BL物の作品を読み始めてほぼ4年余り、自分の好みの傾向が最近はっきりと示されてきた。
自分が運営しているブログを整理する折にタグを作品1つ1つにつけ足していったのだが、出来上がってきたタグクラウドに自分の好みが面白いほど反映されているのを目にして思わず笑ってしまった。
読んだ本の感想を書くのだからと、出来るだけ満遍なく作品を選んでいたつもりなのだが、年の差ものの数字が年下攻めと肩を並べて突出しているのだ。
どうやら、当初の自分の思いに反して身体が勝手に年の差作品を選出してしまっているようだ。
年の差物のストーリーは、カップルの年齢差が出来るだけ開いているほうが良い。中でも二人の年齢差が10歳からひと回り位ほどの差のあるカップルが私としては好ましい。
経験豊富でいい年をした大人の男が自分より10歳以上もしたの男に振り回され翻弄されて余裕をなくした時に見せる素の顔ににやりとさせられるし、年下の男は男で、その年齢差に甘んじることなく相手と対等に遣り合おうとし、普段は負けん気の強い男がふと見せる弱い部分が読み手の母性をくすぐるのだ。
今まで読んできた数ある年の差作品の中でも特に好き作品がひちわゆかさんの書いた「12時の鐘が鳴る前に」だ。
優秀な元外科医と高校生、接点の無さそうな二人の出会いは、朋也が骨折した叶の身の回りの世話を叶の友人である三上という男から頼まれたことが発端だ。
叶は尋ねてきた朋也を見てもむっつりとした相好を崩さないばかりでなく、朋也に35点と点数を付け、セクハラまがいの面接をするのだが、その嫌がらせがかえって朋也の中にある負けん気の強さに火をつけてしまう。
朋也は翌日から時間通り叶の家にやってきて、叶がどんなに横柄な態度を取ろうとも決してめげることなく自分の与えられた以上の任務を遂行してく、そんな朋也の必要以上の頑張りが徐々に叶の態度を変えていくことになるのだ。
叶が朋也に対して始終横柄な態度を崩さないのは、ある勘違いが原因なのだが、その勘違いから生じる二人の気持ちのズレが物語を時にコミカルにまた時に切なさを助長する絶妙なスパイスの役目を果たしている。
物語の中に張り巡らされたいくつかの伏線、ストーリーがラストに向かいばらばらだったジグソーパズルの最後のピースがぴたりと嵌った時あきらめずがんばった朋也に用意されていた最高のご褒美は読み終わった私をも優しい気持ちで満たしてくれた。
この話が新装版として発売された折、本のラストに新しく書き加えられたいくつかのショートストーリーは二人のその後がコミカルに、そして時に甘く優しく綴られていて、二人の仲むつまじさを垣間見ることができるようになっている事も読み手の探究心を十分に満たしてくれた。