サヨナラ・リアルに続いて手に取った朝丘さんの作品。
自分が普通では無い事にどうしようもない思いを抱えた一吹と、過去に囚われた大柴さん、そんな2人のお話
通学や通勤で毎日乗り合わせる乗客たち
会話を交わすことなくすれ違う人の方が圧倒的に多い中で、知り合う事ができた2人
賢司さんの過去の出来事を知って、それは偶然では無かったのだと分かりました
本当に辛い出来事を抱えている人間って、誰にも弱さを吐露できない、なのに、知って欲しい、誰かに聞いて欲しいってどこかで思ってる物だと思うんです。
印象的だったSNSでのやり取り
顔が見えない中での会話
普段は出せない本心をさらけ出せてしまう不思議な場所
打った後逡巡し、それを無かったことにして、嘘を付いてしまえる場所
そんな場所を通した事で、2人の関係は少しずつ深まっていきます
文章が兎に角美しく、言葉選びが心地よく、切ないけれど、何処かずっと幸せな気持ちで読み進められたのは、
この恋が叶わなくても、出会えて、好きになれた事が、本当に幸せだと思う、一途で健気な一吹くんの心に感化されたからからだと、それ程までに強い彼の気持ちが伝わってきました
賢司さんの年齢に限りなく近いアラサーの私ですが、一吹くんの心に入り込み過ぎて、17歳、高校2年生という立場から賢司さんを見ていたら、33歳とはこうも魅力的で、大人なのか、と驚いてしまいました!
いや、賢司さんが特別なのは重々承知してます(笑)
「俺達が出会った頃のお話だね」
「恥ずかしいです」
と、現実に2人が照れている情景が浮かぶ様な
この世界に確かに存在する2人を感じました
23ページまで読んであまりに悲しくて一度読むのを止めました
家族や恋愛の事でトラウマがある方は辛くて読み進めるのが難しいかもしれません
仁居が経験した過去は余りに辛く、抱えて歩くには重く、でも投げ出すことも出来ずに、その場に過去と一緒にただうずくまっている事しか出来ませんでした
似た者同士、という言い方が合ってるのかどうか分かりませんが、痛みを知る国立との出会いは本当に救いだったと思います
ゆっくりゆっくり傷を癒していく流れに
自分の日常と同じ様に二人の日常も目の前にある様な臨場感がありました
BL小説なんだからもっと劇的にドラマティックな展開があっても!という気持ちには全くならないのが凪良先生の描く物語の魅力だと思います
なんでしょう、、、これは、凄まじいまでに悶え萌え転がりました
私は受けの子が可哀想お話が基本好みなので、読み進めて平良くんが攻めだと知り、「あ、これは地雷かも、、」と半ばガッカリしながら読み進めていました
それに確かに清居くんは美しいけど、キツすぎてあまり好みじゃない、、
中盤、二人きりで過ごす時間が出来き、なにか展開が!
と期待して読み進めましたが、ここでもいまひとつしっくりこない感じ
というかこんなの絶対両思いになれないじゃん!
平良くんほんとに尼さんになるしかないじゃん、、とBL小説なのにこの2人が結ばれる所なんて一ミリも全く全然想像出来ませんでした(脳内は完全に平良くんモード)
そこへきて終盤での清居くんの想い、弾ける可愛さ、シリアス?なのに噛み合わなさ過ぎるふたりの会話に爆笑し、ヤキモキし、焦れったくもずっと噛み締めていたいような、二人のゆるゆると結ばれていく様に、最後はもうずっと泣きながら読み切りました
美しく強い清居がなさけなく、ダサくなる瞬間が愛おしく、神のように崇める彼をそんな風にしておきながら、夢見たい、とこっそり寝顔をみつめる平良くんが愛おしいです