{また、お約束の展開と結末かなぁ}と手にとってみると、
いままでにないアラブもので自分的にはすごく良かったです。
攻めはある砂漠の部族の最後の一人として、それを受け入れ
ただ淡々と生きている。王様でも王子様でもなく、金持ちでもない。
逆に受けのほうが、お家柄のいいお金持ちぼんぼん。
受けの兄が亡くなり、それを看取ったのが攻め。
この攻め、お金持ちじゃないけれども、なんとも
生き方がKing of Kingsなのです。男前です。
一人で生きてきて世俗にまみれていない攻めと、
出自の良い坊ちゃんだけどどこか屈折して生きて
きた受けとなると、そう!誘い受け!いいです。
あまりドラマチックな展開も事件もないけれど、なかなか
好きな一冊になりました。
どこかで何度か読んだことのあるお話でした。
砂原糖子さんの「恋雪」、高遠琉加さんの「好きで好きで好きで」、
樋口美沙緒さんの「愛はね、」「ぼうや、もっと鏡みて」あたりを
混ぜて割った感じの内容です。最近読んだ樋口美沙緒さんの本と
挿絵が同じ小椋ムクさん=攻・受とも似た絵になっているので、
少々頭の中の回路が混線しそうになりました。
受けが攻めが大好きだけど攻めには彼女がいる。だけど受けが
離れた途端に攻めが受けに執着していることに気づいてハッピー
エンドへつながるお話です。おい!攻めよ!受けに結構執着心
バリバリなのに、何でそーなるまで気づかないんじゃ!と言いたい。
まず、評価の「萌」はこのレビューを書く時に勝手に入っていた状態のままということで、あてになさらないで下さい。主役カプのストーリーが頭の中で霞んじゃってますから、どう評価していいものやら。
主役カプは、石油の出るお国の王様の第3夫人の子で第6王子=出世レースに積極的に参加しなけりゃ自由な立場でいられる攻・シャラフ王子と、幸せとはいえない生い立ちなのに、シャラフ(シャラフの妹?)によってさらなる不幸に突き落とされる受・孝也です。二人が出会うきっかけで、孝也の始めの恋人もどき+後の間男もどきの崇文というオトコが登場するのですが、頭に残るのはこのお馬鹿さんのことでした。
運命の恋・真実の恋人を探して、あっちへフラフラこっちにヒラヒラとさすらう超恋愛体質オトコ・崇文が留学先のイギリスで、同じく留学中の攻・シャラフの妹のアミーナ王女を甘い睦言で唆してお手つきにすることが物語りの発端。あっさりアミーナに厭きた崇文は、日本の大学で「君こそ僕の運命」とばかりに孝也を見初めます。妹に泣きつかれたシャラフが、孝也を崇文の目の前で犯す(お初)と、崇文はバッサリ孝也を切り捨ててアミーナとの結婚を選択。奈落の底に沈められた孝也は自暴自棄状態となり、いろんなオトコを渡り歩いてNYに流れつき、男娼に身を落して暮らす日々。
NYであるレセプションに出席したシャラフは、他の招待客の連れとして来ていた孝也に興味を持ち、娼館を通して孝也の客となります。が、天上天下唯我独尊オトコのシャラフは孝也に罵倒されるまで、過去の記憶なんてサッパリなのです。まぁ、ここからはアラブものお決まりパターンで、シャラフは孝也をありあまるオイルマネーであっさり娼館から買い上げ、さっさと拉致状態でお国へ連れて帰り、がっちり籠の鳥状態にして、しっかり調教します。キワモノお道具プレイは無いに等しいのですが、孝也の身体をシャラフにしか反応しないまでには調教します。
「あぁ。お決まりのアラブものパターンに突入だぁ。」と嘆こうとしたその時、アミーナ王女が動きます。結婚しても妻である彼女に目もくれず、世界中を恋人探しに明け暮れる学習能力ゼロ夫・崇文に逆襲するのです。ただ離婚するだけでは、アミーナの積年の恨みは晴らせません。一国の王女+ムスリム+プライドは兄同様に天よりも高い彼女は、夫・崇文を徹底的に貶めるべく策略を練ります。父王の誕生祝いを口実にアミーナは崇文を自国へ呼び寄せ、-兄シャラフのもとに孝也が囲われている。兄は崇文と孝也をアミーナの願いのために引き離した。孝也はいまでも崇文を愛している-と唆します。白馬の王子様気分の崇文は、囚われの姫・孝也を救い出して愛の逃避行へGOとばかりに、アミーナの策略どおりに行動します。孝也は過去にはアミーナが崇文と結婚するために、今度は崇文を陥れるために、何も知らないまま利用されるのです。兄・シャラフもまたアミーナに泣きつかれ、彼女の策略どおりに祝典から屋敷に戻り、孝也がバカフミに犯されかけているのを見て怒髪天状態(これも策略どおり)となります。「どうしたい?」というシャラフの問いかけに、アミーナは復讐劇の最終目的であったチョッキンを要求。コえぇー…イテぇー…ほかのアラブものでの間男の待遇は、あっさり殺されるか追放されるかでしょうが、この話は本当にチョッキンです。
許しを請い、泣き叫ぶ崇文は(詳しいこと書かれてませんが、頭を駆け巡る映像では、大股を開いて括り付けられ、尿道が塞がらないようにチューブを差し込まれ、チョッキンと)去勢されてしまいました。それをしっかり兄・シャラフと共に見届けたアミーナは、部分的ギロチン執行の際に高笑いだそうで。コワすぎる…泣き叫んでいたことと、その後のあまりの激痛に気絶ということから考えて、全身麻酔じゃなくて局部麻酔なのか?とフリーズしました。去勢なんてここは何処?いまは何時?と恐慌状態に嵌った孝也なんか、シャラフが崇文のことが片付いて戻ってくるまで、ヘタリこんで身じろぎひとつ出来ないままでした。
その後どうやって主役カプが纏まるかなんて、ページも残り少ないし何だかおざなりな気が…まぁ、「所詮、華やかなバックグラウンドしか見られていない。何故か孝也だけには執着心が沸く」なシャラフと「寂しい。だからやさしくしてくれたら、心も身体もあなたのもの」の孝也がめでたく幸せにという結末です。
その後の崇文は懲りずにニューハーフとして運命の恋・真実の恋人を見つけるためにさすらうのか、ムスリムで王族のアミーナが夫と離婚してそのガチガチの社会でどうやって生きていくのかが気になりました。
あと、NYでシャラフが再会した孝也に「男は、恋人に浮気されたら、恋人本人に怒りを覚える。だが、女は、自分を裏切った男ではなく、浮気相手のほうを恨む」と言うのですが、アミーナが6年もの年月を崇文に蔑ろにされたせいで、夫に情がなくなっててよかったーと心底思いました。崇文に未練があれば、何の罪もない被害者・孝也の身が危なすぎるので…