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この頃はBL以外の作品でも精力的に執筆活動をされご活躍の榎田尤利先生。文章力があり、作品にはずれがないと定評のある作家さんです。なかでも初期にかかれたこの作品は印象的です。 まずは、表紙に目が引きつけられることでしょう。 真っ赤な夕陽をバックにしている主人公達という茶屋町勝呂先生のインパクトのある表紙。しかし印象的な表紙に負けないほど、中身も衝撃的な作品です。 19歳の望は、図書館で26歳の御厨玲治に出会い、一目で恋におちます。知的で経済力もあり、大人の玲治にあこがれる望。そして、手放しで玲治にかわいがられる望、すでにセックスの経験もあり、自然な成り行きでもっと玲治に触れたいと思う望ですが、玲治は決して触れることを許さないのです。 最初は、そういうものかと軽く思っていましたが、言葉では、独占欲をあらわにしてくれるのに、決して身体にふれようとしない玲治の違和感に不安を感じます。 そして、セックスさえも、玲治の指示のもとに、玲治が選んだ男と寝ることが、自分のやり方だと言い放ち、それに従えないなら別れると言われ、玲治以外の男に抱かれ続ける望。 玲治の視線にさらされ、指示されるその行為に、だんだん玲治の真意がつかめなくなり、気持ちを繋ぐことができなくなる望の悲しみが胸をうちます。玲治を愛しているからこそ、その行為がだんだん苦痛になるのです。 望が自暴自棄になり、玲治の見ていないところでのセックス禁止という取り決めを破ったために陵辱されてしまいます。 (ここからネタバレ注意!) 倒れていたところを発見され病院に担ぎ込まれた望。その姿をみた玲治は、自分がそういう形でしかセックスできない、好きな人に触れることができないことに深く傷つき、悲しみます。 なぜ彼は愛する人を抱きしめることにためらうのか?それが、友人の言葉で明かされます。 玲治は大好きな母親に殺されかけたことで、セックスの最中に相手の首をしめてしまうというトラウマを抱えていたのです。 何度も傷つき、愛する人を失い続けた玲治の悲しみ、孤独を知り、そんな玲治だから腹を括って愛し抜こうと望は決心しますが…… 玲治は、望の敵を討つために犯人を刺して服役することになります。服役する玲治にずっと手紙を書き続ける望。ラスト、やっと自分を少し許せるようになった玲治と再び望が出会うシーンは、友人視点なのですが、いろいろあったけれどお互いがそれでも求め合っている玲治と望の固い絆を感じさせられます。 と同時に、ずっと見守り続けてきた友人の安堵も味わうことができます。
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