐生については、誘いをふっかけるようなときに出す、低めの色気のある声から通常モードの落ち着いた声、気持ちが高まったときなどに高めになる声とバリエーション豊かで、その声色のギャップが楽しかったです。全然隠し切れていない大前への感情が伝わってきて良かったです。
大前については、基本は落ち着いた声ですが、所々可愛げのある言い方、声を出すのが良かったです。感情の起伏が少ないキャラクターなので、淡々とした話し方、声ですが、ストーリーが進むとどんどん感情が声に乗っていて、「この人、桐生のこと滅茶苦茶好きですよ!」と言いたくなる声色で最高でした。
桐生も大前も、格好良さも可愛さもあるキャラクターだと思いますので、それをしっかり魅せてくれるお芝居をしてくださり感謝しかないです。原作ファンとして元々好きだったキャラクターたちにより愛着を持てる音声化でした。